英語を聞いたり話したりするとき、どうしても「日本語を英語に訳す」あるいは「英語を日本語に訳する」というステップを踏んでしまいますが、それではスムーズな英語のコミュニケーションは成り立ちません。
「日本語を介さずにどうやって英語を理解するの?」と思うかもしれませんが、スピーディーに英語を理解してスムーズなコミュニケーションを実現するためには、この「訳す」というステップを踏まない「英語脳」を鍛えることが重要です。
この記事では、英語脳と英語脳を作るために必要な英語の思考回路を築くコツを解説します。効果的な練習法やアプリもご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください!
そもそも「英語脳」とは
英語脳とは、すでに述べたように日本語を介さずに英語を理解する脳のことです。どんな言語でも習い始めは母国語を介して理解していきますが、英語が上手な人は英語で英語を理解しているのでスピーディーなコミュニケーションが可能となります。
つまり日本人が日本語を日本語で理解できるように、英語も英語で理解できるように「英語脳」を作り上げる必要があるのです。
まず、「英語脳」がどんなものなのかを見ていくとともに、英語脳を作ったり鍛えたりするメリットも解説します。
英語脳 = 知識の自動化
英語学習では単語や文法などの知識を得たり理解を深めたりしますが、それだけではスピーディーなコミュニケーションは実現できません。それらの知識を無意識かつ自動的に使いこなすことが必要です。
言語習得における知識は、「語彙」「文法」「発音」という3つの要素で構成されています。語彙は単語の総数で、文法はその単語を並べる順番のことです。発音は声帯と呼ばれる器官と舌や唇を使って、それぞれの単語の音を出すこと。つまり、言語習得はより多くの単語を覚え、それらの単語の並べ方と発音方法を覚えて使いこなすことなのです。
スピーディーなコミュニケーションを実現するためには、3つの要素で構成される知識を自動化する必要があり、自動化することで「英語脳」が作られます。
「英語脳」を作るメリット
無意識かつ自動的に知識を使いこなすため、当然のことながら英語脳を作ったり鍛えたりすることには多くのメリットがあります。
・スピーディーかつスムーズなコミュニケーションが可能になる(ネイティブと対等に話せる)
・瞬発力がつく(言いたいことが瞬時に口から出る)
・海外の映画やドラマ、オンラインコンテンツなどを英語のまま理解できる(アクセスできる情報が増える)
・自然な英語が身につく(的確な単語やフレーズが使いこなせるので表現力が上がる)
・自信が持てるようになる
英語脳を作り鍛えると、夢の中でも英語のコミュニケーションができるようになりますよ!
大人でも作れる「英語脳」
「英語脳」は帰国子女の特権だと思われがちですが、決してそんなことはありません。大人になってからでも英語脳を作ることは可能です。大人になってから英語を習得するためには、すでに述べたように知識を得ていく作業となるため、帰国子女のように自然に英語脳が作られるわけではありません。もちろん時間と努力が必要ですが、英語が苦手だった私自身も大人になってから英語脳を作り、日々鍛えている1人なので不可能なことではありません。
時間がかかるので諦めてしまう人もいるかもしれませんが、何事も一朝一夕にはいきません。母国語でさえ形成されるのに12年から15年かかると言われているので、第二言語の英語を習得するのに時間がかかるのは当然のことなのです。焦らず気長に続けていきましょう!
「英語脳」を作るコツ・練習法・アプリ
次に、英語脳を作るために「意識的」にすべきことを見ていきましょう。また、英語脳を作るために効果的な練習法やアプリも見ていきます。
「英語脳」を作るコツ
「英語脳を作ると言っても、どうすればいいのかわからない」という人も少なくないでしょう。ここでは「英語脳」を作るコツを見ていきます。
日本語で考えない
英語で英語を理解できるようにするため、意識的に日本語で考えないようにしなければなりません。要するに、最初から英語で考えるクセをつけるということです。もちろん慣れないうちはどうしても日本語で考えてしまいますが、その頻度をなるべく減らしていきましょう。
英語の語順で理解する
日本語で考えないようにすることにもつながりますが、英語の語順で理解することも重要です。なぜなら、英語を日本語で考えるというステップが、英語の上達を妨げているからです。
日本語と英語では語順がまったく違うので、英語の語順で理解していくのは簡単なことではありませんが、これは繰り返すことで実現できます。英語の語順で理解するためには、後述する「スラッシュリーディング」という練習法が最適です。ぜひ、日々の英語学習にとり入れてみてください。
英語の意味をイメージで捉える
「英語の意味をイメージで捉えるってどういうこと?」と思われるかもしれませんが、単語を闇雲に暗記するような方法では必要なときに単語が思い浮かびません。
娘は4歳になったばかりのときに海外の幼稚園に通い始めましたが、数日したら「寝ることは英語でclose your eyesって言うんだよ」と言いました。お昼寝をするときに先生が毎日「close your eyes(目を閉じて)」と言うので、「寝ること」だと思ったようです。このときは意味を訂正しましたが、子どもはこのように状況とともに言葉を覚えるのだと実感しました。
保護者が何気なく言う「バスが来たよ」「りんごだね」といった言葉を状況とリンクさせて母国語(日本語脳)は形成されていきます。このように状況と単語をリンクさせながら意味をイメージで捉えるようにすれば、機械的な暗記より簡単に記憶に残り、必要なときに単語が思い浮かんで会話がスムーズになります。
英語の意味をイメージで捉えるためには、写真や動画を活用するのがおすすめです。日本語を介入させずに意味を捉えれば、話すときにも日本語を介入させる必要がないので、日本語で考えないようにすることにもつながります。
インプットとアウトプットを繰り返す
どんな言語でもインプットとアウトプットを繰り返さなければ上達は望めません。もちろん、英語も同様です。特に英語脳を作ったり鍛えたりするうえで、インプットとアウトプットの繰り返しは基本の基と言えるでしょう。
インプットされなければアウトプットは不可能なので、最初はインプットに比重を置き、徐々にアウトプットを増やしていきます。インプットが不足した状態では幅広い表現が身につかず、アウトプットが不足した状態ではいつまでたっても英語が話せるようになりません。習得の度合いを見ながら、両者のバランスを考えることをおすすめします。また、インプットした知識は必ずアウトプットするときに使いましょう。
「英語脳」を作る効果的な練習法
次は、英語脳を作るための効果的な練習法を見ていきます。自分にあった練習法をとり入れてみてくださいね。
独り言
英語を話す相手がいない場合、独り言でも練習になります。例えば、カフェでコーヒーを飲んでいるときに、周囲の人を観察して、英語で考えてみるのもひとつの方法です。もちろん、その人たちに実際に話しかけるわけではなく、頭の中で「誰を待っているの?」「そのワンピース、ステキだね」「何を飲んでいるの?おいしい?」「これからどこに行くの?」「暗い顔をしているけど、何かあったの?」などと練習していきます。
家にいるときには声に出して独り言をつぶやきます。つぶやく内容は何でも構いません。今日あったことについてつぶやいたり、明日しなければならないことをつぶやいたりしてもいいでしょう。独り言は英語で考えることを習慣化できるのでおすすめです。
このようなつぶやきを続けていると、どう表現すればいいのかわからないものが出てくるので、わからないものは新たにインプットします。可能であれば、独り言を録音して聞いてみましょう。聞くことで改善点が見つかるかもしれません。
スラッシュリーディング
スラッシュリーディングは、英文をスラッシュ「/」で意味のあるかたまりに区切って読む練習です。英文を後ろから訳して理解するのとは異なり、「誰が」 → 「何をする・した」 → 「何のために」のように英語の語順で内容を理解できるので、理解に要する時間も短縮できます。もちろん、英語の語順に慣れるのにも効果的です。
スラッシュで区切る位置に決まりはありませんが、まとまりに意味がなければ練習にならないので注意しましょう。慣れないうちは小さなまとまりでも構いませんが、慣れてきたらスラッシュを減らして大きなかたまりにして音読します。
<スラッシュで区切る目安>
・前置詞・動名詞・過去分詞・to 不定詞の前
・接続詞・関係代名詞・疑問詞の前
・コンマ・セミコロンなどの後
・長い主語の後など
<スラッシュで区切る例>
Japanese design has influenced the world / for over 100 years. / In particular, / designs used in textiles, ceramics and paper have been adopted / throughout the world.
(日本のデザインは世界に影響を与えてきた / 100 年以上にわたって / とりわけ / 織物、陶磁器、紙に使われるデザインはとり入れられている / 世界中で)
「textiles, ceramics and paper」はコンマがあっても内容的に区切れないので区切っていません。
シャドーイング
シャドーイングとは、音声を聞きながら真似をして同じように発音する練習法のこと。英語独特のリズムや音の強弱、イントネーション、スピードなどが身につくため、リスニングやスピーキングの能力向上を目指す人におすすめです。
<シャドーイングの方法>
1.テキストを見ずにリスニング
概要を掴むことを意識しながら、テキストを見ずに全体を通して聞く。この時点では真似して発音しない。
2.1回目のシャドーイング…テキストを見ずに、聞こえたままを真似して発音
発音、リズム、イントネーションなど、音に注意を払う。音声に追いつかなくても途中でやめずに最後まで続ける。
3.録音した音声の確認
1回目のシャドーイングを聞き返して、追いつけなかった部分、間違えた部分、リズムやイントネーションなどをチェックする。
4.スクリプトを確認
ここで初めてスクリプトを見て全体の内容を掴むとともに、追いつけなかったり間違えたりした部分やわからない単語の意味などを確認する。
5.2回目のシャドーイング
1回目で追いつけなかったり間違えたりしたところや抑揚に意識しながら、もう1回シャドーイングをする。
慣れないうちは追いつくのが難しいかもしれませんが、何度も繰り返すことで上達が見込めます。大切なことは、自分の英語レベルにあった教材を選ぶことです。上記で示したのは基本的な方法ですが、最初からテキストを見てシャドーイングするなど、自分にあった方法で進めましょう。
「英語脳」を作るのに効果的なアプリ
英語脳を作るためには、ネイティブの自然な英語を聞く機会を増やす必要があります。どんな単語や表現を日常的に使うのかを知るだけでも効果的です。ネイティブの英語を聞く機会がない場合は、ポッドキャストやオーディオブックなどを活用してもいいでしょう。ここでは、英語脳を作ったり鍛えたりするのに効果的なアプリをご紹介します。自分の英語レベルにあったアプリを見つけてくださいね。
どんどん話すための瞬間英作文トレーニング
ベストセラー書籍『どんどん話すための瞬間英作文トレーニング』の公式アプリ。瞬時に日本語を英語にして声に出すことで、脳内に英語回路を構築していきます。相手が話していることは理解できるのに、なかなか英語で返事ができない人におすすめ。
TED
幅広い分野の専門家による講演会をインターネット配信するTED(Technology Entertainment Design)のアプリ。教材より自然な英語が聞けるうえ、スクリプトも見られるので英語学習に最適です。子どもが講演するものから専門的な分野まであり、英語レベルもさまざま。ダウンロードして空き時間に聞くこともできるので便利です。
VOA News
アメリカ国営放送『Voice of America』のニュースアプリ。日本人には馴染みのあるアメリカ英語なので、BBCなどより聞きやすいでしょう。自然なスピードで話すうえ英語のみとなっているため、中上級者におすすめです。
英語の思考回路を築く練習法
英語脳を作るためには、英語の思考回路を理解して練習していくことが大切です。ここでは、英語の思考回路を構築する練習法を見ていきます。
単語の置き換え練習
単語の置き換えは、ある文の単語を置き換えることで表現の幅を広げていく練習です。「How old are you?(何歳ですか?)」は英語が苦手な人でも知っている文ですが、この文の単語を置き換えることで表現の幅を広げられます。
oldは「古い」「老いた」という意味の形容詞ですから、How old are you?を直訳すると「どれくらい年老いていますか?」となります。つまり、How + 形容詞 + are you?で「どのくらい形容詞ですか?」という文が作れるということ。異なる形容詞に置き換えることで日本語を介さずに文を作っていく練習になるので、英語の思考回路を構築するのに効果的です。
How old are you? (何歳?)
How hungry are you? (どのくらいお腹が空いている?)
How tired are you? (どのくらい疲れている?)
主語を置き換えることも可能です。
How angry is he? (彼はどのくらい怒っている?)
How sick is she? (彼女はどのくらい具合が悪いの?)
また、どこかで「I get nervous easily.(緊張しやすい・すぐに緊張する)」という文を目にした場合には、「get + 形容詞」の形容詞を置き換えて表現の幅を広げていきます。主語や時制を変えたり疑問文や否定文にしたりすれば、さらに表現の幅が広がるでしょう。
I got upset easily. (すぐ動揺してしまった)
He gets hot easily. (彼は暑がりだ)
Does she get lonely easily? (彼女は寂しがりやなの?)
You don’t get drunk easily. (あなたは酒に弱くないよ)
フレーズを組み合わせる練習
フレーズの組み合わせは、前もって簡単なフレーズを覚え、それを組み合わせることで表現の幅を広げていく練習です。最初は、「文のパターン」と意味を成す「動詞のかたまり」を組み合わせるような方法がおすすめです。
<文のパターン>
I have to (私は~しなければならない)
I need to(私は~する必要がある)
I used to(以前は~したものだ)
You should (あなたは~した方がいい)
Do you want to ? (~したい?)
Why don’t you ? (~すれば?)
Shall we ? (~しようか?)
Let’s (~しよう)
<動詞のかたまり>
go out (外出する)
go home (家に帰る)
go shopping (買い物に行く)
get up early (早く起きる)
stay up late at night (夜ふかしをする)
eat out (外食する)
take a break (休みをとる)
have long hair (髪が長い)
<文のパターン> + <動詞のかたまり>
I have to go home. (家に帰らなきゃ)
I used to have long hair. (以前は髪が長かったんだ)
Why don’t you take a break? (休みをとれば?)
このように<文のパターン> + <動詞のかたまり>として英文を作れば、日本語に訳すというステップを踏まずに多くの表現が可能になります。まずは自分の生活に密着した動詞のかたまりから始め、徐々に増やしていくといいでしょう。
英語の思考回路を活用した練習
英語の思考回路を構築するうえで重要となるのは、「主語」「時制」「肯定・否定・疑問」の3つで、注意すべきは「時制」です。
なぜなら、日本語では「私は電車で仕事に通っています」のように、今現在していることではなく習慣や日常的にすることにも「~している」を使うからです。また、過去や未来にも「予防注射しているから大丈夫」「明日は何をしているの?」のように「~している」を使いますよね。ですから、日本語をそのまま訳すと変な英語になってしまう場合があるのです。
英語の時制は基本、「普段(日常的にすること)」「今現在」「過去」「未来」の4つです。それに「肯定・否定・疑問」を加えると以下のようになります。
・普段(日常的にすること):I do / I don’t do / Do you do ?
・今現在:I’m doing / I’m not doing / Are you doing ?
・過去:I did / I didn’t / Did you ?
・未来:I’m going to do / I’m not going to do / Are you going to do ?
普段:I study English every day. (毎日英語の勉強をしている)
今現在:I’m not studying English now. (今、英語の勉強をしていない)
過去:I didn’t study English last night. (昨夜、英語の勉強をしなかった)
未来:I’m going to study English tonight. (今晩、英語の勉強をする[つもり])
このように、自分が言いたいことが4つの時制のどれなのか、さらに「肯定・否定・疑問」のどれなのかを考えて英文を作る練習をすると日本語から英語に訳すことがなくなるので英語の思考回路を構築する手助けになります。上記で示した「置き換え」「文のパターン」「動詞のかたまり」をとり入れながら練習してみてください。
「英語脳」を鍛える環境作り
英語脳は日本語を介すことなく英語のみで考えたり理解したりしなければならないので、なるべく英語を使う生活環境を整えるのが近道です。
デバイスの言語を英語にする
パソコン、ダブレット、スマホなど日常的に使うデバイスの言語を英語にすると、操作と英語表現がリンクされるのでおすすめです。より英語に触れる機会を増やすには、てっとり早い方法でしょう。
日々のメモなどを英語で書く
To doリスト、ショッピングリスト、スケジュールなどを英語で書くのもひとつの方法です。もちろん、英語で日記を書いてもいいでしょう。最初は時間がかかるかもしれませんが、新しい単語もインプットできるので試してみてください。
英英辞書を使う
英語学習をしていると、単語の意味を調べなければ全体の意味が理解できない場合もありますが、そんなときには英英辞書を使いましょう。意味も英語で書いてあると負担かもしれませんが、時間とともに慣れていくはずです。英語の表現の幅を広げるという観点からも、英英辞書の使用は欠かせません。
「英語脳」を手に入れるにはアウトプットが重要
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