「お疲れ様」「よろしく」「微妙」のように、単語の意味自体はシンプルでも、英語にしようとすると戸惑うことはありませんか?
その理由は、“日本語そのものの難しさ”ではなく、日本語と英語が前提にしている文化やコミュニケーションの仕組みが大きく異なるためです。
この章では、まず「なぜ日本語は英語に直訳しづらいのか」を理解しながら、英語表現を選ぶうえで欠かせない文化の違いを整理していきます。
挨拶・気遣い系の日本語|英語に直訳できない代表表現
まず取り上げるのは、最も誤訳や戸惑いが多い「挨拶・気遣い系」の日本語です。
これらの表現は、労い・感謝・礼儀・関係性など複数の意味を同時に含むため、英語では状況ごとに細かく分けて表す必要があります。
それでは代表的な4つの日本語を、ひとつずつ英語でどう言い換えるのが自然なのか見ていきましょう。
お疲れ様
英語には「お疲れ様」に相当する万能表現がありません。状況ごとに、感謝・労い・挨拶などを分けて表現します。
<状況別の自然な英語>
仕事終わりに:
Good job today.(今日もよく頑張ったね)
You worked hard today.(今日頑張っていたね)※やや上からに聞こえる場合があるので注意
帰る人に:
Have a good rest.(ゆっくり休んでね)
同僚に軽く:
Nice work.(お疲れ!)
Alright, I’m heading out.(じゃあ、帰るね)
See you tomorrow!(また明日)
相手が何かを終えたとき:
Thanks for your hard work.(頑張ってくれてありがとう)
I really appreciate your effort.(努力に感謝します)
上司から部下へ(プロジェクト後など):
I really appreciate your hard work.(君の努力に感謝しているよ)
Thanks for all your help on this project.(このプロジェクトを助けてくれてありがとう)
オンライン英会話の最後:
Thanks for the lesson today.(今日のレッスンありがとう)
<文化メモ>
日本語の「お疲れ様」は、労い・挨拶・感謝が一体化した独特の文化的表現。英語圏では“相手が何をしたか”に応じて、適切な言葉を選ぶのが自然です。
よろしく(お願いします)
次に紹介するのは、日本人が英語で最も迷いやすい表現の一つ、「よろしく(お願いします)」です。こちらも「お願い」「協力」「関係構築」など意味が複数に分かれるため、文脈ごとに使い分ける必要があります。
<状況別の自然な英語>
仕事をお願いするとき:
Thank you in advance.(事前にお礼を言います=よろしく)
I’d appreciate your help.(ご協力いただけると助かります)
初対面の挨拶で:
Nice to meet you.(初めまして)
I look forward to working with you.(これからよろしくお願いします)
メールの締め:
Thank you for your cooperation.(ご協力よろしくお願いします)
<文化メモ>
「よろしく」は“関係を円滑にするための潤滑油”。英語は目的を明確にする文化なので、意味が分解されて表現されます。
お世話になります
初めての相手にでも使える日本語特有の関係構築フレーズ。
<自然な英語>
Thank you for your support.(サポートありがとうございます)
I appreciate your help.(ご協力に感謝します)
I look forward to working with you.(今後ともよろしくお願いします)
<文化メモ>
英語には「まだ起きていないことに対して感謝する」という習慣は、一般的ではありません。実際の行為に対して感謝するのが自然です。
お先に失礼します
「先に帰ることに恐縮する」日本特有の文化。
<自然な英語>
I’m heading out now.(先に帰りますね)
I’ll get going.(そろそろ失礼します)
Have a good rest of your day.(良い一日を)
<文化メモ>
英語圏では、先に帰ることを謝る必要がないため、状況報告+軽い挨拶が自然。
ここまで紹介してきた挨拶・気遣い系の表現は、日常生活でもビジネスでも頻繁に登場します。こうした表現を英語にするときのポイントは、ひとつの日本語をひとつの英語に当てはめようとしないことです。曖昧さを含む日本語は、英語では「意味を分解して」表現する必要があります。
続いての章では、特に日本語の特徴が表れやすい「感情のグレーゾーン」を英語でどのように伝えるかを見ていきましょう。
曖昧な感情・評価を表す日本語の言い換え方
「微妙」「しょうがない」のような表現は、日本語が持つ“曖昧さの魅力”が最も色濃く出る言葉です。しかし英語では、曖昧な表現はそのまま通じないため、気持ちを分解して表す必要があります。
ここでは、感情や評価をやわらかく伝える日本語を、英語でどのように言い換えると自然なのか具体的に解説します。
微妙
「まあまあ」「なんとも言えない」「否定っぽいけど断定しない」など、非常に曖昧。
<自然な英語>
「良くないけど悪くもない」:
Not great.
It could be better.
「判断が難しい」:
It’s hard to say.
「ちょっと…(否定寄り)」:
I’m not sure about that.
Kind of…(単独でも“微妙”のニュアンス)
<文化メモ>
日本語の「微妙」はポジティブ・ネガティブどちらにも振れる曖昧表現。英語は方向性を明確にします。
しょうがない(仕方がない)
受け入れ・あきらめ・許容がセットになった日本語。
<自然な英語>
It is what it is.
It can’t be helped.
Nothing we can do about it.
Let’s just move on.(切り替えよう)
<文化メモ>
日本では昔から、どうにもならないことは受け入れるという考え方があり、「しょうがない」という言葉が自然に使われるようになったと言われます。英語圏ではそれとは異なり、気持ちを切り替えて前に進むことが大切にされています。
曖昧な言葉ほど、英語にするときには「自分が何を伝えたいか」を明確にする必要があります。感情・評価・判断基準など、目的を分けて表現することで、英語でもニュアンスが正確に伝わるようになります。
次は、人間関係や距離感を表す日本語を見ていきます。
挨拶とは違った難しさがあり、こちらも直訳が難しい代表的なカテゴリです。
人間関係・距離感を示す日本語の自然な英語表現
「久しぶり」「残念」「気をつけて」「頑張ってね」など、日常会話で頻出する言葉ほど、英語にすると微妙な違いが出てきます。
これらの表現は、相手との距離感、関係性、状況の温度感によって言い方が変わるのが特徴です。
ここでは、会話の中でとっさに使える自然な英語フレーズを、文脈ごとに紹介します。
久しぶり
日本語ではこれ一語で挨拶になるが、英語では“状況説明”になる。
<自然な英語>
Long time no see.(久しぶり!/カジュアル)
It’s been a while.(ちょっと久しぶり)
It’s been so long!(本当に久しぶり)
<文化メモ>
英語では Hi / Hello の後に状況説明として言うのが自然。
残念
「悲しい」「惜しい」「残念」のニュアンスを一語でカバーする日本語。
<自然な英語>
That’s too bad.
I’m sorry to hear that.
What a shame.
気をつけて
「注意する」「安全」「体調への気遣い」など意味が広い。
<自然な英語>
Take care.(体に気をつけて/別れの挨拶)
Watch out! A car is coming!(危険への注意)
Drive safely.(運転気をつけて)
Have a safe trip.(良い旅を/道中気をつけて)
よく頑張ったね(頑張ってね)
英語には「頑張る」に相当する単語がないため、励まし・応援・評価に分かれる。
<自然な英語>
励ますとき:
You can do it.
Good luck.
労うとき:
You did your best.
I’m proud of you.
日本語の「人間関係」や「距離感」を表す言葉は、背景にある文化ごと理解することで、英語に変換しやすくなります。
とくに会話では、文脈に応じて言葉を選び分けることが、自然なコミュニケーションにつながります。
ここまで見てきたように、英語に訳しにくい日本語にはすべて“文化的な理由”があります。最後に、この文化理解がどれほど英語力につながるのかを、もう一度整理していきましょう。
自然な英語を話すために大切な「文化理解」を深めよう!
英語の自然さは、「その言葉が生まれた文化」を理解するところから始まります。この機会に文化理解を深め、より自然な英語を目指してみませんか?
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