インスタグラムで世界ナンバー2、全米でナンバー1のフォロワー数(なんと1.4億人!)を誇るナショナルジオフラフィック。美しい写真とともに、社会問題から人類、環境、自然などさまざまな分野をテーマに問題提起しています。
投稿文を読んで英語学習に役立てながら、世界でどんなことが起きているのか、一緒にみていきましょう。
ナショナルジオグラフィックとは?
ナショナルジオグラフィックとは
ナショナルジオフラフィックの創刊は1888年。実に150年近くの歴史を誇る月刊誌です。地理学、人類学、自然・環境学、ポピュラーサイエンス、歴史、文化、最新事象、写真などのあらゆる分野が取り上げられており、読者850万人、世界36ヶ国語に翻訳されています。
日本における発行数は8万部以上。問題意識の高い知識層に人気の高級誌です。
美しい写真とともに広がる世界
日本語版の雑誌を手にしたことがある方も多いかもしれませんが、雑誌同様インスグラムも世界各国の写真家によって撮影された美しい写真は見ごたえ満点!
ボリュームある雑誌の記事に比べ、インスタグラムは短文なので、スキマ時間に読んで英文になれ親しむことができます。新聞やニュースでは取り上げられないような問題も多く投稿されていますので、世界で何が起きているのかを知ったり、異なる文化や自然への新しい知識を得ることができます。
取り扱っているテーマと投稿例を見てみよう
インスタグラムの投稿の中でも特に印象的なものをピックアップして解説していきます。
世界の美しい景色を楽しむ
海外の美しい景色が取り上げられていますが、旅行写真と違うところは、ただ美しいだけで終わらず、社会問題を考察するきっかけとしたり、雄大な自然への賛美や美しい情景を守っていくべきであるという暗示もされています。
ボルネオ島のキナバル山
夕日をバックに虹がかかっているのが見え、嵐の後の静かな美しさが表現されています。自然の雄大さが見てとれます。
takes in a moment of magical light after the storm on Mount Kinabalu, in Malaysian Borneo
(マレーシア・ボルネオ島のキナバル山の嵐の後の魔法のような光の瞬間を撮影)
万里の長城
難攻不落の広大な自然に作られた中国・万里の長城。侵入者を寄せ付けないために長い時間と多くの人手をかけて建設されましたが、実は中国人と兵士を忙しくさせ、反乱について考える時間を与えないことが目的だったとも言われています。
Others say it was a calamitous and ill-conceived folly, draining China’s coffers while ultimately failing to keep marauding nomads out and leading to xenophobia and isolation
(それは悲惨で思いがけない愚かさで、中国の財源を枯渇させた。最終的に遊牧民を略奪し続けることができず、外国人排斥と隔離につながったとも言われている。)
万里の長城は壮大なスケールの素晴らしい建造物ですが、政策的に成功した面がある一方、現在に続く社会的問題にも繋がっているとも言えます。
人物を通して異なる文化や生活に触れる
ある人物のポートレートを通して、背景にある文化や生活に触れられています。普段なかなか目にすることのない民族について学ぶことができます。
アマゾン先住民の生活
南北アメリカに征服者が侵入するはるか昔からアマゾンの熱帯雨林とともに暮らしてきた先住民。彼らは現在も都市化の侵害からコミュニティを守る為に戦っています。川で釣りをして、森で果物を集め、庭で作物を育て、狩猟をして家族を養うというシンプルで原始的な生活を今でも続けています。
As someone who loves animals, it can be difficult to see wildlife killed. But Indigenous peoples do not hunt to be cruel or for sport; they hunt to support their communities and feed their loved ones as their ancestors did before them
(動物を愛する者として、野生生物が殺されるのを見るのは難しいかもしれないが、先住民族は残酷なことやスポーツを求めて狩りをすることはない。彼らは自らのコミュニティをサポートし、先祖がしてきたように自分の愛する人を養うために狩りをする。)
文明社会の金持ちがスポーツ感覚と自己満足のために狩りをすることや、皮や牙を売るためだけに無駄に動物が殺されることが問題となっています。そういった自分勝手な理由で動物の命を奪うのではなく、先住民の狩りのような生きるために必要なことで尊重されるべきであることが暗示されています。
アフリカのレンジャー
野生動物を保護するために不可欠なレンジャーの存在は、地元のコミュニティにとって心強い存在です。レンジャーのおかげで野生動物と共存しながら人間は安全に暮らすことができ、学校が建てられたり、雇用が創出されます。
この投稿では、重要な任務を請け負っているレンジャーの苦境やアフリカの経済動向の現状について問題提起されています。
But it’s heartbreaking to see how underfunded and under-resourced many wildlife rangers are–despite the physical and mental toll of being front-line defenders of both wildlife and human life. Adequate resourcing has always been a challenge, but it is especially so now, given the economic downturn across Africa
(多くの野生動物レンジャーの、野生動物と人間の両方の最前線の擁護者であることの肉体的および精神的な犠牲は大きい。それにも関わらずどれほど資金不足で生活に困窮しているかを見るのは悲痛である。適切な資金調達は常に課題であるが、現状におけるアフリカ全体の景気後退を考えると、特に今必要とされているものである。)
カチン族の自治を祝うお祭り
ミャンマーの有数な民族の一つであるカチン族の有名なお祭り「マノウ祭」を取り上げています。このお祭りはカチン州の州都であるミッチーナで毎年開催されており、カチン族にとっては軍事政権に打ち勝った象徴的で大変重要な儀式です。
A quartet of pipers practices for the annual festival that celebrates the ethnic Kachins’ autonomy, declared in 1948 but lost after the military coup in 1962. “After a cacophonous start,” says one listener, “the boys pulled together to play an almost harmonious tune.
(カチン民族の自治を祝う毎年恒例のフェスティバルのためのパイパーのカルテットの練習。カチンの自治は1948年に宣言されたが、1962年の軍事クーデター後に敗北した。その場で演奏を聞いていた人によると「この子たちは最初は耳障りな音を出していたけど、ほぼ調和のとれたきれいな音を出せるようになったんだ」とのこと。)
各国で起きている社会問題について考える
環境や社会問題についても数多く取り上げられています。日々のニュースであまり取り上げられることのない隠れた問題への気づきを与えてくれます。
ガラパゴスのプラスチック汚染
ガラパゴスの岩肌に張り付く無数の真っ赤なカニ。一見平和な光景ですが、実はこの裏には恐ろしい環境破壊が隠されていたのです。
After just a short walk, I saw thousands of plastic bottles and bags washed up on the shore. The Galápagos Islands, once a haven for wildlife, will soon join a graveyard of plastic beaches and choked bays, and these crabs will struggle to survive. No matter how small, animals like these are infinitely important to their ecosystem, and we must fight to protect them. You can do your part and avoid single-use plastics and always try to reuse and recycle
(少し歩くと、何千ものペットボトルやプラスチックの袋が岸に打ち上げられているのが見えた。かつては野生生物の天国だったガラパゴス諸島は、間もなくプラスチックで覆われたビーチとゴミの詰まった湾の墓地の一つとなり、これらのカニは生き残るのに苦労するだろう。どんなに小さくても、このような動物は生態系にとって非常に重要であり、我々はそれらを保護するために戦わなければならない。みんな自分にできることをしよう。使い捨てのプラスチックを避け、常に再利用とリサイクルを試みて欲しい。)
世界各地で大問題になっている環境破壊。最後の楽園といわれるガラパゴスでも確実に汚染が広がっています。美しい自然とそこに生きる動植物を守るために、小さなことでもいいので自分が何ができるかを考え、実践していく必要があるのではないでしょうか。
マリの砂漠の水不足
マリの砂漠で楽しそうに笑う笑顔の素敵な女の子。この画像は、国際ガールズデーを祝うために撮影されたものだそうです。
実はこの写真、遊んでいるわけではなく、ブイベジャという人里離れた砂漠の町の砂嵐から逃げているところ。 「ブジベジャ」とは砂漠の幸運を意味しますが、1966年の深刻な干ばつ以来、砂との戦いの中でも水を得るために地下70メートルを掘り続けています。
地球温暖化の影響によって干ばつはますます深刻になり、水を入手することがさらに困難となっています。
Finding water is a task that disproportionately falls to women and girls. Collectively they spend 200 million hours every single daily seeking and hauling water for their communities, a task that steals their time and potential, which is why it’s so important to support groups and organizations that make access to clean water a priority.
(水を見つけることは、女性の仕事だ。彼女たち全員の時間を合計すると、毎日2億時間もの時間をコミュニティのために水を探して運搬することに費やしている。この仕事によって彼女たちの時間と潜在的能力が奪われている。きれいな水へのアクセスを優先してサポートするグループや組織を支援することが非常に重要なのだ。)
私たちはいつでもあたり前のようにきれいな水を飲むことができ、それについて特に疑問を持つ人はほとんどいないのではないでしょうか。きれいな水へのアクセスは実はとても贅沢なこと。教育の時間も遊ぶ時間も奪われて、日々過酷な環境で水を探し求めている人たちがいるのです。貴重な水を無駄にしないよう大切に使っていきたいですね。
ブルーベリー農場の季節労働者
この写真の畑、なんだと思いますか?
ブルーベリーです。私たちが普段スーパーで買うブルーベリーは多くの季節労働者の働きによってもたらされています。「世界のブルーベリーの首都」と呼ばれる、米ニュージャージー州ハモントンには、毎年夏に何千人もの季節労働者とその家族が収穫のためにやってきます。
2020年はコロナ禍で世界各地で移動を制限されて以前より不自由な生活となっていますが、特にこういった季節労働者の状況は過酷です。
Social distancing is nearly impossible. A majority of migrant farmworkers live in crowded camps on the farms, sharing bathrooms and dormitory-style sleeping quarters
(社会的距離はほぼ不可能。季節労働者の大多数は、農場にある混雑したキャンプに住んでおり、バスルームと寮スタイルの寝室を共有している。)
アメリカでは8つの州が農業労働者のCOVID-19への感染を防ぐための強制的な規制を行っていますが、このブルーベリー畑のあるニュージャージー州でも同様に農業労働者の流行に対する健康と安全に関する法律を可決するよう、活動家たちが戦っています。
記念日にちなんだ学びを得る
世界のあちこちでは毎日何かしらの記念日となっています。ナショナルジオグラフィックでは、そういった数多くの記念日の中でも象徴的なものと、それにちなんだエピソードを取り上げています。
先住民の日:モンタナ州の裸馬レース
躍動的なこの写真は、米モンタナ州カリスペルの裸馬レースの光景から切り取られたもので、『先住民の日』を象徴するものとして取り上げられています。先住民の若者たちは、コミュニティに自らのアイデンティティと伝統的な生活様式を戻すことに尽力しています。
We are reclaiming the lands, culture, and traditional knowledge that allowed us to live closely with the natural world for thousands of years. Today is a day to remember the sacrifices of our ancestors, but also a day to give thanks to all the things that support us, and look ahead to the generations that will come after us.
(我々は、何千年もの間自然界と密接に暮らすことを可能にした土地、文化、伝統的な知識を取り戻そうとしている。今日は我々の先祖の犠牲を思い出す日であると同時に、我々を支えてくれるすべてのものに感謝し、後に続く世代の将来を考える日でもあるのだ。)
国際ガールズデー:アフガニスタンで空手を習う女の子
『国際ガールズデー』にちなんだ写真に写っているのは、9歳のマシア。アフガニスタン・カブールの空手クラスで自分のスキルを披露しています。
Of the extraordinary challenges faced by humankind in 2020, the need to reimagine and build a more promising future for girls around the world is more important than ever. I’ve spent the better part of my career focused on amplifying the voices of some of the world’s most at risk girls. Today, on the eighth International Day of the Girl, let’s celebrate their resiliency, strength, and power.
(2020年に人類は稀に見ない課題に直面した。世界中の女の子にとってより明るい未来を考え、作り上げていく必要性がこれまで以上に重要になっている。私は自分のキャリアの大部分を、世界で最も危険にさらされている少女たちの声を増幅することに集中して過ごしてきた。第8回国際ガールズデーに、彼女たちの回復力、強さ、力を祝いましょう。)
動物と彼らを取り巻く環境について学ぶ
最後に可愛い動物たちと自然環境について見てみましょう。「なるほど」「へー」と思うようなエピソードが多く取り上げられています。
世界で最も大きな哺乳類の一つベアードバク
鼻が長くてちょっとゾウに似ているこの動物は、メキシコと中央アメリカ原産のベアードバク。この地域で最大の在来陸生哺乳類であり、生きている4種のバクの中で最大です。短くて細い脚は下層植生をすばやく移動することを可能とし、その奇妙な形の鼻は、食料源を見つけるのに最適です。
バクは熱を放散しづらく、日中暑い時間に移動するのが難しいため、夜行性になっていると考えられています。
In some habitats, tapirs are considered gardeners of the forest, dispersing seeds through their feces while traveling throughout their home range. Researchers also consider the Baird’s tapir to be an important species for indicating the overall health of rainforests because of their rarity and sensitivity to habitat disturbance.
(一部の生息地でバクは「森の庭師」と見なされており、行動圏全体を移動しながら糞便を通して種子を分散させます。ベアードバクはこのような特異な性質と生息地の乱れに対する敏感さがあり、研究者たちは熱帯雨林の全体的な健康状態を測るための重要な種であると考えています。)
戦闘練習をするホッキョクグマ
じゃれているように見えるこの2匹のホッキョクグマは、求愛行動にも見えますが、なんと実はオスどうしの戦いなのです。
While stranded on land, male polar bears often pair with a sparring buddy. This allows them to practice fighting, as in a few months’ time they could be out on the sea ice fighting in deadly battles over breeding rights.
(陸上で立ち往生している間、オスのホッキョクグマはしばしばスパーリング仲間を見つける。こうして彼らは戦いを練習し、数か月後には繁殖権をめぐる氷上の熾烈な戦いに出かけることができるのだ。)
スマトラ虎の子供たち
カメラ目線の若いスマトラトラの4つ子たちはヨーロッパ最大の動物園であるベルリンのティアパークで誕生しました。
スマトラ虎は野生においては2つの大きな脅威に直面しています。1つ目がパーム油の生産による生息地の喪失、そして2つ目が伝統的なアジア薬に使うために行われている密漁です。
こういった理由からスマトラ虎の数は過去数十年で劇的に減少しています。専門家によると、現在では400頭未満のトラしか野生に残っていないそう。
Tierpark Berlin has been committed to species conservation for many years now, and is responsible for the births of 118 Sumatran tigers over the past 60 years. It works with regional and global conservation breeding programs and zoos worldwide; the goal is to establish an ex-situ population as one component of the overall strategy to save the critically endangered Sumatran tiger
(ティアパークベルリンは、長年にわたって種の保護に取り組んでおり、過去60年間で118頭のスマトラ虎の誕生に成功した。ティアパークは世界中の地域的およびグローバルな保護繁殖プログラムや動物園と連携している。目標は、全体的な戦略の1つとして生息域外個体群を確立し、絶滅の危機に瀕しているスマトラ虎を救うことである。)
まとめ
ここで取り上げた投稿はほんの一部ですが、雰囲気はわかっていただけたでしょうか。見過ごされがちな問題に焦点をあて、インパクトのある美しい写真と、それに添えた比較的短い文章で読者に興味を持たせるようなものになっています。
日々のニュースで世の中の旬の動きを追うのも大切ですが、ときにはナショナルジオグラフィックのような長く続くもっと大きな問題に目を向けてみましょう。自分の問題意識を高めながら英語力を磨くこと以外にも、ディスカッションやフリートークのネタとしても使えますよ。
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