レベルに合わせた英語学習とは
Q:レベルによって必要な学習要素は異なるのでしょうか。
これまでのTOEICスコアや学習者の英語能力についての調査から、「リーディング」スコア250点が、最低限の実用レベルであることがわかっています。これは、やや平易な文であれば、ある程度のスピードをもって読める読解力です。そこで「リーディング」250点を基準にした、英語学習法を考えてみましょう。
(1)リーディングスコア250点未満で、リスニング>リーディングの場合
学校授業におけるオーラルコミュニケーション授業の影響で、若い世代に多いパターンです。トータル350-400点で「リスニング」スコアが高い人は、読んでいても、その意味は理解できません。読んでも理解できない文は、いくら聞いても理解できないのです。つまりそのままでは、「リスニング」も「リーディング」も伸び悩む危険性があるということになります。この段階では、易しい英語を多く読み、基本語彙を増やしながら英語の語順や仕組み、文法に慣れることが先決です。
(2)リーディングスコア250点以上で、リスニング>リーディングの場合
「リーディング」スコアが250点を超えていて、「リスニング」スコアがそれを上回るのですから、トータルスコアは少なくとも500点を超えている計算になります。
この段階の人であれば、ある程度のレベルの英文を、読んで理解し、かつ聞くこともできる状態です。つまり、リスニング力を強化することで、「リーディング」のスピードも速くなってきます。リスニング力を養成するためにはTOEICのPart4のようなナレーションタイプの教材をたくさん聞くとよいでしょう。リーディング学習の素材には、新聞やペーパーバックなどを選び、たくさん読むことをお勧めします。
(3)リーディングスコア250点以上で、リスニング<リーディングの場合
大学受験などで語彙力、読解力に特化して学習した人に多く見られるタイプです。このタイプの人は、リスニングに徹底的に取り組むことで、短期間にスコアを伸ばすことができます。英語の潜在能力を秘めているので、耳をよりなすために、音読を取り入れ、リスニング力を伸ばすことにより、相乗的にリーディングのスピードも伸ばせます。
(4)リーディングスコア250点未満で、リスニング<リーディングの場合
書かれた英文を読んでも理解できず、リスニングも苦手という状態ですから、むやみにリスニングのトレーニングを積み重ねようとすると「英語嫌い」を助長します。中学英語の教科書や語彙を制限した英文をたくさん読むことにより、語彙力の習得や英文の仕組みに慣れる学習を続けましょう。リスニング学習をする場合は、すでに覚えている英文を聞いたり、英文を見ながら聞いたりするとよいでしょう。聞いても意味が理解できない英文を無理して聞くことは、すべてにおいて逆効果です。
なぜ「日本人には英語が向かない」といわれるのか
Q:日本人は他国の人と比べ英語が苦手といわれていますが、日本人は英語に向かないのでしょうか。
言語学的に英語からもっとも遠いと思われる言語である日本語を話す人が英語を習得するには、約3,000時間必要といわれています。そのうち一般的な学校教育(中学から高校まで)における英語の総授業時間数の総計は約1,000時間です。「日本人は中学から大学まで10年間も英語を勉強しても全く話せるようにならない」という意見を耳にすることがありますが、その原因は、英語の学習時間が圧倒的に足りないことです。不足している2,000時間は、レベルに応じて最適なバランスで分割して、効率的に英語学習することが重要なのです。
下の図は、学習項目(「Vocabulary(語彙)」「Grammar(文法)」「Pronunciation(発音)」「Fluency(流暢さ)」「Sociolinguistic(社会言語学的要素)」)と貢献度の関係を表しています。
横軸が学習レベル(FSIスケールによる)、縦軸が貢献度の割合
以下にレベルに合わせた主たる学習項目とレベル、その貢献度を示します。
Level 1 TOEIC400−470点程度
語彙(45%)・文法(30%)・発音(17%)
★基本語彙の丸暗記、その語法の学習と、動詞、名詞、形容詞、副詞などの変化形や5文型等を含む基本文法を徹底的に行いましょう。発音は17%と、他のレベルに比べて高いもののさほど大きな割合ではありません。しかし、英語入門期の学習者は、単語レベルでのコミュニケーションを図ろうとしますから、相手に理解を求めれば、当然正確な発音が要求されることになります。学習レベルが上がるのに反比例して、発音の貢献度が下がるのは、フレーズや文で発話できるようになれば、多少発音が悪くても、相手が理解してもくれるようになるからです。
Level 2 TOEIC600−730点程度
文法(40%)・語彙(35%)・発音(10%)・流暢さ(8%)
★文法と語彙の学習の重要度が逆転します。文法(40%)が最重要項目となり、
語彙(35%)が続きます。より複雑な内容を、理解したり表現したりできなければ、相手が理解する内容を述べることも書くこともできませんから、単語知識だけでなく、より複雑な構文の知識が要求されます。発音の貢献度が10%に下がるのは、まだ不十分とはいえ、最低限のコミュニケーションができるレベルに達しているためです。また、スピードが求められるようになるため、流暢さ(8%)の必要性が高まってきます。
Level 3 TOEIC900点程度
文法(42%)・語彙(25%)・流暢さ(18%)・社会的言語要素(14%)
★文法の重要度がピークとなりますから、しっかりした文法力を習得してください。またこのレベルになると、社会言語学的要素の貢献度が上がります。つまり、知識として学習した英語から、実際の生活で活用できる英語への移行を図る時期にあたるのです。なぜなら、TOEICはスコアのためにあるのではなく、ビジネスマンや一般社会人が日常よく使う単語や表現を含む生活英語を学習するためにあるからです。
Q:英語学習者や、会社で社員の英語学習を推進する人事教育担当者にメッセージをお願いします。
英語学習の到達度合いを測定するためにTOEIC(R)テストは有効な手段です。ただし、その活用の仕方を一歩間違えると、「TOEICが900点を超えても英語が話せない」「いつになったら使える英語が身に付くのか?」という状態に陥ってしまいます。TOEIC(R)テストの問題に使われる「生活英語」を十二分に活用し、スコア対策ではなく、生活英語を学習するためにTOEICを活用しましょう。そして、スコアをもとに学習を進める際には、リスニングとリーディングのバランスに見合った学習方法を知り、取り組むことを忘れずに。適切な方法で必要な時間学習を積めば、必ず使える英語を身に付けることができます。
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