日本の英語教育は本当に遅れてる?現役外国語大生が突撃取材してわかった、中国・台湾の最新英語学習事情

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現代の世界共通語となっている英語は、世界中で学ばれています。そんな中、「日本の英語教育は遅れている」とよく言われますが、では世界の人たちはどうやって英語を学んでいるの?という実情を知る機会はなかなかありません。本当に何もかもが日本よりうまくいっているのでしょうか?

私は外国語大学の大学院で言語の研究をしているので、各国の英語教育事情がずっと気になっていました。そこで今回は、日本にとっては「お隣さん」とも言える中国語圏の超上級英語学習者へのインタビューを通して、現地の英語教育の実態を探ってきましたのでご紹介します。

まずは中国の英語事情について、車さん(仮名)に伺います。車さんは西方の四川省出身の英語の先生です。とてもまじめな性格の彼女は、TOEFL iBTも110点と高い実力。現在は日本語を学び、トリリンガル教師となるべく奮闘中。英語での論文執筆・発表もこなす英語力には、驚かされるばかりです。

中国の英語教育も暗記が中心

Q: いつごろから英語を始めたのでしょうか?

12歳の時に、地元の中学校で学び始めました。私は1989年生まれなのですが、私の世代は「小さいころから英語だ」という意識はなくて、中学校に上がってから学び始めるのが普通でした。今の中国の子供たち世代の場合は、小学一年生から義務教育で英語を学び始めることになっています。

Q: 中国の英語の授業はどんな様子なのですか?

基本的には日本と同じだと思います。文法をすごく重視していて、会話の時間はほとんどありませんでした。おそらく科挙(中国で近年まで実施されていた官僚登用試験や制度のこと)の時代からの伝統ですが、中国では「暗記・暗唱」が最重要視されています。「はい、このページの例文を全部暗記して」みたいなスパルタな授業が多いです。「つべこべ言わずに全部覚えてしまえ」という感じですね。あまり実用的ではないという批判は中国国内でも出ています。

Q: えっ、暗記だけではなくみんなの前で暗唱したりもするんですか。中国の子供たちは、英語を口に出すことを恥ずかしがらないのですか?

ほとんど恥ずかしがらないと思います。まず、中国語はもともと大きい声ではっきり発する言語なので、子供たちは大きい声で話すことに慣れているというのがあります。それから、中国人は大体バイリンガルなので、外国語を話すことに抵抗がないのです。

Q: 大体バイリンガル!?もう少し具体的に教えてください。

いわゆる「中国語」は、中国では「普通話」と呼ばれていて、日本の標準語に相当します。みんなの本来の母語はそれぞれの方言です。しかしこの方言というのが、標準的な中国語から比べると外国語のようなものなのです。

例えば広東省や香港・シンガポールで話されている「広東語」という方言がありますが、普通話と「全く別の言語」くらいの違いがあります。具体例を挙げると、「私は日本へ行きます」を普通話で言うと「ウォー・チュー・リーベン」ですが、広東語では「ンゴー・ホユ・ヤップン」となり、お互いに全く通じません。だからみんな学校で普通話を習うのです。その意味で、全員が方言と普通話のバイリンガルだといえます。

中国と日本の違いは海外志向の高さ

Q: 中国の英語の授業ですが、発音やスピーキングの指導はありましたか?

なかったです。今もないと思います。ただ、省のスピーチコンテストみたいなものが各地であるので、それを目指して練習したりはします。

Q: 中国の大人はどうやって英語を学んでいるのですか?

まず大学生の場合ですが、大学の授業以外では、学生の多くが、英語圏から来ているネイティブの留学生を探して英会話の練習に付き合ってもらっています。ハイレベルの大学であれば、学内に英語センターがあって英語圏の留学生が常駐しています。

ビジネスパーソンの場合はさまざまですが、TOEFLやIELTSを受けたり、スピーキングではオンライン英会話のサービスを使ったりする人が多いですね。

私が思う、日本と中国の決定的な違いは、中国の英語学習熱は非常に高くて、多くの人が英語を学んでアメリカに行ってみたいと思っているところです。その証拠に、TOEFLは中国語で「託福考試」=「福を託す試験」と呼ばれているんです。価値観が多様化してきているとはいっても、昔から変わらずアメリカに行って幸せになりたいという人は多いです。

2013年には、英語学校運営の喜びと苦悩を描いた「中国合伙人(American dreams in China)」が中国全土で大ヒットし、中国映画の賞を総なめにしました。英語への注目の高さが表れている一例でしょう。

Q: 中国の英語レベルは高いと思いますか?

私も中国の全土を見たわけではないですが、海外志向の強い若者の英語力は日本と比べて高いと思います。実際、中国のTOEICの平均点は700点を超えていて、これは英語を話さない国としては最高水準です。一方、英語が全くできないという人も多いですね。中国を旅行したとして、英語が通じるのは空港までです。駅員やタクシーの運転手・カフェの店員など、一般市民は中国語しかできない人が多いです。英語力が二極化してきているのだと思います。

Q: 最後に、英語の先生として、日本人の英語についてどう思いますか?

やはり、発音の問題が大きいと思います。英語に自信がない方だと、カタカナ発音で早口になって話してしまっているのを多く見かけます。日本語の知識のない外国人にとっては、カタカナ英語を聞き取るのはとても難しいです。そして結局思うように通じなくて、よけいに自信を無くしてしまうことが多いのではと思います。

発音をすぐに治すことは難しいですが、カタカナ発音であっても大きな声でゆっくり話せば伝わります。少しの工夫でもっとうまく英語を通じさせることが出来るので、少しもったいないと思ってしまいます。


続いて、台湾の英語事情について、グローバルに活躍するビジネスパーソンの水さん(仮名)に伺います。水さんは台湾の中央部、台中市出身の男性です。現地の大学の法学部を卒業した後に来日、一年間日本語を学んだ後、日系鉄鋼メーカーに就職されました。現在はその高い英語力を活かしてアメリカの支社で働かれています。

台湾人も海外志向が高い

Q: 水さんはいつから英語を勉強しているのですか?

僕の場合は5歳ですね。義務教育では小学3年生から英語を勉強することになっていますが、うちは両親の外国志向の影響で、5歳から英語塾に通っていました。

Q: 早いですね!5歳からやっていると、やっぱり英語は楽勝だったんでしょうか?

実はそうでもないんですよ。確かに5歳の段階では話せるようになるんですが、あっという間に忘れてしまうんですね。台湾は基本的に中文(いわゆる中国語)だけで生活できる地域ですから、日常的に英語を使うことはありません。使う機会がある外国語と言えば、圧倒的に日本語でした。

Q: えっ、日本語ですか?

僕の小さいころには、日本のコンテンツが台湾に溢れていたんです。例えば「ポケモン」とか。日本語は一言もわからなかったのですが、ずっと遊んでいました。そうして日々日本語の刺激を受けているうちに、英語はどんどん頭から抜けてしまいました。

Q: 早く始めたからといって、定着するとは限らないのですね。では、本腰を入れて英語を学び始めたのはいつ頃ですか?

高校生の時ですね。大考(大学入試)もありますが、それよりアメリカのドラマにハマったというのが大きかったです。『CSI:科学捜査班』シリーズです。せっかく観るなら原文で楽しみたいんですけど、あまり聴き取れないし、単語もわからなくて、中国語の字幕なしでは理解できない。「あれ、俺5歳の時より劣化してるぞ」とショックを受けました(笑) それから英語を勉強しようと思い始めて、TOEICの本を買って勉強しました。

Q: 台湾でもTOEICを受ける人が多いのですか?

すごく多いですよ。現地では「多益(トゥオイー)測驗」と呼ばれています。ホワイトカラーを目指す人はおそらく全員受験がしていると思います。僕の卒業した台湾政治大学では、全員が600点を取らないと卒業できないことになっていました。一流大学と言われるところはどこもそうだと思います。

Q: 台湾の方たちの英語を学ぶ意欲は高いですか?

高いですね。今の台湾の若者は海外志向が強いんですよね。僕自身、台湾で就職せずに日本の企業に就職しました。

なぜかというと、台湾で就職しても給料がよくない。弁護士の初任給が4万台湾ドル(約12万円)ですからね。だったら給料のいい国で就職したい。そのためには英語が必要不可欠です。プラスアルファで働く先の国の言語を学びます。僕の場合は日本語ですね。

Q: なるほど、海外で働きたいという若者が英語を学ぶのですね

それだけではありません。台湾で働くことを選んだとしても、英語は必要です。台湾全体が外需依存経済だからです。国内で働いていても、お客さんは外国人だらけ。中国語しかできない人に条件のいい仕事はありません。どこで働くにしても、英語を勉強しないとスタートラインにも立てないんです。

カタカナ発音からの脱却が英会話上達のカギ

Q: 学校の授業はどうでしたか?

文法と単語の暗記が中心でした。発音とか会話の授業はほとんどなかったです。大考(大学入試)で出題されるのはリーディング・リスニング・ライティングで、スピーキングは出題されないからです。台湾の入試制度は日本と違って「センター試験一発勝負」です。全国の学生が同じテストを受けて、点数が高い順にいい大学に行けます。センター試験で出題されないスピーキング能力は誰も勉強しません。だから、スピーキングが苦手な人は多いですよ

Q: 意外ですね。台湾の方のスピーキング力は高いというイメージがありました

大学入学後に、英会話スクールやオンライン英会話を使って、独学で英会話を学んでいるので、そのようなイメージがあるのかもしれません。ただし、日本で出会う人――つまりわざわざ外国に出て来ているような人達はもともと英語が得意な場合が多いということです。台湾の国内には英語のできない若者が大勢います。むしろできない人の方が多いかもしれない。英語が特別できる層と日本人全体を比較してどうこう言うことは、あまり意味がないと思います。

Q: 最後になりますが、日本で英語を学ぶ人の英語についてどう思いますか?

リーディング・ライティングのレベルは台湾より高いと思います。問題があるとすれば発音でしょうか。どうしてもカタカナ発音になっている人が多く、日本歴が長くないと聞き取れません。

これは私の周りにいる、日本で暮らす台湾人がみんな不思議がっています。中国語にはカタカナのように外国語を表記する文字がないので、「外国語を中国語の発音で読もう」という発想がないんですよ。日本の方にも、できればカタカナで英語を読むのはやめて、標準的なアメリカ発音で話してほしいと思うことがありますね。

まとめ

中国語圏の人たちも、英語で苦労している。

日本の英語教育の問題点がよく取り沙汰されているので、他の国は全てうまくいっているかのように錯覚してしまいがちです。筆者自身、知らず知らず日本の劣っている点ばかりを数えるような考え方をしてしまっていました。今回中国語圏のお二人へのインタビューを通して、外国の方もそれぞれ苦労しているということを知りました。

外国人みんなが英語が得意なわけではない

中国も台湾も、日本と同様に文法中心の教育がされているので、スピーキング力で悩んでいる方が多いことは変わりません。それでも努力を重ねて英会話を習得した人が積極的に外国に出て行くようです。外国人である私たちは、そういう「英語が得意な」方たちにしか出会わないので、みんなが英語ができると錯覚してしまいますが、現地には英語が苦手な方も大勢います。

これは中国語圏に限らず、全ての外国の方に言えると思います。ですから「外国の人はみんな英語ができる。それに引き換え私は……」と思い悩む必要はありません。彼らはその国の中でも「特別英語ができる層」だからです。

カタカナ発音からの脱却を!

車さんも水さんも、日本人の知的水準は高いとおっしゃっていました。日本人ビジネスパーソンはみんな知的であり、日本語で話をすると、考える力の豊かさに驚くと言います。

だからこそ、カタカナ発音はもったいない。外国人にとっては理解しづらいだけでなく、子供っぽく聞こえてしまいます。内容がすぐれているのに、英語の発音のせいで正当に評価されないのだとすれば、私ももったいないと思います。カタカナ発音からの脱却が必要です。

しかし、大人が発音を習得するのは簡単なことではありません。独学で勉強すると、本当にあっているかわからず、変な発音が定着してしまうおそれもあります。

通じる発音を身につけるためには、既に高いレベルにある人と一緒に学ぶのが一番です。ひとつの選択肢として、レアジョブのようなオンライン英会話のサービスを使って集中的に訓練することで、発音は一気に改善できると思います。

実は、発音はネイティブスピーカーには指導が難しいものです。彼らにとっては、発音は知らず知らずに習得したものだからです。それに比べ、ESL(第二言語)の環境で英語を習得した方たち―フィリピン・香港・マレーシアなど―は、自分も苦労して英会話や発音を身につけた経験があるため、勉強する人の立場に立った指導ができると筆者は思います。習うなら英語を勉強した経験のある先生を選択したいところです。

英語を口に出すことを恐れる必要はない!

多くの外国人にとっても、英会話は苦労して身につけたスキルです。英会話を習得する大変さを知っているからこそ、日本人の英語を「バカにする」ことはありえないと、お二人は口をそろえます。カタカナ発音だって、「もったいない」と思うことはあっても「だから笑ってやろう」とは絶対にならない。

「勇気を出して英語を話しましょう」とはよく言われますが、そうは言っても恥ずかしいものは恥ずかしいですよね。実は私もいまだに恥ずかしい思いをしながら英語を使っています。

でも、「少なくともバカにされることはないのだ」と思ったら、気が楽になりました。是非読者の皆様にも、恐れることなく英語を口に出してみてほしいと思います。実のところ、第二言語として英会話を身につけた経験のある人たちはみんな同じ思いをしながら英語を話しているのです。

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