英語学習にはさまざまな方法がありますが、「シャドーイング」は英語力が上達しやすい学習法として注目されています。シャドーイングを取り入れることで、スピーキングスキルはもちろん、リスニングスキルの向上も見込めます。
本記事では、シャドーイングの効果や他の学習法との違いについて詳しく解説します。シャドーイングの具体的な方法、注意点、役立つ教材についてもまとめているので、英語を学習する際は、ぜひ活用してください。
英語のシャドーイングってどんな勉強方法なの?リーディングとの違いは?
シャドーイングとは、耳で聞き取った英語を真似して発音する学習法です。一文ずつ聞き終えてから口に出すのではなく、聞こえてきた英語の0.5秒ほどあとを影のように追いかけて復唱することから、シャドーイング(Shadowing)と呼ばれています。英語を聞き取ると同時に発音する必要があるため、難易度の高いトレーニングといえます。
シャドーイングと混同しやすい学習法としては、リピーティングやリーディングなどが挙げられます。リピーティングは文の区切りまで聞き取ったうえで繰り返すように発声し、リーディングは英文を目で追いながら発声していきます。
シャドーイングは耳から入ってくる情報だけを頼りに英語を復唱していくので、リピーティングやリーディングとは異なる学習法です。英会話ならではの強弱・リズム・イントネーションを効果的に身に付けたい人は、シャドーイングの学習法を活用してみましょう。
シャドーイングで期待される3つの効果
シャドーイングを英語学習に取り入れることで、リスニング力やスピーキング力の向上が見込めます。また、ネイティブスピーカーのような英語らしい発音に近付けられる点もシャドーイングの特徴です。ここでは、シャドーイングで期待される効果を3つ紹介します。
リスニング力の向上
シャドーイングでは、耳から入ってきた英語を正確に聞き取るスキルが求められます。はじめは、ネイティブの会話スピードについていけず、意味が理解できないまま発音することになるかもしれません。しかし、繰り返し練習することで、少しずつ聞き取れる単語が増えてきます。
シャドーイング学習を続けていくと、文字を目で追っているときは気がつかなかった、英語ならではの強弱やリズムが理解できるようになり、自然と音声知覚が強化されます。音声知覚が鍛えられると、会話の内容が掴みやすくなり、リスニング力がさらに向上するという好循環が生まれます。
スピーキング力の向上
スピーキング力を向上させるためには、自分の考えを即座に英語で表現できるスキルが必要です。シャドーイングの学習法を取り入れることで、英語の定型文の知識が増えて、反応スピードが上がります。また、言葉がスムーズに出てこないときの「つなぎ言葉」を覚えると、自然なかたちで会話を続けることも可能です。
スピーキングのスキルを伸ばしたいのであれば、幅広いシチュエーションでシャドーイングの訓練を行うのがおすすめです。プレゼン・ビジネス商談・レクリエーションなど、多くの会話文を耳にすることで、表現の幅を広げることができるでしょう。
英語らしい発音の習得
シャドーイングは、英語らしい発音を習得するのに適した学習法です。語彙力を鍛えているのにもかかわらず、いざ会話文を耳にすると、うまく聞き取れないという人は少なくありません。聞き取れない原因としては、英語の音声変化を把握できていない可能性が考えられます。
英語の発音には、連結・同化・脱落といった音声変化が存在します。前後の単語とつながって別の音に変化する音声変化は、シャドーイングの練習を重ねることで認識しやすくなります。単語を暗記する場合も音声変化を意識して学習することで、英語らしい発音が習得しやすくなり、実践的なスキルとして定着させることができるでしょう。
シャドーイングのやり方
シャドーイングは、耳にした英文のすぐあとを影のように復唱していく学習法です。一般のサイトにアップロードされている動画を視聴しながら練習をすることもできますが、はじめはシャドーイング用教材を使ってトレーニングするのがおすすめです。
シャドーイングに特化した教材は、テキストでの振り返りやスピード調整などができるため、自分のレベルに合わせて学習を進めていけます。シャドーイングでは、基本的にリスニングと発声と同時に行っていくことになります。ここでは、さらにシャドーイングの学習効果を高めることができる学習法を紹介します。
リスニング
はじめは、実際の発声はせず、英文の聞き取りのみを行います。リスニングでは、話している話題の概要を掴むことを意識します。話題やテーマが曖昧なままシャドーイングをしても、記憶として定着しづらいため、学習効果を高めるためにも内容の理解は欠かせません。
聞き取れない単語があっても、スクリプトで確認は行わず、あくまで自分の耳と知識のみでリスニングに取り組んでください。聞き取りづらい場合は、音声変化に気を付けながら、何度も繰り返し聞いてみましょう。
シャドーイング
リスニングで会話の方向性を掴んだあとは、1回目のシャドーイングを行います。ここでも、まだスクリプトは使いません。聞こえてくる英文を真似て、実際に発音していきます。ところどころ言葉が続かず、止まってしまうことがあるかもしれませんが、まずは最後まで通してやり切りましょう。
1回目のシャドーイングでは、自分の音声の録音も行います。できるだけ音源と同じような強弱・リズム・イントネーションを心がけてください。シャドーイングは必要に応じて繰り返し実施します。余裕があれば、聞き取れない単語をメモしておくと、振り返りを行うときに役立ちます。
自分の音声を確認
録音した音声を聞きながら、元の音源と比較していきます。自分ではうまくシャドーイングできているつもりでも、聞き比べてみると英語らしい発音になっていないことがあります。うまく発音できていないところがあれば、ピンポイントで修正を加えていきましょう。
シャドーイングでは、発声練習が何より重要です。大きな声を出すことを恥ずかしがっていては、英語力は向上しません。録音した音声を聞き、思ったより声が出ていないと感じたら、もう一度シャドーイングに戻って録音し直してみましょう。英語の音声変化は、口の開き方や声の大きさによっても異なります。実際の会話に近い話し方をすることで、よりシャドーイングの学習効果は高まります。
スクリプトを確認
録音した自分の音声の確認がおわったら、ようやくスクリプト(テキスト)の確認を行います。スクリプトの確認では、話題やテーマの詳細を掴めるよう、英文を精読していきます。単語・熟語の意味はもちろん、発音やアクセントについても見直しましょう。
1回目のシャドーイングで、聞き取れない単語をメモしていた場合は、スクリプトと照らし合わせながら記憶として定着させていきます。ただ、暗記するよりも、「聞き取れなかった」という失敗経験と共に覚えるほうが、記憶に残りやすいといわれています。スクリプトを見ながらシャドーイングをするシャドーリーディングで練習しても良いでしょう。
シャドーイング
最後に、再びシャドーイングを行います。すでにスクリプトを確認しているので、不明点はすべてクリアになっているはずです。途中で止まることがないよう、スムーズなシャドーイングを目指しましょう。
1回目のシャドーイングでは言葉を追うのに必死で、話題やテーマの理解が十分にできていなかったかもしれませんが、最後のシャドーイングでは文章の意味や新しく覚えた単語にも注意を向けながら発声してください。また、慣れてきたら使えそうな定型文を書き出してみるなど、英語力を総合的に鍛えられるような工夫を取り入れてみましょう。
シャドーイングのコツはある?
シャドーイングのコツは、音源とできるだけ同じように発音することです。スクリプトには書いていないイントネーションや表現方法などを、忠実に再現できるように取り組みましょう。抑揚などのわかりやすい表現だけでなく、ブレスの位置などを意識するとシャドーイングしやすくなります。
また、似たような話題であっても会話とプレゼンでは表現方法が異なります。会話では相手と円滑にコミュニケーションを取るためのリズム、プレゼンでは大げさに見えるほどの強弱が重視される傾向です。シチュエーションごとにシャドーイングの訓練を重ねることで、自然と英語での対応力が高まります。
シャドーイングのトレーニングをしたあとに、「口が疲れた」と感じられるようになると、効果的な学習ができています。ネイティブのような発音をするためには、日本語を発音するときは使わない筋肉を使っています。舌の動きも独特なため、慣れるまでは疲労を感じることがあるかもしれませんが、それは英語が上達している証拠でもあります。
シャドーイングをするときの注意点
シャドーイングは難易度の高い学習法となっているため、適切な方法で行わなければ、思ったような効果を得ることができません。ここではシャドーイングをするときの注意点を4つ紹介します。
シャドーイングをする前に発音についての知識を付けておく
シャドーイングをする前に、基礎固めとして発音の勉強をすることが重要です。発音についての知識がないと、効果的なシャドーイングができないだけでなく、新しく学んだことが記憶としても定着しづらくなります。まずは語彙力を増やし、正しい発音を身に付けておきましょう。
また、シャドーイングでは英文を細かいところまで理解できるだけの英語力が求められます。実際に、シャドーイングは同時通訳者の学習法としても用いられているため、英語学習初心者には難しい勉強法の1つです。スクリプトに目を通しても半分程度しか理解できない、シャドーイングの訓練にかなりの時間がかかってしまう、といった場合は、文法・単語などの学習も並行して取り組みましょう。
自分の英語レベルに合う音声を用意する
シャドーイングでは、自分の英語レベルに合う音声を用意します。シャドーイングの学習を行う人の多くが、意欲を持って英語学習に取り組んでいるはずです。難しい問題に挑戦したいと思うかもしれませんが、英語力を向上させたいのであれば、一歩ずつ着実に進んでいくことが大切です。
使用する音声が速すぎたり、内容が難しすぎたりすると成長につながらないだけでなく、モチベーションが落ちてしまうことも考えられます。シャドーイング自体が難易度の高いトレーニングになるため、まずは自分のレベルにあった問題からはじめて、少しずつステップアップしていきましょう。
諦めずに何度も繰り返す
英語学習の上級者であっても、はじめから完璧に復唱するのは、簡単なことではありません。シャドーイングを続けるコツは、途中でとぎれても諦めずに最後までやり通すことです。
シャドーイングの練習は、「できなくて当然」という気持ちでスタートしましょう。できなくても何度も繰り返すことで、少しずつ英語力が高まります。大切なことは、継続してシャドーイング学習を続ける姿勢です。継続することで初めて、シャドーイングという勉強方法の効果が期待できます。
シャドーイング以外の勉強法と組み合わせて使う
シャドーイングは英語力を向上させるのに有効な学習法ですが、他の勉強法と組み合わせて使うことで、より効果を高めることができます。
基本的にシャドーイングは独学で行う勉強法です。音声を参考にしながら、英語らしい発音を身に付けることができますが、それが本当に通じるのかは自分だけでは確認できません。シャドーイングのトレーニングにより、英語力が高まったと感じたら、対人コミュニケーションにトライしてみましょう。ネイティブスピーカーと話すことにより、さらに英語らしい発音に近付けるアドバイスがもらえるかもしれません。
英語のシャドーイング練習に役立つおすすめ教材5選
効果的なシャドーイング学習を行うためには、教材選びも重要です。ここでは、英語のシャドーイング練習に役立つおすすめ教材を5つ紹介します。※ご紹介している価格は、販売元によって異なる場合がありますこと、ご了承ください。
新ゼロからスタートシャドーイング 入門編
新ゼロからスタートシャドーイング 入門編は、イソップ物語や結婚式のスピーチなど、バラエティー豊かな内容のシャドーイング教材です。イラスト付きで初心者も取り組みやすい1冊に仕上がっており、単語のシャドーイングからはじまって、短い文・会話・長文と段階的に学べます。
英語の音感を身に付けたい人、ネイティブのような発音を学びたい人はもちろん、語彙や例文の暗記にも適しており、英語力を総合的に向上させることができるでしょう。
おすすめレベル | 初級 |
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著者 | 宮野 智靖 |
出版社 | Jリサーチ出版 |
価格(税込み) | 1,232円 |
TOEICリスニング満点コーチが教える 3ヶ月で英語耳を作るシャドーイング 改訂版
TOEICリスニング満点コーチが教える 3ヶ月で英語耳を作るシャドーイング 改訂版は、英語リスニングのトレーニング法に特化した教材です。3ヶ月で英語耳が作れる内容となっており、7ステップのシャドーイングが用意されています。
紹介されているのは、著者の谷口恵子氏が実際に行った独自のトレーニング法で、TOEICリスニングにおいて満点を達成した確かな実績があります。練習教材のパートでは、発音の書き込み例の解説がついているので、シャドーイング初心者にもぴったりの1冊です。
おすすめレベル | 初級~中級 |
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著者 | 谷口 恵子 |
出版社 | プチ・レトル |
価格(税込み) | 1,782円 |
改訂版 キクタン リーディング【Basic】4000
CD付 改訂版 キクタン リーディング【Basic】4000は、単語の暗記に特化したシャドーイング教材です。センター試験や私立大学受験に必要な4000語のなかから、720語を厳選しており、受験対策としても使えます。
本教材は、英語→日本語→英語の順番に収録されている音声(チャンツ)を聞きながら、ノリのいいリズムに合わせて単語を学習します。単語の暗記が苦手な人も、無理なく楽しく続けやすい内容といえるでしょう。また、72本の長文も収録されており、単語を覚えながら英語試験の頻出テーマについての知識も身に付きます。
おすすめレベル | 初級~中級 |
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著者 | アルク文教編集部 |
出版社 | アルク |
価格(税込み) | 0円(Audible会員) |
公式TOEIC Listening & Reading 問題集 8
公式TOEIC Listening & Reading 問題集 8は、2021年10月に発売された、TOEICの公式教材の最新刊です。TOEICで高得点を目指しつつ、シャドーイングでリスニング力とスピーキング力を伸ばしたい人におすすめの教材となっています。
本教材はリスニング音声が収録されているだけでなく、一部のリーディングセクションも音声データとしてダウンロードすることが可能。時間を計測して問題に解答したあとも、シャドーイング用の学習素材としても活用できるので、さらに理解を深めることができるでしょう。
おすすめレベル | 初級~中級 |
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著者 | ETS |
出版社 | 国際ビジネスコミュニケーション協会 |
価格(税込み) | 3,300円 |
決定版 英語シャドーイング
決定版 英語シャドーイング【改訂新版】 Kindle版は、言語習得を専門とする門田修平教授によってまとめられており、シャドーイングのメカニズムから学ぶことができます。実践編は3段階のレベルに分かれていて、おおよそ中級者から上級者向きの内容となっています。
オバマ大統領の演説やトム・クルーズのインタビューなど、多彩な素材でトレーニングできる点も、本教材の大きな魅力でしょう。他にも、ネイティブ同士の会話、英語プレゼン研修の実況中継をはじめ、さまざまなシチュエーションが収録されているため、幅広い英会話を学ぶことができます。
おすすめレベル | 中級~上級 |
---|---|
著者 | 門田 修平 |
出版社 | コスモピア |
価格(税込み) | 1,386円 |
シャドーイングの効果を試したいときは
シャドーイングは、リスニング力とスピーキング力を向上し、英語らしい発音を習得するために有効な学習法です。ただし、初心者には難易度の高い学習法となっているため、正しいやり方を知り、少しずつステップアップしていくことが大切です。
また、シャドーイングは他の学習法と組み合わせることで、さらに高い効果を発揮することができます。相手に通じる英語が話せているかを確認したい場合は、オンライン英会話を利用するのもおすすめです。
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