「いただきます!」の英語は?直訳できない日本語ならではのフレーズ

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日本語と英語はその構造やルーツが全く異なり、イコールで結ぶのがしばしば難しいことがあります。日本語にはない概念の英単語や、英語には該当する単語やフレーズがない日本語の表現もたくさんあり、英語学習者の頭を悩ませることも。今回は、その中から英語にするのが難しい日本語ならではの単語やフレーズについてご紹介していきます。

食事の前の「いただきます」

食事の前に「いただきます」と言う習慣のある日本人ですが、英語でどういうんだろう?と思ったことはありませんか?日本人にとってはマナーのようなもので、ほとんど無意識に言っている人が多いと思います。実はこの言葉、英語にするのがなかなか難しい単語です。

さまざまなものに対する感謝

宗教の中には、食事の前に祈りを捧げる儀式を持つものもあります。カトリックはその代表例です。一見すると同じような儀式に見えますが、日本人の場合は特定の神様に対して祈りを捧げているわけではないですよね。小さいころ、親に「食材に対する感謝」「作ってくれた人に対する感謝」を示す行為だと教わった人は多いのではないでしょうか。あるいは「食材を作ってくれた人への感謝」という人もいるかもしれません。つまり、その食事を成立させるために尽力してくれたあらゆる人や物に対する感謝を示しているわけです。

英語に訳すなら…?

「いただきます」を字のまま捉えるなら、「これからこの食事を食べる」という意味になります。それを英語に訳すなら

I’ll have(eat) this meal. (この食事を食べる)

と訳せなくはないでしょう。しかし、上記で説明したような「いただきます」の背景にある「感謝」を表現するにはこれだけでは不十分です。

 「感謝」を示す言葉が必要

以上を踏まえ、「いただきます」を英語に訳すとしたら、感謝を示す”Thank you”を使って下記のように表すことができます。

Thank you for the meal. (食事をありがとうございます)

しかし、日本の文化を知らない人からすると上記のフレーズだけでは「いただきます」の持っている意味や言った人の真意は伝わりにくいです。そのため、下記のように追加説明が必要になるでしょう。

“Itatakimasu” shows our appreciation for the person who cooked the meal and the ingredients included, even for those who produced the ingredients. It is manners for us to say it rather than religious rituals.(「いただきます」は食事を作ってくれた人や食材への感謝、生産者に対する感謝を示しています。それは日本人にとっては宗教的な儀式というよりはマナーです。)

キーワード

Appreciation(感謝)

Ingredient(食材)

Religious(宗教的な)

Ritual(儀式)

日本ならではの美意識「わびさび」

「わびさび」と聞いたとき、みなさんはどのような情景を思い浮かべますか?夕焼けに染まる日本庭園や、苔の生えた石灯篭の並ぶ様などを想像する人は少なくないでしょう。この、質素な中に美しさを見出す日本ならではの美意識は、英語に直訳するのはなかなか難しい表現です。

そもそも「わびさび」とは?

「わびさび」とは、「侘び」と「寂び」の2つの単語から成ります。「侘び」とは「簡素の中に見出される清澄・閑寂な趣」を表し、「寂び」は「古びて味わいのあること」を表します。

(※引用:goo辞書)時間が経つにつれて事物は汚れたり欠けたりといった変化がありますが、それを「劣化」と捉えずにその中に美しさを見出そうという、日本人ならではの美意識です。

※引用元:わびとは? – goo辞書 , さびとは? – goo辞書

すでに英語になっているの?

この日本ならではの「わびさび」という概念、実はすでに欧米諸国に紹介されており“wabi-sabi”として受け入れられています。90年代にアメリカで「わびさび」について詳細に紹介した本が出版され、それ以降借用語として英語の中でも使われるようになりました。

その言語の中にない概念の言葉であれば、無理に訳さずにそのまま使うというのはよくあることです。他にも借用語としては“Tsunami”(津波)や“Anime”(アニメ)、“Bento”(弁当)など、さまざまなジャンルのものがあります。

「わびさび」を英語で説明するなら…

英語になっているとはいえ、その概念を知らない人にとっては“wabi-sabi”だけを聞いても何のことを言っているのかわからないでしょう。そういった人に対しては、下記のように説明してみてください。

“Wabi-sabi” is a concept where people find beauty or values within imperfect, impermanent, or incomplete things. It is one of the most conspicuous and characteristic features of traditional Japanese thinking.(「侘び寂び」とは、不完全なもの、無常なもの、未完成なものに美や価値を見出す考え方です。日本の伝統的な考え方の最も顕著で特徴的な特徴のひとつです。)

キーワード

Concept(概念)

Beauty(美)

Value(価値)

Imperfect(不完全)

Impermanent(無常)

Incomplete(不完全)

バラエティ豊かな日本語のオノマトペ

物事の様子や人の感覚や感情を表すオノマトペ。オノマトペはその言語が属する文化の中で形成されるものであるため、他言語話者が理解するには難しいことがあります。特に、日本語と英語を比較すると日本語の方がオノマトペは多く、日本語のオノマトペを英語に訳せないことはよくあります。

※参考文献:今井むつみ・秋田喜美『言語の本質 ことばはどう生まれ、進化したか』中公新書、2023年

形容詞や副詞で表す

前述の通り、オノマトペは物事や人の様子をより詳しく説明する言葉です。そのため、英語に訳すなら形容詞、副詞を使って表すことになります。形容詞は名詞を修飾する単語、そして副詞は名詞以外すべてを修飾する単語です。

「しくしく」をどう表現する?

例えば人が泣いている様子を表す「しくしく」を例にとって考えてみます。「しくしく」と聞いたときに恐らく「激しくはないが絶え間なく泣いている感じ」をイメージする人は少なくないでしょう。これを英語にするならば「激しくない=静かに」と変換できるので、“quietly”が使えます。

She is crying quietly.(彼女は静かに泣いている)

しかし、これだけだと「しくしく」が含んでいる連続性を表現するには不十分かもしれません。その場合には“continually”(絶え間なく)という副詞を追加すると、さらに細かく説明できます。

She is crying continually and quietly.(彼女は絶え間なく静かに泣いている)

このように、オノマトペを英語に訳すときにはその言葉の持っている意味を考え、それに合った単語を選ぶことがポイントです。

他にもいろいろ!日本語ならではの単語

日本語ならではの表現はまだまだあります。特に、日本の文化や環境に根付いた言葉は英語にするのが難しく、説明が必要な場合が多いでしょう。

切ない

日本語で「切ない」というと、悲しさやつらさ、さみしさなどさまざまな感情が入り混じった気持ちを表現するときに使います。日本語でさえ一言で言い換えするのが難しく、英語でぴたっと当てはまる表現というのは実はありません。その場合は、下記の表現をシチュエーションごとに使い分けて自分の気持ちを表現してみましょう。

The story’s ending was so heartbreaking that I couldn’t stop crying.(その話の結末はとても切なくて、私は涙が止まらなかった)

キーワード

Painful(傷ついた心)

Bittersweet(甘くて辛い感情)

Heartbreaking(胸が張り裂けそうな気持ち)

Hurt inside(心が締め付けられる)

渋い

日本語で「渋い」というとき、味や色、雰囲気、スタイルなど、様々な意味を持つため、状況に応じて適切な英語を使いましょう。例えば人に対して褒め言葉として使う「渋い」。きらきらとした華やかな美しさではないけれど、熟成していて知的な雰囲気を持つ人などを表現するときによく使いますよね。英語にはそれに該当する単語がないので、“cool”(かっこいい)、“matured”(落ち着きのある)、“thoughtful”(思慮深い)などといった単語を使って表現してみましょう。また、「渋み」がある緑茶と言いたいときは、“Bitter”、「渋い」色合いがあるときは、“Subdued”を使いましょう。

Anna has a cool, understated fashion sense that makes her stand out.(アナは渋く控えめなファッションセンスを持っており、それが彼女を際立たせています。)

The green tea has a slightly bitter taste.(その緑茶には少し渋い味があります。)

The art was painted in subdued colors, giving it a calm and sophisticated atmosphere.(その絵は渋い色合いで描かれており、落ち着いて洗練された雰囲気を醸し出していました。)

生きがい

「生きる価値」、「生きることの喜び」を指す「生きがい」という言葉は、実は“Ikigai”という借用語として欧米圏にも広まりつつあります。“Ikigai”を特集した書籍も出版されており、日本文化に精通している人なら“Ikigai”でも通じるでしょう。もし、英語で説明するとしたら“life-time goal”(人生の目標)、“life’s purpose”(人生の目的)、“meaning in life”といった言葉で表現できるでしょう。

Teaching others and helping them grow has always been my life’s purpose.(他人を教え、成長を助けることは、いつも私の生きがいでした。)

He found new meaning in life by traveling and exploring new cultures.(彼は旅行して新しい文化を探求することで新たな生きがいを見つけました。)

森林浴

緑の多い場所へ行き自然を感じリラックスする行為を表す「森林浴」。実は日本独特の感覚であり、英語にはそれに該当する単語がありません。辞書を引けば“forest bathing”と説明しているものもありますが、それだけで伝わらない場合には下記のようにもう少し解説が必要でしょう。

Shinrin-yoku means forest bathing, where people feel relaxed by spending time in calm and quiet natural environments.(森林浴とは、静かな自然の中でゆったりとした時間を過ごしリラックスすること。)

おもてなし

東京オリンピック誘致の際にも話題となった「おもてなし」。心を込めて他者に対して歓待や接待を行うことを指します。英語でも“hospitality”(おもてなし)という単語はあるので、ここにもう少し説明を加えて“mindful hospitality”、“attentive service”(心のこもったおもてなし)などと言うとより細かく伝えられるでしょう。

The attentive service at the cottage made our stay very pleasant.(コテージのおもてなしの行き届いたサービスのおかげで、私たちの滞在は非常に快適でした。)

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今回の記事では、英語に訳しづらい日本語ならではの表現やフレーズについてご紹介してきました。日本語と英語に限らず、言語はそれぞれ独自に発展を遂げたものなので直訳が難しい表現があるのは珍しいことではありません。その場合には無理やり直訳しようとせず、その言葉の持っている本質的な意味を考え、それを説明することで言いたいことが伝えられますよ。

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