本やこのようなコラムを通じて、私と共著者である真由子が皆さんにお伝えしたいことの一つは、ご自身が持っている「間違った思い込み」に気が付いてもらいたいということです。そして英語学習を妨げるそのような「間違った思い込み」は、一度「そうではない」ということが分かれば、解消されてしまう類いのものです。英語では、このような私たちの思考を止めて、努力することを諦めさせるようなマイナス思考の思い込みを “hang-up” と呼んでいます。つるし上げられて、動けないイメージがここにはありますね。
例えば「発音は完璧でなければ意味がない」と、強く信じている人がいます。このような “hang-up” は全く必要のないものです。今日の世界を眺めてみれば、世界中で皆、さまざまな発音で英語を話しています。つまり、世界言語としての英語は「これが唯一の正しい発音だ」ということはないのです。そして、それはこれから先も変わりません。
子どもの言語の習得においての、“hang-up” といえば「臨界期仮説」が有名です。みなさんこんな話を一度は聞いたことがあると思います。「3歳前に新しい言語の学習をスタートさせなければ、身につかない」「7歳以降になると、バイリンガルにはなれない」など。世界中の母親が、今しかないとばかりに赤ちゃんを会話教室に連れて行くのは、そのためです。これは日本だけの話ではありません。アメリカでも同じです。ただ、ママたちが連れて行くのは、中国語やアラビア語の教室ですが。
「臨界機仮説」についてわかってきたこと
まだ母語も話せないような小さな赤ちゃんを、必死になって他言語の会話クラスに連れて行くなんて!この「臨界期」、単なる間違った思い込みにすぎないのでしょうか。「臨界期仮説」は真実?それともただの迷信?実は、両方ともある意味において「イエス」なのです。
「臨界期」に関しては科学的な証明がされています。何十年にもわたる調査の結果、私たちの脳は7歳までであれば、母語以外の言語でもスムーズに習得できることがわかっています。そして7歳になるずっと前の段階で、脳は「聞く音と聞かない音」を区別するようになります。つまり普段耳にする母語に含まれる音は、母語に含まれない音に比べて、ずっと聞き取りやすくなるのです。成長するにしたがい、母語に含まれない音は脳がブロックするようになります。思春期を過ぎて以降、新たな言語を学ぶときに苦労するのはそのためです。
とはいえ、この話だけが英語学習における結論ではありません。私自身の話をすれば、日本語を習いはじめたのは大人になってから。もちろん始めた頃はひどいものでした! でも結局、こうやって日本に住むことができるくらいに、私の日本語も上達しました。目的を持って努力を続ければ、何歳になっても新しい言語を習得することは可能です。私にできたのですから、皆さんにだってできるはずです。
最近の研究では、語学学習における「社会脳」、コミュニケーションの基盤となる社会的関係を扱う脳の領域にも注目が集まっています。言語習得に必要なのは「脳の若さ」だけではありません。学習中に「社会的な利益」を感じられること、つまり、新しい言語を学ぶことで人とのつながりが得られるかどうかがキーとなることがわかってきているのです。しかし、ここでは皆さんが気にしている「臨界期」についてもう少しお話ししていきます。
生まれて約半年後までは、どんな言語も身につけられる
シアトルにあるワシントン大学のPatricia Kuhl教授は、何年にもわたり「赤ちゃんの言語習得」に関する研究を続けています。特に「音の聞きとり」についてのリサーチ結果は、日本の皆さんが興味をもたれる分野だと思います。なぜなら、いくつかの実験において、アメリカ人と日本人の赤ちゃんの比較がなされているからです。
Kuhl教授は、赤ちゃんの脳が「ある特別なスキル」を発揮できる期間を「0カ月から6~8カ月まで」という、私たちが知る臨界期よりもさらに短い期間として示しています。「ある特別なスキル」とは何でしょうか? それは先ほどお話しした「聞く音と聞かない音」に関してのものです。
6~8カ月までは、どこの国の赤ちゃんであっても、どんな言語でも聞こえる耳(脳)を持っています。しかし、ほんの数カ月後の10カ月~12カ月ごろには、母語以外の音の聞き取りが難しくなってしまいます。その代わり毎日聞いている母語に関しては、しっかり聞けるようになっているのです。つまりこの時期に、赤ちゃんの脳は、母語の聞き取りに適応すべく変化しているというわけです。
Kuhl教授はアメリカ人の赤ちゃんと日本人の赤ちゃんを使って、“r”と“l” の音を聞かせる実験をしています。6~8カ月の赤ちゃんであれば、どちらの国の子どもでも、“r” と “l”の音と、日本語の「らりるれろ」の音を聞き取ることができます。しかし、10~12カ月の赤ちゃんでは、アメリカ人の赤ちゃんは日本語の音を、日本人の赤ちゃんは英語の音を理解することができなくなっているのです。日本人の赤ちゃんが “r” と “l” の音を認識できなくなるのなら、後にそれらの発音が難しいと感じるのは、うなずける話です。
私たちの脳の働き、そして音の選択から始まり、どのように言語を習得していくかという問題は、とても興味深いものです。このような情報は、もし自分に生かせる機会があるのなら積極的に取り入れ、そうでないのなら、間違っても「うちの子は8カ月を過ぎてしまったから、一生 “r” と“l” の音が聞き取れないんだ」などと思い込まないことです(新たな“hang-up”を持たないように!)。Kuhl教授の研究が明らかにしようとしているのは「子どもの脳は言語を学ぶ能力を備えていること、それは母語でなくても受け入れる素地があること」だからです。これは子どもをもつ私たちにとって、とても良いニュースですよね。
Kuhl教授の研究では、子どもの英語学習においては人との絆が欠かせないということも示されています。これらの興味深く新しい研究結果は、次回の私のコラムでご紹介いたします。
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