赤ちゃんは「25分×12回」で新しい言語耳をつくることができる by カリン・シールズ

赤ちゃんは「25分×12回」で新しい言語耳をつくることができる by カリン・シールズ
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現在、子どもと言語習得に関する研究が、次々と行われています。その中でも、ワシントン大学のPatricia Kuhl教授の「赤ちゃんと言語習得に関する研究」は興味深いものです。Kuhl教授は「学習・脳科学研究所」の主任研究員の1人であり、1970年から子どもと言語習得に関する研究を行っています。
(Kuhl教授に関する前回のコラムはこちら:
https://www.rarejob.com/englishlab/column/20150622/

言語習得は3歳まで?「臨界期仮説」は本当か

今回はKuhl教授の研究の中でも、「人との絆」について詳しくご紹介したいと思います。言語習得において、社会的なつながりが大切であるということが次々と分かってきたのです。子どもは、人との絆が感じられてはじめて、新しい言語を覚えることができるといいます。これはどういうことでしょうか?
外国語のビデオを見せられた赤ちゃんたちよりも、人に直接話しかけられた赤ちゃんのほうが、スムーズに新しい言語を受け入れる、ということが分かったのです。つまり、私たちの「社会的な脳(社会的な行動に関わる脳の領域)」が、言語学習を支えているようなのです。
私たちの脳のなかの社会的な領域が、言語習得に関連しているのであれば、もっと効果的で効率的な方法がみつけられるかもしれません。それは、どのような年齢でも同じです。社会的な脳が刺激されるような経験と学習を組み合わせることができれば、私たちは語学の習得に、こんなに悩まなくてもよくなるかもしれません。

赤ちゃんなら「25分・12回のセッション」で新しい言語の耳をつくることができる

 
Kuhl教授は、こんな実験をしています。9カ月から10カ月半のアメリカ人の赤ちゃんを集めて、中国語での絵本の読み聞かせを行ったのです。25分が12回という内容でした。この12回のセッションの後、集められたアメリカ人の子どもたちは、中国語の音を中国人の子どもと同様に聞き取れるようになっていました。
たった、25分、12回の読み聞かせだけで!これはすごいことだと思いませんか? 読み聞かせをした女性は、絵本を読んだり、おもちゃを見せたりしていただけなのです。フラッシュカードやドリルを使って、授業をしたわけではありません。おばあちゃんやおばさんがそうするかのように、赤ちゃんをあやすために本を読んだり、おもちゃを見せたりして、楽しい時間を過ごしただけなのです。
ここで大切なのは、赤ちゃんの語学習得には、やはり「社会的な脳」に作用することが必要だということです。脳の社会的領域が刺激されることで、赤ちゃんは自分にとって新しい音を聞き取れるようになるのです。社会的な脳が、学習をコントロールしているというのです。

赤ちゃんなら「25分・12回のセッション」で新しい言語の耳をつくることができる

大人も「社会的な脳」を働かせよう

このことは赤ちゃんだけではなく、大人にも当てはまると思います。私も、そんなふうに、日本語を学んできました。日本に来る前に日本語を勉強したものの、これが本当に難しい! 実際には日本に住むようになって、生活の中で日本語を学んでいきました。これだけ難しい言語を学ぼうという気持ちを維持するには、もっと日本語が上手くなりたいとか、日本語が話せる方が便利だとかいう以上に、周りの人と話したい、コミュニケーションを取りたいという気持ちのためでした。元々語学好きというわけではなかった私を、日本語を学ぶ気持ちにさせたのは、ひとえに周りの人と話をしたいという強い気持ちでした。
外国人が1人もいないような小さな町で働いていたため、英語でおしゃべりできる人もなかなかいなくて、ひどく寂しい思いをしていたからです。「もう、日本語を覚えるしかない!」一念発起して、日本語の勉強にとりかかると、だんだんと周りの人たちと日本語で会話ができるようになっていきました。それがモチベーションとなり、私の日本語もどんどん上達していきました。とはいえ、それでも私の日本語はまだまだですが(笑)。
人とのつながり、絆が言語習得には大切ということが、このような自分の経験からも分かります。学習者が、その言語を話す人と強い絆で結ばれていれば、そこには社会的な脳の刺激につながる経験が生まれてきます。
日本人の子どもが、英語を覚える際にも同じ事が言えます。「母親が一番の英語の先生」だと私が思うのは、赤ちゃんが一番つながりたいと思っている相手が母親だからです。
その一方で、Kuhlの研究から考えると、定期的なネイティブスピーカーとのやり取りが、たとえ短期間であっても、赤ちゃんの言語習得に大きなメリットがあるということもわかります。

大人も「社会的な脳」を働かせよう

テレビを見てるだけでは、言語は身に付かない

またKuhl教授によれば、テレビでは人の代わりにならない、というのです。先ほどの中国語の読み聞かせのビデオを、アメリカ人の赤ちゃんに見せても、中国語の音が聞こえるようにはならなかったのです。ビデオでは社会的な脳の領域は、活性化されない。私たちは、相手とふれあい、やりとりをすることが必要なのです。
では、Skypeでの会話はどうでしょうか。私は、ここには相手とのやり取りがあると思います。娘がアメリカにいる祖母とSkypeで話すときの様子をみていると、お友だちと嬉しそうに話しているときの表情と変わりはないからです。おばあちゃんがうつったスクリーンを見ながら、顔が輝き、ワクワクしているのが分かります。
もし、赤ちゃんに言葉を教えるのにテレビしか方法がないのであれば、他の赤ちゃんと一緒に見るといい、とKuhl教授は教えてくれます。テレビの内容に反応して、赤ちゃん同士が一緒に楽しんだり、声を上げたりしてふれあうことで、子どもは言葉を覚えやすくなるからです。
これはSkypeのレッスンにも応用できるかもしれません。赤ちゃん2人で一緒にレッスンを受けることができれば、もっと英語を効果的に学べるのではないでしょうか。実際に、私の3歳の娘が、日本人の女の子と一緒にスカイプレッスンに参加したときには、1人のときよりも飽きることなく、楽しそうにレッスンを受ける事ができました。ここにも社会的なつながりの効用があったのだと思います。
Kuhl教授自体は、Skype学習についてのリサーチは行っていませんが、彼女の研究室では、テクノロジーと語学学習についてのリサーチが進行中。近いうちに、私たちもその結果を知ることになるかもしれません。
Kuhl教授の研究に関しては、日本語字幕付きで、こちらで聞くことができます。

http://www.ted.com/talks/patricia_kuhl_the_linguistic_genius_of_babies?language=en

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