英語を早いうちから子供に学ばせたいと思っても、「いつから始めるか」「どうやって行ったらいいか」「メリットやデメリットは?」などいろいろと悩むところがあるでしょう。
英語の早期教育はデメリットについて注目されがちですが、「まず母国語である日本語の習得が最重要」「年齢に応じてとにかく楽しく行う」という2点を外さなければ、中高生になって本格的に英語学習が始まったときのメリットも多いです。
今回は多くの保護者が悩んでおられるであろう英語の早期教育の疑問点や方法について解説します。
早期英語教育はやるべき?
早期英語教育をするかしないか、行うならいつからか、などの判断は難しく迷っている方も多いと思います。ここではその判断の参考になるようメリット・デメリット、適正年齢についてお話しします。
メリット
「将来英語ができると仕事の幅が広がるだろう」「英語ができると便利」「自分は英語が苦手だから子供には英語で苦労させたくない」といった理由で子供に英語を学ばせたいと思う方が大半ではないかと思いますが、実は子供にとっての英語学習のメリットはそこではありません。
仕事で使えるような英語力を身につけるにはやはり大人にならないと難しいですし、英語ができると便利といっても目的によって求めるレベルが変わってきます。また、早くから英語を学んだからといって他の子よりできるようになるわけではありません。
では一番のメリットは何かというと、「柔軟な思考ができるようになること」です。
言葉は文化を反映しているので、外国語を学ぶことによって知らないうちに別の文化に触れることになります。言葉が違えばもの見方も変わります。日本語だけ学ぶのとは違った思考力や柔軟性を知らずにうちに見つけるようになるのです。
英語を話せる話せないに関係なく、物事を多角的に柔軟にとらえるという力は、将来にわたって重要な社会的スキルです。テクノロジーの発達でますますボーダレスな世の中になっており、海外の人との接触が今後はもっと増えてくることでしょう。文化背景や常識が異なる人とのコミュニケーションは、言葉以前にストレスが多いものです。英語という全く文化背景の異なる言語に早くから触れることで、異文化への理解を無理なく行うことができるようになります。
早期英語教育のメリットとして「早く学ぶ方が頭も耳もやわらかく無理なく学べる」という面がクローズアップされがちですが、3ヶ国語を話す子供を持つ親として、個人的にもこの「思考の柔軟性」が最大のメリットだと感じます。
デメリット
では早期英語教育のデメリットは何でしょうか?早期教育を行うべきか否かの判断に迷う点として、デメリットが多く唱えられていることがあるでしょう。
デメリットは確かにあります。ただし、それはやり方によります。母国語である日本語をおろそかにして「とにかくバイリンガルにしたい」という思いから英語教育ばかりに集中してしまうと、将来的に論理的な思考が難しくなったり、学校の授業が理解できない、といった問題がでてくることがあります。
ダブルリミテッドとかセミリンガルという言葉がありますが、「英語の早期教育は危険だ」という主張があるのはこの状態を念頭に置いています。これは母国語も外国語もどっちつかずの状態になってしまい、難しい思考ができなくなったり、同年代の子に比べて語彙力が著しく低い場合をさします。
通常はこういうことは起こりません。家で英語を学んだり、英会話教室に通っても「英語に慣れる」程度にしかならないからです。もし家庭で小さい時から熱心に英語教育を行っていて、学校の勉強についていくのが難しいと感じる場合は、セミリンガルになりかかっている可能性もあります。その場合は英語学習の比重を下げるか中断し、日本語及び学校の勉強をしっかりできるようにすることで回避できます。
実は次男がセミリンガルになりかかっていました。まだ言葉がうまく話せないときに海外に移住し、家の中や外では英語とフランス語、私は日本語で話していたため、どの言語も中途半端になってしまい、小学校に上がっても授業についていくのが難しい状態でした。英語は一番話せる言語でしたが、この時は学校の国語であるフランス語を第一言語にすることに集中したため、数年かけて授業も問題なくついていけるようになりました。
子供は学校の国語が第一言語になります。かなり難解な文章が読めるようになる10歳ぐらいまではこの「国語」に集中すべきで、英語は学校の授業で習う範囲にとどめる方が後々いいと思います。言語が変わっても思考の土台は母国語が主となります。この思考力が育ってないと、外国語を学んでもそこまでしかできるようになりません。母国語の思考力が小学校低学年程度だと、いくら頑張っても外国語もそこまでの語彙力と思考力しか育たないということです。
学習開始に適する年齢
英語の学習は何歳で始めてもかまいません。ただし年齢によって学習の方法が異なります。幼児であれば、とにかく英語の音に馴れ親しむようにするといいですし、小学校高学年からは読み書きも学んでいく方が英語への理解度が深まります。
将来使えるようになるための英語が目的ならば学習は中学からで十分です。小学生レベルの日本語が社会で使えるかというと全然足りませんし、英語も同じです。小学生以下の英語教育は、無理強いせず楽しく行い、過度に期待することなく中学以降で苦手意識を持たない程度に気楽に行うことが親子とも負担が少ないでしょう。
英語の歌を一緒に歌ったり絵本を見たりしてみて、子供が興味をもつようであれば、それがその子の適齢といえます。また海外旅行に行ったり、クラスに帰国子女や外国人がいることで英語に興味を持つこともあるでしょう。子供は興味を持ったことへの吸収力がとても高く、自発的に集中して行うようになるので、子供に英語を学ばせたいのであれば興味をもつ「きっかけ」を上手に見つけてあげるといいですね。
子供と一緒に英語学習を
小学生以下の子供に英語を学ばせる方法についてご紹介します。すでに家庭で英語学習を取り入れている方も、これからの方もご参考になさってください。
学習上の注意
とにかく楽しく!を心がける
英語が嫌いになっては元も子もないので、「遊びの延長での英語学習」を念頭におくことが一番大切です。子供は興味がわけば自発的に英語を学習するようになりますので、決して無理強いはしないようにしましょう。
「英語を好きになること」「英語に親しむこと」に集中し、楽しく続けることが大事です。
本格的な英語学習は中学から
注意しないといけないのは、小学校で英語を猛烈に学習しても結局は小学生レベルの語彙力・思考力であること。また、幼児や小学校でいくら英語を頑張っても、中学から本格的に英語を学習し始めた子供に英語力を簡単に抜かれる可能性があるということを念頭におくことです。
特に熾烈な中学受験を勝ち抜いて入学してきた子供は、吸収力や記憶力・理解力が高いので2年ほど経つと、小さいときからずっと英語を学習してきた子供の英語力を抜くケースが多いです。帰国子女でも抜かれることがしばしばあります。バイリンガルにしようと躍起になって子供に無理強いし続けて、中学まで英語を特に学んでこなかった子に抜かれてしまったときの挫折感はかなり強くなります。
でもこれはしかたないことです。日本語を見てもそうですが、いくら高い語学力があってもそれは所詮小学生や幼児レベルなので、語彙にしても会話や文章のレベルにしても小学生と中学生では理解できるレベルが異なるからです。
その点を考えると、小学生や幼児へは細かい文法説明などは必要ありません。それより文の構造に自然な形で親しめるようにして、耳を英語にならすことが重要です。ネイティブの少し下の子供向けのアニメや絵本などに慣れ親しむようにするといいでしょう。
理屈抜きで英語の構造に慣れておくと、中学で本格的な英語学習が始まった時に、文法がすっと頭に入るようになります。また、日本人が聞き取りにくい英語の音が聞き取れるようになっていると、リスニングで苦労しません。
英語に早くから親しんでいる子供は、英語的な考え方に関しての順応性もより高いです。英語に苦手意識をもつ可能性も低くなります。また、情緒的な面でも安定していたり、ものごとを多角的にとらえられる柔軟性を持っていたりという、英語力以外の部分のメリットも大きいので、「英語力の高さ」だけにフォーカスしないようにするといいですね。
普段親しむものを中心に学ぶ
英語学習は何から手をつけたらいいのか、という点ですが、普段親しんでいるものにまずフォーカスしてください。
数や色の基本的なものから、「楽しい」「悲しい」といった感情を表す言葉、家や幼稚園・小学校にあるものなどを題材にすると楽しく学べます。基本的なことを一通り学んだら、次は子供が興味を持っているものがいいですね。
宇宙に興味がある子であれば、宇宙に関する子供向けの英語の絵本、恐竜が好きならば恐竜の名前、お料理に興味がある子ならば一緒に作りながら英語での表し方を学ぶ、というように好きなものが題材だと遊びの延長で英語を覚えることができます。
家庭学習の方法
英語のゲーム
子供はみんなゲームが大好きです。幼稚園や保育園ではたくさんゲームをしながら、お友達とのコミュニケーションのとり方を学んだり、新しい言葉を覚えたりします。小学生も友達や家族みんなで遊べるゲームが好きですし、ボードゲームは大人になっても楽しいものです。
普段行なっている簡単なゲームを英語でやってみましょう。「ダルマさんが転んだ」「椅子取りゲーム」「鬼ごっこ」など世界共通のゲームは年齢関係なく家族みんなで行うと楽しいですし、ボードゲームも英語のものは本当に種類が豊富で幼児や赤ちゃんからできるものもあります。
読み聞かせ
赤ちゃんのときから読み聞かせをたくさんしてもらった子供は、言葉の発達が早く語彙力も豊富です。英語で同じように読み聞かせをしてみましょう。「三びきの子豚」「赤ずきんちゃん」などの誰でも知っているお話だと、英語でも理解しやすいです。
「自分は発音がうまくないから」と躊躇する方もいらっしゃるかもしれませんが、子供は本を読んでもらうのが大好きです。コミュニケーションの一貫としてぜひ読み聞かせをしてみてください。
どうしても発音が気になる方は、ネイティブが吹き込んだものを聞かせて一緒にページをめくるといいでしょう。ただ、イギリス人からみたらアメリカ人の英語は非常になまっていますし、インド人やシンガポール人、オーストラリア人などの訛りのきつい英語もネイティブです。アメリカ人でも中華系、南米系、アフリカ系などそれぞれ特徴ある訛りがあるので、日本人が苦手ないくつかの子音や母音の発音に気をつければ、そこまで気にする必要はないと思います。
英語の歌を歌う
歌は大人にも子供にもとてもいい英語学習ツールです。日本語でよく知っている歌も、もとが英語やほかの外国語のものもたくさんあります。ネイティブがよく知っている子供向けの英語の歌を一緒に歌ってみましょう。
見たものやできごとを英語で言う
ある程度語彙力がついてきたら、目に映るものやその日の出来事を英語で言ってみるのもとてもいい練習になります。日常の英会話は短く簡単な英語がつながったものが基本です。口に出してみることで語彙も記憶として定着しますし、イメージで覚えることができます。
英語の子供向けアニメ視聴
リスニング練習にアニメがおすすめです。同年代のネイティブ向けアニメを見るといいでしょう。小学生になるとかなり語彙も多くなるので、少し下の年齢向けのものを!英語学習を始めたばかりなのであれば、幼児向けのゆっくり話されているものを選ぶといいですね。
子供の英語学習に役立つサイト
海外のサイトですが、無料で学べる子供向けの英語学習サイトをいくつかご紹介します。全て英語で書かれているので、保護者も子供と一緒に英語を学ぶ気持ちで見るといいかもしれません。
Learn English with Kids(British Council)
ブリティッシュ・カウンシルの子供向け英語学習サイトで、4技能を楽しく学べるようになっています。説明の言語も一番上の部分にある設定を「日本語」に変えれば、日本語で読むことができ、英語を読むことが苦手な保護者も無理なくサポートすることができます。
Pre A-1 Level Activities for Children(Cambridge English Language Assessment)
欧州言語レベル分けはA1からC2までの6段階が基本ですが、Pre A1はさらにその下の幼児向けです。ケンブリッジ英検の主催機関であるCambridge English Language Assessmentの公式サイトで、初歩的な英語が学べるようになっています。英語を学び始めたばかりの子供にぴったりです。
Pre A-1 Level Activities for Children
Stories for Children (BBC)
イギリスのBBCの英語学習サイトの中から、アニメーションを使った子供向けの読み聞かせページになります。内容的には小学生低学年向けですが、全てスクリプトがついているので、英会話初級の大人もリスニングやディクテーション練習にいいでしょう。
Games to Learn English
ゲームに取り組みながら楽しく英語の語彙が学べたり、文章を作ることができるサイトです。絵と言葉をマッチングさせる簡単なものもたくさんあり、大人が手伝えば文字を読めない幼児から可能です。一人で行うのであれば、アルファベットを学び、ある程度英語の単語が読めるようになった年齢が対象です。小学校の英語授業や英会話学校の復習や補完教材として最適です。英語が初心者の中学生も基本的な語彙や文章作りの復習に使うと便利でしょう。
早期英語教育についてわかったら
早期教育では母国語である日本語を一番大事にしながら、英語を楽しく学ぶ環境を作ることが大切です。保護者が関わって一緒にアクティビティをこなすことで、子供は英語がもっと好きになります。
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