【トランプVSクリントン】アメリカ大統領選の英語スピーチを分析したら◯◯だった

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2016年秋に迫ったアメリカ大統領選挙。民主党と共和党と共に候補者が決まり、7月には党大会も終わりました。次の11月はいよいよ本戦。熾烈な戦いはまだまだ続きます。

さて、日本の新聞やニュース番組でも度々報じられている選挙戦の模様ですが、今回の候補者たちはそれぞれの政治的意見を表明する上で、どのような英語を用いているのでしょうか?

この記事では、トランプ氏、クリントン氏両陣営の掲げる政策をおさらいするとともに、各候補者のスピーチに頻出する英単語から、政策や選挙戦略における要点を探ります。

1. 各政党の候補者のプロフィールと基本的な政策とは

共和党候補:ドナルド・トランプ

不動産王として知られ、長年の間アメリカのビジネスシーンで存在感を示し続けてきたドナルド・トランプ氏。不動産だけでなく、カジノやホテルの領域でも成功を収めた人物です。

共和党大統領候補者となってからは、移民の厳格な管理、健康保険(特にオバマケア)の再編、合衆国憲法補正第2条、そして中国との関係における強硬路線などを政策の軸として打ち出しています。

民主党候補:ヒラリー・クリントン

ヒラリー・クリントン氏は元アメリカ大統領のビル・クリントンの妻であり、1993年から2001年にはファーストレディも務めました。その後も政治家としてのキャリアを着実に積み、オバマ政権では国務長官として活躍しました。

アメリカ史上初の主要政党の女性大統領候補者として、クリントン氏は人権の擁護、教育制度の充実、移民政策の再編という3つの政策を強く掲げています。

2. スピーチで使用頻度の高い単語から、キーポイントを知ろう

それでは、2016年の7月に行われた各党の党大会の両候補のスピーチから、もっとも使用頻度の高かった単語を独自に編集したワードクラウドとともにご紹介します。

ドナルド・トランプ(共和党大会:2016年7月18日〜21日)

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1位:America(25回)— アメリカ
2位:country(25回)— 国
3位:law(19回)— 法律
4位:immigration/immigrant(13回)— 移民
5位:terror/terrorism/terrorist(13回)— テロ/テロリスト
6位:people(12回)— 人々
7位:again(12回)— また、再度
8位:violence(11回)— 暴力
9位:trade(11回)— 貿易
10位:kill(11回)— 殺す

Keypoint①:反動としての「アメリカ・ファースト」

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トランプ陣営が大統領選挙で掲げているスローガンはズバリ、「Make America Great Again.(アメリカを再び偉大に)」というもの。このスローガンの通り、トランプは共和党大会でのスピーチの中で計12回、againという副詞を用いています。

中でも特徴的なのが、

“The American People will come first once again.

(アメリカ人はもう一度最優先されることになるだろう。)

という発言に顕著であるような、「反動としての自国優先主義」という態度。

アメリカのみならず、イギリスのEU離脱運動(Brexit)を率いたUKIP党のファラージ代表もまた「We want our country back(自分たちの国を取り戻したい)」という発言を残しているように、世界の先進国では「自分たちの国をあるべき姿に取り戻す」という動きが一部の層で活発なのです。

Keypoint②:「分断」の協調

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トランプ氏のスピーチといえば、国内外を問わず大きな批判を集めることもある過激でセンセーショナルな言葉遣いが特徴的。共和党大会でも、「terror(テロ)」、「kill(殺す)」、「violence(暴力)」、「illegal(違法の)」といった“scare-mongering”な(不安を煽るような)言葉を多用していました。

“We are going to build a great border wall to stop illegal immigration, to stop the gangs and the violence, and to stop the drugs from pouring into our communities.”

(私たちは国境に大きな壁を建設し、不法移民、ギャングや暴力、そしてドラッグが私たちのコミュニティに流れ込むのを抑止する。)

アメリカ国内では、これまで膨大な数の移民を受け入れてきたことによって、雇用不安や銃撃事件などの社会問題が生じたという意見が高まりを見せています。

これらの社会不安に対して、トランプ氏は「壁を作る」と述べていますが、この「分断」を強調する強硬姿勢もまた、アメリカ国内でトランプ氏への期待が高まっている理由の一つです。

ヒラリー・クリントン(民主党大会:2016年7月25日〜28日)

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1位:people(33回)— 人々
2位:America(24回)— アメリカ
3位:country(22回)— 国
4位:believe(19回)— 信じる
5位:work(16回)— 仕事/働く
6位:President(14回)— 大統領
7位:together(14回)— 一緒に
8位:right(12回)— 権利
9位:keep(11回)— 維持する
10位:economy(10回)— 経済

Keypoint①:移民の人権擁護

移民政策は2016年の大統領選挙でのもっとも大きなポイントのひとつです。しかしクリントン氏とトランプ氏では同じ移民問題でも、視点が大きく異なることが特徴的です。

クリントン氏は、下記のような発言を通じて、移民に対して寛容的になりながらアメリカという国を良くしていこうと訴えています。

“I believe that when we have millions of hardworking immigrants contributing to our economy, it would be self-defeating and inhumane to kick them out.”
(熱心に働き、我々の経済活動に貢献している膨大な数の移民たちがいるときに、移民たちをアメリカから追い出すことは自滅的であり、非人道的なことであると私は強く思います。)

“And we’ll build a path to citizenship for millions of immigrants who are already contributing to our economy!”
(私たちは我々アメリカの経済活動に大きく貢献してくれたたくさんの移民たちに市民権を獲得する道筋を構築していきます。)

前述したトランプ氏の発言と比べると、アメリカに流入する移民に対してbuild(建設)するものが、「wall(壁)」なのか「path(道筋)」なのか、という点で好対照なのがお分かりいただけるはずです。

Keypoint②:「一体感」の協調

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トランプ陣営が「分断」を煽るような言葉を多用することを逆手にとってか、クリントン氏のスピーチには「together」などの一体感を示す単語が頻出します。

“We have to heal the divides in our country.”
(私たちはアメリカの分断を直さなければならない。)

“If you believe that every man, woman, and child in America has the right to affordable health care … join us.”
(もしもあなたが、アメリカ中のすべての男性、女性、そして子供に低額医療を受ける権利があるならば、私たちと一緒に行動しましょう。)

このように、アメリカに住むあらゆる人に対してのメッセージを発信するクリントン氏のスピーチは、20世紀を通じて自由主義世界のリーダーとして君臨してきた「多様なアメリカ社会」の既存路線を維持するものと言えるでしょう。

しかし、こうしたアメリカ的な理想を掲げる影で、国務長官時代のメール問題など、クリントン氏はその信頼性に対して疑いの目が向けられているのも確か。そうした一部の不信感に打ち勝つ説得力をクリントン陣営が持てるかどうかが、今回の大統領選の焦点の一つになるかもしれません。

3. 主語にも違いが!?両陣営の掲げるリーダーシップ像

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両大会で用いられた一人称の主語として、「I(私)」と「We(私たち)」どちらが多かったのか、その内訳を見てみると、クリントン氏は「I」が77回、「We」が78回と均衡しているのに対し、トランプ氏は「I」が68回、「We」が45回とやや開きがありました。

この差は、「Stronger Together(一緒の方が強い)」をスローガンに掲げるクリントン氏が繰り返した「Join us.(一緒にやろう)」という呼びかけと、トランプ氏が共和党大会で繰り返した「I AM YOUR VOICE(私はあなた方の代弁者だ)」という言葉との対照的な関係にも表れているでしょう。

実際に、7月の党大会では、リーダーシップのあり方をめぐる攻防戦で、両陣営が火花を散らしました。きっかけとなったのが、トランプ氏の発言にあった

Nobody knows the system better than me, which is why I alone can fix it”.

(私ほどシステムを知り尽くした男はいない。だからこそ私一人で問題解決できるのだ)

というセリフ。
これに対し、クリントン氏は次のように発言することでカウンターパンチを浴びせかけます。

Americans don’t say: “I alone can fix it.”
We say: “We’ll fix it together.”

(アメリカ人は「私一人で問題解決できるのだ」とは言わない。私たちは「みんなで解決しよう」と言うのです。)

このように、唯我独尊的な姿勢を通じてトランプ氏が強いリーダーシップやカリスマ性を演出しているのに対し、クリントン氏が依拠しているのが、アメリカのビジネスシーンで注目を集めている「インクルーシブ・リーダーシップ」と呼ばれるリーダー像です。

「インクルーシブ・リーダーシップ」とは、チームを構成するメンバーの役職は関係なく、それぞれの個性を大事にしながらチームで一丸となって問題解決をしていこうとすることが特徴的です。

強烈な「俺イズム」の持ち主か、「巻き込み型」のリーダーか。国際的な影響力の高いアメリカ大統領選だからこそ、どのようなリーダーが選ばれるのか目が離せませんね。

終わりに

いかがでしたでしょうか?政治的な討論など、専門的な背景知識が必要な事柄について英語のまま読んだり聞いたりするというのは、英語ネイティヴではない日本人にはなかなか難しいこと。

しかし、この記事内でワードクラウドを用いて示したように、使用頻度の高い単語からスピーチ全体を通じて話者がアピールしたいことや、メッセージを伝えるための戦略性などの概観を知ることが可能なのです。

さらに、「繰り返し使われている単語」に注目することで、細部のメッセージをよりクリアに読み解くことができます。皆さんも、英語を読み聞きする際には上のような方法を試してみてはいかがでしょうか。

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