英語をマスターするのに会話はほんとうに必要?

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「英語マスターのためには、たくさん勉強して、たくさん話すべし」これはもう常識になっています。とくに会話について言えば、しゃべらないで会話が上手くなるわけはありません。ですが、日本人の英語が伸びないのは、積極的にアウトプットをしないからだという意見も根強いです。

ですがなんと、語学習得の研究によると、「会話は要らない」という意見も多いようです。会話の勉強に会話が必要ないって、一体どういうことでしょうか?今回は、第二言語習得学という学問から、英語マスターの道を探ってみましょう。

第二言語習得学とは?

第二言語習得学(Second Language Acquisition)は、外国語習得を研究する学問です。子どもが自分の母国語をマスターするシステムや、外国語の習得方法についていろいろな研究がされています。また、いろいろな「教え方」について、検証が続けられています。

語学マスターのために、読んだり聴いたりの「インプット」と、書いたり話したりの「アウトプット」のどちらが大事なのか?という研究は、昔から積み重ねられています。その中には、大きく分けて2つの立場があるようです。

語学に会話は不要?インプット理論

語学のマスターに、書く・話すは必要ない!と言い切ったのが、アメリカのクラッシェンという学者です。クラッシェンは、「インプット理論」という理論を考えました。外国語の習得では、話したり書いたりすることはあまり必要なく、大事なのはインプット……これがインプット理論です。

それは、ただシャワーのように英語を聴き流すという意味ではありません。「理解可能」なインプットをたくさん仕入れることが、外国語マスターの道だと考えたのです。「何を言っているかわかる」内容をたくさん聴いて読めば、外国語ができるようになる、というのがクラッシェンの考えだったんですね。

英語の勉強に多読・多聴が大事なことは、多くの英語マスターに指摘されています。例えば、『武士道』で有名な英語の達人、新渡戸稲造は、「図書館にある本は片っ端から全て読んでしまう」ほどの多読者でした。

インプットがしっかりしていれば、アウトプットは後からついてくる、というのがインプット理論の考え方です。語学がよくわかっていないのに無理に話すと、間違ったまま覚えてしまってあぶないとも考えています。

例えば、「fish」という単語には複数形はありません。それを知らずに、「I like eating fishes」と毎日いっていたら、間違ったまま定着してしまいます。後で「間違っているんだ」と気づいても、そこから直すのは大変ですよね。間違いがかたまってしまうという意味で「化石化」と呼ばれています。

大事なのはインプットで、アウトプットは2の次、こういう考え方もあるのです。

会話はやっぱり必要?アウトプット理論

これに対して、アウトプットも大事だと考える理論もあります。カナダ・トロント大学のスウェインという学者が有名です。

スウェインは、英語をはなす子どもがフランス語を勉強する場合、カナダは理想的な場所だと考えていました。カナダは英語とフランス語の両方が公用語になっていて、日常的にフランス語を聴くことができるからです。

ところが実際に調査してみると、そうとも言えない結果が出てきました。カナダでフランス語を勉強している英語ネイティブは、リスニングはネイティブレベルまで伸びます。でも、話したり書いたりしてみると、ハイレベルとは言えないようなのです。

日常的にフランス語に触れているのに、フランス語ができない……。このようなことは世界中でよく起こっています。例えば台湾は中国語が公用語ですが、台湾語(閩南語とよばれる方言)も広く使われています。ですが、若い世代の多くは台湾語が聞き取れるだけで、話すとなると中国語しか使えません。

このような現象に対して、スウェインは「アウトプットをしないから、語学力が伸びないのだ」と考えました。インプットの量がいくら多くても、アウトプットを適切にしていなければ「使える」ようにはならないのです。

アウトプットの最大の効果は、自分は何がわかっていないのか気づかせてくれることにあります。私の例ですが、以前アメリカの方とお話ししたとき、今度スピーチの仕方を教えてほしいとお願いしたことがあります。

Could you teach me …

ここで止まってしまいました。「スピーチをする」の「する」を英語でなんというかわからなかったのです。そこで、ことばを向けるという意味の「address」を使ってみました。

Could you teach me how to address a speech?

すると相手の方は怪訝そうな顔で、「What do you mean by address?(addressってどういう意味?)」と聞き返してきます。帰ってから辞書を引いてみると、「スピーチをする」は「give a speech」だったのです。

もし耳から入れば、「give a speech」の意味はかんたんに理解できます。でも、いざ言ってみると出てこない場合があるのです。この場合、「わかる」表現でも「できる」表現ではなかったと言えるでしょう。アウトプットしてはじめて「自分はなにができないのか」わかると言えるでしょう。

フランス語や台湾語の例も同じで、アウトプットをしないから「わかる」が「できる」になっていないと言えるのかもしれません。だから、リスニングは完ぺきでも話せないのです。

アウトプットは「わかる」を「できる」にするために必要だといえるのです。

一番大事なのは「理解できるインプットを増やす」

ふたつの考え方に共通しているのは、「大事なのはインプットの量」という考え方です。どちらの考えを取るにしても、インプットがあることは前提です。これをふまえて、実際の英語学習方法を見直してみましょう。

①まずはインプットを増やす

多聴・多読が大事になります。それも、理解可能なインプットです。理解できないものをいくら聴いても、語学のマスターにはほとんど役に立ちません。クラッシェンは、「自分のわかるレベル+1」くらいのインプットが大事だと考えていました。今のレベルより少し高いものを使うのが大事です。

具体的には、自分が興味を持っているものについてひたすら読んだり聴いたりするのが効果的です。ある有名な第二言語習得理論の先生は、競馬が大好きで、競馬に関するものだけは全て英語で調べたそうです。自分の好きなトピックなら、背景知識が頭に入っているので、単語だけ調べれば「理解できる」ものになります。このように「狭い」範囲を徹底的に勉強する方法は、よいインプットをしやすくなります。

②初めのうちは無理なアウトプットはしない

無理なアウトプットをはじめからすると、間違った知識が固定されてしまうかもしれません。インプットをたくわえないでアウトプットをするのはかえって危ないでしょう。

ある程度インプットをしたら、積極的にアウトプットすることで「わかる」を「できる」に変えることができます。その場合には、英会話やSNSなどを積極的に使いましょう。アウトプットには「自分が何ができないか」を見つける力があります。「間違った言い方をしたら訂正してください」と先にお願いしておくことも大切です。

まとめ

インプットは「わからない」を「わかる」に変える力を持っています。アウトプットの役割は「わかる」を「できる」に変えることです。アウトプットだけに目を向けすぎず、上手く使い分けていくことで語学が上達していきます。多聴多読の王道を外さず、上手に語学を学んでいきましょう!

参照文献

・Bill VanPatten, G. BenatiAlessandro. (2017). 第二言語習得キーターム事典(川崎貴子ほか[訳]). 開拓社.
・迫田久美子. (2002). 日本語教育に生かす第二言語習得研究. 株式会社アルク.
・廣森友人. (2015). 英語学習のメカニズム. 大修館書店.

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