安河内哲也先生が英語を習得するために大切にしてきたこと/前編

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安河内哲也さん
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photo by MIYAZONO JOHNNY KOJI

予備校のカリスマ英語講師としておなじみの安河内哲也さん。最近は、テレビでも楽しく英語を教えてくれる姿をよく目にします。TOEICはリスニングとリーディング問題がマークシート形式で出題される通常のテスト990点満点に加え、スピーキング、ライティングのテストも各200点満点!また、講演会では急に英語でしゃべり出したかと思えば、パーティーでは初対面とおぼしき外国人と気軽に雑談を楽しむ姿を目にすることもしばしば。そんな安河内さんにも英語初心者だったころはあるわけで……。帰国子女でもなければ留学経験もなしでどうやってその英語力を身につけたのか? 秘密を教えてもらうべく、インタビューを敢行!どんなレベルの人でも今すぐ英語をしゃべり出したくなるような、背中をグっと押してくれる話がたくさん飛び出しました。

英語=カッコいい&憧れ でも、学校の成績は×

Q:まずは英語との出会いを教えてください。

私は九州の福岡県のド田舎に生まれました。当時はネットなんてもちろんありません。小中学生のころはCDさえまだないカセットテープの時代。今みたいに英語教育のツールは、豊富にはなかったんです。そんな中で英語に触れることができたのは、数少ない娯楽の1つだった映画を通じてでした。映画館でアメリカ映画を見るっていうのが、私にとって最大の楽しみだったんです。

だから、英語やアメリカに憧れを抱いて、意味もわからないのに、見たばかりの役者さんのセリフを物まねみたいにして口に出していました。「スターウォーズ」の“May the force be with you.”とかね。でも、だからといって、英語がうまいわけでは全然ありませんでした。中学でも英語の勉強はそんなにできるほうではなかったんです。

高校生の頃は、マドンナやマイケル・ジャクソンなどの洋楽をよく聞いていました。あの当時の中高生はアメリカ文化への憧れが強かったですから。でも、学校の英語の授業は全文和訳みたいなものばかりで興味が持てなかった。憧れの英語と学校の英語は別物だったんですね。

結局、浪人して地元の予備校に通うことになりました。すると、そこの英語の先生がすごく面白い人だったんです。英語がとても上手で、ひたすら音で学ぶ授業をしてくれたんですね。それで受験英語もできるようになって、東京の大学の英語学科に入学しました。

デタラメでも話しちゃえ!と思えた転機は牧場!?

Q:大学に入るころには、もうある程度英語が話せたんですか?

いえ、全然。大学では周りの帰国子女に圧倒されて、全然話せませんでしたよ。

話せるようになったきっかけは大学2年の夏に行ったアメリカへのバス旅行でした。まず行く前は「アメリカに行けば話せるようになるだろう」という気持ちだったんです。でも、向こうに着いてすぐ実感したのは「ああ、いるだけではダメなんだ」ということ。現地で1年も2年も滞在しているのに、全然英語ができない日本人にたくさん遭遇したからです。日本からアメリカに場所を変えても、根本的な勉強のやり方や意識を変えなければ、できるようにならないんですよね。

特に私の場合は、勉強のやり方というよりはまず意識の持ち方が良くなかった。どういう英語を目指せばいいのかという、根本のところが間違っていました。当時はいつもTOEFLの勉強ばかりしていたこともあって、「TOEFL試験に出て来るような、完璧できれいな英語で話さなければ! ましてや、三単現( 三人称)のSがついていないまま話すのなんて赤っ恥もいいところだ」と思い込んでいたんです。

このままではダメだとわかりながらも打開策が見つからないままバスでの旅を続け、コロラドのデンバーの近くの牧場に立ち寄ったときに転機が訪れました。泊まったユースホステルには、ヨーロッパ人、アジア人と多国籍な若者も宿泊客としていました。夜はバーベキューをしながらビールなどお酒も飲みつつ、みんな英語でにぎやかに議論しているんです。南アのアパルトヘイトがどうだとかね。

そんな中、自分だけが会話の輪に入り込めない。仕方なく観察していたんですが、よく聞いてみると三単現のSなんか付いていなければ、時制も滅茶苦茶だし、アクセントもでたらめ。それでも、楽しそうに議論は交わされている……。そのときは私もビールを飲んで若干気分が大きくなっていたのもあったんでしょう、「デタラメ英語でもいいから話してみよう」という気になったんです。

話し始めたら、そんなデタラメ英語でちゃんと会話は成立しました。みんなともすぐに打ち解けることができました。三単現のSが抜けていても、時制の一致がなくても、アクセントが違っていても、何の問題もなかった。そこから先は「ああ、こげな英語でよかとね〜」と安心してベラベラしゃべり続け、そのまんま現在にまで至るという感じです。

ネイティブ信仰を即刻捨ててノンネイティブと話そう!

Q:意外なほどアバウトな感じですね?

ええ(笑)。でも、日本人特有のネイティブ信仰こそが、英語ができない一つの大きな原因なのは確かですし、私も以前はどっぷりその信仰に浸かっていましたから、アメリカ旅行が転機になってホントによかったと思っています。

かれこれ私はもう30年以上毎日英語を学んで使っていますが、それでもネイティブスピーカーのようには話せませんし、これからもならないでしょう。でも、それは全く恥ずかしいことではない。なぜなら自分は日本語のネイティブだし、英語ネイティブになろうとはハナから思っていないからです。外国語として使いこなせれば十分だと考えています。

「帰国子女やネイティブスピーカーみたいな英語じゃないと使っちゃダメ」という考えがメンタルバリアーとなって、日本人が英語をもっと自由に話すことを相当阻んでいる気がしてなりません。こういった考えは、即刻捨ててほしいですね。

ネイティブのような英語を目指さなければならないという発想自体、もう時代遅れです。たとえば世界では、複言語主義とよく言われるように、「いろんな言語の価値を認めつつ、便利な世界共通語として英語を外国語として使っていこう」という考え方が既に一般的です。さらに言えば、「ネイティブスピーカーのような英語ではなくて、制約された語彙や文法であっても、とにかくドンドン使ってコミュニケーションやビジネスをしていこう」という時代に入っているんです。

なのに、いまだにアメリカ人やイギリス人の英語ばかり研究している人が結構多いですよね。“高みを極める”という意味では素晴しいことかもしれませんが、結局それがまた心理的なバリアーになってしまう。そこを意識せず、「まあ深く考えずに、ガンガン英語をしゃべろう!」というマインドを持つことが大切です。

Q: 以前、レアジョブ英会話で調査したときも「英語はやっぱりネイティブの先生に習いたい」という割合は非常に大きかったんです。レアジョブ英会話の講師は全員フィリピン人で特有のなまりが多少ある講師はいるものの、会話をするにはまったく支障はありません。それでも「ネイティブじゃないと……」とお考えの方もかなりいらっしゃるようです。

日本人がビジネスのために英語で話す場合、相手はおそらくアジア圏の方がかなり多いのではないでしょうか? また、アジアに限らず世界に目を転じても、英語で話す相手が英語のノンネイティブスピーカーである場合のほうが多いと思うんです。さらに、世界で英語を話す人の数を考えても、ノンネイティブのほうが圧倒的多数を占めます。「美しいアメリカ英語」と日本人が捉えているような英語の話者は10%にも満たない。別に日本人なまり、インド人なまりなど、国ごとの“お国なまり”があるのは恥ずかしいことではなくて、むしろ当然のこと。「相手がわかりやすいよう、ゆっくり明確にしゃべるようにしよう」という気持ちがあれば心配には及びません。

だから、私は「フィリピン人の先生だから」と敬遠することはないと思いますね。ある意味、初心者にはフィリピン人のほうがいいとさえ言えるかもしれません。アメリカ人やイギリス人は母語が英語なので、語彙に制約をかけて、複雑な構文も使わないようにするのが難しい。でも、フィリピン人なら語彙の制約もある程度あるし、難解極まりない表現など用いないから、お互いもっと近いレベルで会話がしやすい。初心者でも何とかやっていけるレベルです。いろんな国のノンネイティブスピーカーと話してみることは素晴しいこと。強くオススメしたいですね。

Q:なまりや文法的間違えをあまり気にしなくていいと言われると、確かにもっと楽に英語を口に出すことができそうです。

そうですね。私が英語を使う国際コミュニケーターとして失格だと思う人は、「自分はそんな偽物の英語は習いたくない」「本物のアメリカ・イギリスの英語じゃないと嫌」「日本人やノンネイティブから英語を習ったり、しゃべったりするなんてダメ」というタイプですね。 英語は諸外国の人と話すための道具なんです。カメやヤギなどほかの動物とは、英語を使ってコミニュケーションできませんが、人間なら何人なにじんであっても、片言の英語だって、どんどん使ってしゃべれることができます。別に日本人同士でだっていいんです。

単語は覚えたらすぐ使う。でも、スピーキングの表現は1パターンで

Q:大学2年のアメリカ旅行で「間違えを恐れずにしゃべればいいんだ」と、英語に対する考えを一新された安河内さんですが、では実際にはどんな勉強法で実力をアップさせたのですか?

TOEFLの問題などを音読して覚えた単語やイディオムなどは「すぐ使う」という主義でしたね。覚えたものは片っ端から口にするぐらいの勢いでした。

ただし、スピーキングに関しては特に最初は、あまり持ちパターンを増やさないようにしました。何か頼むなら、I would appreciate it if you could…とかIf you don’t mind, could you kindly…?とかいろいろ覚えるのではなくて、すべてCould you…?にまとめる。何かしたいときなら全部I’d like to…にしておく、という感じですね。

シチュエーションに応じて使い分けましょうとかよく言いますけど、そんなレベルじゃなかったですから。大学3年でTOEIC900点台、TOEFL600点台、大学4年で英検1級をとっていましたからテスト的にはけっこう優秀だったかもしれませんが、それでも話すときに表現の使い分けなんてできませんでした。

「気の利いたネイティブの使い分け」といった類いの英語学習本がよく売られていますけど、目にするたびに「できるわけないだろ〜!」と心の中で突っ込んでました(笑)。1日10時間ぐらい英語の勉強に費やして、英語圏で10年ぐらい過ごせばできるようになるかもしれませんが。そうでなければ、普通のノンネイティブに細かい使い分けはまず無理です。日本語の達人のパックンやデーブ・スペクターのような何十年も日本どっぷりという生活の真逆を実践しなければ到達はできません。

日本で生活していてネイティブ並に到達するなんてほぼ不可能なことですし、その必要もない。自分の道を行けばいいんです。キャラ勝負ですよ! そう考えれば、かなり気楽に英語が使えるではないでしょうか。繰り返しになりますが、今の世界の考え方もこれが主流です。 ネイティブのauthenticな英語でないとダメというのはもう時代遅れです。

Q:では、スピーキング力をアップさせるコツをズバリ教えてください。

大事なことはデタラメ英語でもいいのでしゃべること。どんどんしゃべって練習するんです。アメリカ人みたい(なしゃべりかた)にならないとダメというのは、やっぱりおかしな話で、日本人はどうしたって日本人なんです。だから、確固たるアイデンティティーと母語の日本語によって構築された論理的思考力や話術を土台にした上で、外国語として英語を載せていくというのが本来あるべき姿なんです。ここを見失っている人があまりにも多いように思います。

ただ、そうなってしまっているのには英語を教える側にも責任があって「これぐらいの英語が適切なんだよ」というものをはっきり示していないんですね。私がよく言っているのは、日本人の一流商社マンが使っているような、ビジネスが支障なくできるような明瞭な英語を目指すべきということです。どこの国の人にもわかるようにするのです。それは、決して帰国子女やネイティブのような英語ではありません。

【後半】の記事はこちら

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