仮定法っていつ使うべき?英会話でも実用性満点!今日から使える仮定法のテクニックを徹底解説

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※この記事内の例文は、World Englishes の考え方に則り、英語ネイティブにとって正確であることより、あらゆる人に分かりやすいことを優先しています。

みなさまこんにちは。ライターの石田です。

前回は、仮定法の仕組みを私なりに徹底解説させていただきました。

今回は、会話の中での実践的な仮定法の使い方を考えていきましょう!

1. おさらい ・・ 仮定法のニュアンス


仮定法は、「今から言うことは現実じゃないと私はわかっているよ」という「ムード」を出すために使われます。

(1) I have enough money, I can buy the computer.
(私は十分なお金を持っているので、そのコンピューターを買うことが出来る)

(2) If I had enough money, I could buy the computer.
(もし十分なお金を持っていたら、そのコンピューターを買うことが出来るのに=お金がなくてそのコンピューターを買えない)

動詞や助動詞の過去形を使うのは、「過去形」は現実との距離感を広げる力を持っているからです。時間的な距離を広げる場合には「過去」になり、事実との距離を広げる場合には「仮定」になります。

また、次に挙げている仮定法過去完了は、時間とも事実とも距離を取らなければいけないので、二重に距離を広げるために「過去の過去」である過去完了形を使っているのです。

(3) If I had had enough money yesterday, I could have bought the computer.
(もし昨日十分お金を持っていたら、そのコンピューターを買えたのに=昨日はお金がなくて、そのコンピューターを買えなかった)

ここまで丁寧に仮定法を解説するのにはもちろん理由があります。英話においては、自分が「事実だと思っている」ことと「事実だと思っていないこと」を2つに分けて表現することが、英語の絶対的なルールなのです。その意味で、仮定法を知らないと、英語を半分しか知らないということになります。

仮定法を使う理由は主に2つあります。

①「もし○○していただければ」のように、敬語として使用する。

②「事実でないとわかっている」ことをあえて言ってみることで、なんらかのニュアンスを付加する。

この2つの主な使い方を学んでいきましょう。

2. 仮定法はなぜ口から出ないのか?


仮定法を勉強したことがあるのに、とっさに口から出ない!..という方は多いと思います。正直に言えば、私自身もその1人です。なぜ仮定法は口から出てきてくれないのでしょうか?

1つは、形の煩雑さのせいだと思います。仮定法過去ですら、1つの事を言うのに、動詞を過去形にしたり助動詞の過去形をつけたり、色々なことをしなければいけません。仮定法過去完了ともなればなおさらです。

もう1つは、「使いどころがわからない」ことが原因ではないでしょうか? 仮定法の存在は知っていても、じゃあいつどのようなシーンで使えるの?-と言われるとわからないという方は多いと思います。これは、言語形式を教えることばかりに力を入れ、どんな目的で使われるのかを教えることを怠ってきた英語教育業界の問題とも言えます。

3. 敬語としての仮定法


前置きが長くなりました。まずは、ビジネスパーソンの方にとって必要度が高い「敬語用法」の使い方を勉強してまいりましょう。

もしAをしていただければ幸甚です」

「Aをしてください

日本語でも、仮定表現は敬語の中に組み込まれています。仮定することによって、「これはまだ現実になっていないことで、選択権はあなたにあり、あなたの選択で初めて実現するのだ」というニュアンスが出てくるからだと思います。

このような敬語としての仮定法の中で最もよく使われるのは、“could you”, “would you” でしょう。

(4) Please send me an e-mail later.
(後でメールを送ってください)

(5) Could you send me an e-mail later?
(後でメールを送っていただけますか?)

(6) Please teach me English conversation.
(英会話を教えてください)

(7) Would you teach me English conversation?
(英会話を教えてくださいますか?)

上の文よりも下の文の方が丁寧である感じが伝わると思います。

この例は、形こそ教科書に出てくる仮定法とは違います。しかし、助動詞の過去形を使って「これはまだ決定していない仮定の話だ」というムードを出し、選択権を相手にゆだねています。表わしているムードはまさしく仮定法のものであり、仮定法の1種と言えるでしょう。

前回のおさらいになりますが、“could” と “would” のどちらを使うかは、ニュアンスによって変わってきます。

“could” は “can” が変化したものなので、相手の能力や状況を問います。“Could you teach me English?” は、相手に英語を教えるだけの英語力や指導力、英語の指導に割く時間があるかどうかを尋ねる表現なのです。

“would” は “will” が変化したものです。“will” には “free will”(自由意志)のように、「意志」という意味があります。ですから “Would you teach me English?” は、相手に英語を教えてくれる意志があるかどうかを尋ねる表現になります。こちらには、「やる気ありますか?」というニュアンスが出てくるので、若干キツい言い方になる場合もあります。

たしかに微妙なニュアンスの違いはありますが、差し当たって日本語の「○○していただけますか?」と同じであると考えて構いません。日本語で「○○してください」と言いづらいような場面で使いましょう。

(8) Please check this document.
(この資料をチェックしてください)

(9) I realize that this is a tight schedule, but could you check this document by this evening?
(お忙しいところすみませんが、この資料を夜までにチェックしていただけませんか?)

(10) Please show me the handout.
(プリントを見せてください)

(11) Excuse me, would you show me the handout?
(すみません、プリントを見せていただけませんか?)

お願いの際には、“I realize that this is a tight schedule”,“Excuse me”のような、気遣いを表わすフレーズを足すのも効果的です。従来、英語ではこういう「日本的な」言い方は必要ないと言われてきましたが、実際にはよく使われています。

(12) Please give me a receipt.
(レシートをください)

(13) Could I have a receipt?
(レシートを頂いてもよろしいでしょうか?)

このように、主語を自分にしても使うことが出来ます。

このような助動詞の過去形を使った言い方は大変使い勝手がよく、ノンネイティブ同士の会話でもごく普通に使われていますので、習得すると大変重宝します。英語に割ける時間が少ない方であれば、とりあえずこの “could”, “would” だけでも勉強すると効率的です。「○○していただけませんか?」と言いたい時に使ってみましょう。

またこの仮定の “could ”は、相手に反論する場合にも使えます。「英語では yes/no をただ直接的に言えばよい」という考え方は日本では未だに信じられていますが、実際は相手の意見を否定するのは何語でも気を遣うものです。相手の意見を受けて

(14) I don’t agree with your opinion.
(あなたの意見には賛成できない)

では直接的過ぎて失礼に当たりますし、相手は傷つくかもしれません。

(15) You could be right, but it seems to me that A.
(あなたの意見は正しいかもしれませんが、私にはAであるようにも思われます)

いったん「相手の意見が正しいかもしれない」と受け止めるときに、“You could be right, but~” といういい方はよく使います。「相手の意見が本当に正しいかどうか」をいったん棚上げし、その上で反論をするのです。この時仮定法の持つ「これが事実じゃないと私はわかっているよ」というムードはやや薄れています。

また、“mind if” フレーズも仮定法の力を使った依頼表現です。

(16) Can I smoke?
(タバコを吸っていい?)

(17) Would you mind if I smoke?
(仮に私がタバコを吸ったら、お気になさいますか?→タバコを吸っても大丈夫ですか?)

(18) Can I open the window?
(窓を開けてもいい?)

(19) Would you mind if I open the window?
(仮に私が窓を開けたら、お気になさいますか?→窓を開けても大丈夫ですか?)

これも決定権を相手に渡す言い回しで、よく使います。相手の「意志」を尋ねる言い方なので、“could” は使えません。

ちなみに「吸っていいよ」と答える際には “No, not at all” のように否定文で答えるのが自然ですが、迷うようであれば “Sure.” や “OK.” でも構いません。

“would you”, “could you” よりも丁寧な言い方に、“I would appreciate it if you could do A” があります。“appreciate” は「感謝する」という意味の他動詞です。 直訳すると、「もしあなたがAをしてくれるとすれば、私はそれに感謝をするでしょう」という意味になります。「Aをしていただければ幸いです」がニュアンス的に近いでしょう。

(20) Please help me with checking the draft of the handout this afternoon.
(今日の午後、プリントの草稿をチェックするのを手伝ってください)

(21) I would appreciate it if you could help me with checking the draft of the handout this afternoon.
(もし今日の午後、プリントの草稿をチェックするのを手伝っていただければ幸いです)

(22) Please take part in the conference this evening.
(今日の夜の会議に参加してください)

(23) I would appreciate it if you could take part in the conference this evening.
(もし今日の夜の会議に参加していただければ幸いです)

非常にフォーマルな言い方なので、会話ではあまり使われませんが、ビジネスメールでは多用されます。反射的に口から出せる必要はありませんが、書けるようになる必要があると言えるでしょう。日本語の「○○していただければ幸いです」と同じニュアンスであると理解しておけば大丈夫です。“appreciate” の後の “it” を忘れがちなので気をつけましょう。

<< 仮定法を使った依頼表現をおさらいします >>

① “would you do A?”, “could you do A?”

最も使い勝手がいい表現で、日本語の「Aをしていただけますか?」に似たニュアンスを持っています。ノンネイティブ同士の会話でも頻出するため、最も重要度が高い仮定法の使い方だと言えるでしょう。もし時間的に余裕がないなら、この使い方を覚えるのが最も有効です。

“would” は「意志」を表わす “will” から派生した言葉なので、“would you do A” は「Aをして下さる意志はありますか?」というニュアンスになります。

一方、“could” は「可能」を表わす “can” から派生した言葉なので、“could you do A”は「Aをできる環境や能力はありますか?」というニュアンスになります。

とはいえ、さほど気にする必要はありません。相手がノンネイティブならこのような些細なニュアンスの違いは気にしないでしょう。ネイティブスピーカーであっても、相手が外国人である以上、細かい使い分けに目くじらを立てたりはしないからです。

② “would you mind if I do A?”

こちらも仮定法を使った丁寧な言い方です。「わたしがAをしたらお気になさいますか?」という、やや遠回しなお願いの表現です。

自分から言い出す場合には、“could I do A?” の方が簡単なので、私はあまり使いません。しかし、相手に言われた際に、「イエスとノーどっちで答えればいいんだっけ?」と混乱することはあります。正式には “Not at all.” と否定形で答えますが、“Sure.” “Fine.” “OK.” でも十分通じるということだけは覚えておいていいと思います。

③ “I would appreciate it if you could do A.”

こちらはかなり正式的な表現です。「もしAをしていただけましたら幸いです」という日本語と似ています。口頭で使うことはほぼありませんが、ビジネスメールなどフォーマルな書き言葉においては頻出です。定型文として覚えておくと便利なフレーズです。

4. 敬語以外の仮定法


ここまで、敬語を用いた正式な依頼表現の仮定法をご紹介してきました。ここまで読まれた読者の方は、「仮定法って敬語にしか使わないのか」と思われているかもしれません。確かに多くの方にとって優先度が高いのは敬語としての仮定法ですが、そうでない仮定法も不必要なわけではありません。

最初にも書きましたが、自分が「事実だと思っている」ことと「事実だと思っていないこと」を2つに分けて表現することが、英語の絶対的なルールです。しかしながら、日本語を話す私たちにとって、このような考え方はわかりにくいものです。敬語以外の仮定法は実際にはどういうシーンで使われるのでしょうか。

私が大陸中国の方・香港の方と三人でお話をしていた時のことです。私は中国語(普通話)を勉強しているので、大陸中国の方とは中国語でお話しできます。しかし、香港の方の話す広東語という言語はさっぱりわかりません。そうすると、大陸中国の方とは相手の母語で話せる一方、香港の方には外国語である英語や中国語で話すのを強いることになります。私としては、ずいぶん申し訳ない気持ちになり、こう言いました。

(24) I wish I could speak Cantonese.
(広東語が話せたらよかったんですが……)

この仮定法には、広東語を話せない私の悔しさ、申し訳なさをにじませたつもりです。香港の方には通じたようで、「こちらも日本語が出来ないのだから気にしないでくれ」と言ってくださいました。

もしこれを

(25) × I wish I can speak Cantonese.
× 広東語が話せてよかったのにです)

このように直接法で言ってしまうと、広東語が話せることを「事実だと思っている」という風に伝わってしまいます。香港の方は「じゃあ話したらどうですか」と答えたかもしれません。

これも前回のおさらいになりますが、仮定法には敬語だけでなく、なんらかのニュアンスを付加する力もありましたよね。どんなニュアンスかは話し手と聞き手の関係性や文脈によって変わります。

(26) If I were available, I would help you do chores.
(もし時間があったら、雑用の手伝いをするのに)
→申し訳なさ・悔しさ

(27) If I had been there at that time, I would have kicked him on his face!
(もしその時俺がそこに居たら、あいつの顔面を蹴っ飛ばしてやったのに!)
→怒り・悔しさ

これらの仮定法は、マイナスの感情を加えるために使われているようです。

一方で、

(28) If I lived in Tokyo, I could not see this beautiful ocean.
(湘南に住んでいる人が:もし東京に住んでいたら、こんなきれいな海は見られなかったでしょう)
→誇らしさ・嬉しさ

この文からは、湘南に住んでいてよかったというプラスのニュアンスが伝わってきます。

日本語にも同じような言い回しがあることが、訳文からもわかると思います。このように、「仮定」することが持つニュアンスが日英共通だとわかると、仮定法に対する苦手意識は薄れるのではないでしょうか?

自分の感情をソフトに表現したい際に、仮定法は役に立ちます。ぜひ日本語と同じニュアンスで使ってみましょう。

5. まとめ


いかがでしたか? 仮定法が意外にも使い勝手がいいことに驚かれたかもしれません。

仮定法が使えない理由の1つである、「形の複雑さ」は、実際の会話の中ではあまり問題になりません。ここまでの説明で気づかれた方も多いと思いますが、仮定法は単文で使うことも多いからです。

教科書に載っている、

(29) If I were a bird, I could fly to you.
(もし私が鳥だったら、あなたの所に飛んで行けるのに)

のような、2つの文を連結させた仮定法だけでなく

(30) Could I have a handout?
(プリントを頂けますか?)

(31) Could you take part in the conference?
(会議に参加していただけますか?)

のように、1文の中に仮定法のムードを閉じ込めるような使い方も一般的です。この使い方を覚えておけば、「形の複雑さ」は、問題にならなくなります。

仮定法を使うことが出来ない2つ目の理由である「使い道がわからない」については、

①敬語表現
②なんらかのニュアンスを付加して、察してもらう

に大別することで解決します。特に①はとても実用的です。

とはいえ、仮定法のような「ニュアンス」に大きく関係する文法事項は、外国人には理解しづらいものです。ノンネイティブ同士の会話ではそこまで意識しなくていいと言えます。ネイティブとの会話であっても、こちらが外国人であればある程度は察してもらえますから、そこまで心配する必要はありません。

実際の学習にあたっては、まずは、

自分が「事実だと思っている」ことを直接法で、「事実だと思っていないこと」を仮定法で表現し、厳密に区別することが英語の絶対的なルールである。

ということを理解することが大切です。学校英語ではおまけのように扱われる仮定法ですが、実は英語の根幹に関わっているのです。

その上で、英語に時間を割けない方であれば、特に使い勝手のいい “Would you do A?”, “Could you do A?” の依頼表現をマスターすれば十分でしょう。ネイティブスピーカーと関わる機会が多い方は、余裕があれば徐々に他の用法を身に着けていくのが効率的だと思います。

仮定法は英語の基礎であり、フォーマルな英語のコアになる文法です。仮定法をマスターして、「雰囲気の英語」から「中身のある英語」にランクアップしましょう!

参考文献
・マヤ・バーダマン:著『英語のお手本――そのままマネしたい「敬語」集』 朝日新聞出版
・東 正二:著『丁寧な英語・失礼な英語―英語のポライトネス・ストラテジー』 研究社出版

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