チェッカーズ作曲家70歳で全米デビュー「英語学習は50歳から」芹澤廣明氏独占インタビュー【前編】

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チェッカーズの「涙のリクエスト 」、中森明菜の「少女A」、岩崎良美の「タッチ」など、1980年代に数々のアーティストにヒット曲を提供し続けた作曲家の芹澤廣明(せりざわひろあき)さん。

自ら歌い歌手としても高い評価を受けるだけでなく、アレンジャー、音楽プロデューサーなど、マルチな活動を続ける、音楽界の生けるレジェンドです。

古希(70歳)を迎えた今年も精力的にご活躍中。6月には作曲家活動の35周年アルバムを、さらには 6月6日に自らが歌う全編英語の最新楽曲「Light It Up!」を全米発売!

「50歳で英語を一からやり直して勉強し、英語の曲を歌って全米デビュー」と聞きつけたRare Job English Lab編集部は、さっそく取材を依頼。

「ANIME GOLDEN HITSTORY」の発売元であるポニーキャニオンの大泉文彦さんと、海外の窓口となるマネージメントのアレクサンダー・アブラモフさん同席のもと行われた今回のインタビュー。前編後編にわけてお届けします!

全米デビューはタナボタ!? 歌唱指導用のサンプルが著名プロデューサーの目に留まりオファー

– Q:全米デビュー、おめでとうございます。そのデビューシングル「Ligh It Up!」がどのように誕生したのか、まず教えてください。

最初はインドの男性トップアイドルが歌う予定だったんです。インドでコンサートをやれば2、3万人軽く集まるくらい人気の高かった彼のアメリカ進出のための曲として作ったんです。3年ぐらい前のことかな。ところが彼にワーキングビザが下りなかったために、キャンセルになってしまった。

次にメキシコの歌手が歌うことになったのだけれど、やっぱりアメリカの就労ビザが取れなかった。そのあとで、アメリカの人気グループと女優さんがデュエットする話になったんです。ところが、歌い方があまりにもひどかったので、「こんなふうに歌ってみてください」と、僕の歌唱サンプルを出しました。

するとプロデューサーが「お前が歌わないか?」と言ってきました。さらに、また別のプロデューサーが「いい感じなので、君が歌って出さないか」とオファーしてきた。アメリカでそれなりに有名なプロデューサーが2人もいいと思ってくれたわけです。「年齢は70だけど、いいの?」って聞いたら「全然かまいません。とにかく出しましょう」となってね。僕がいちばん驚いています(笑)。

実際こうやって最近取材に来ていただいたりして感じるのは、この曲はそういう(自身が全米デビューする)ためにあったのかなということですね。

英会話は自己流。でも歌の発音はperfect!

芹澤廣明さん:英会話は自己流。でも歌の発音はperfect!

特に歌の場合は、とにかく基本の発音の仕方がしっかりできていないと絶対歌えない。相手はアメリカのプロデューサーですからね。発音が通じないような歌は一切聞いてもらえない。なので、歌う英語に関してはほぼパーフェクト(笑)。

けれども、しゃべりに関しては、ぜんぜんたいしたことがありません。簡単な日常会話を話す程度です。日本ではほとんど使う必要はなくて、英語を話すのは海外に行ったときだけ。それも自己流ですからね。しばらく使っていないと、ついつい考えながら話してしまう。「この言い回しで正しいのだろうか?」とか。

英語との出会いは、いわゆる日本の英語教育を受けてきたクチです。英文を読んで和訳するだけ。とうてい身につかない。無理です、あれをやったからってしゃべれません!

映画1本のセリフを全部書き出し、丸ごと暗記&役者のしゃべりを完コピ!

– Q:50歳で英語学習のやり直しを一から始めたそうですね。どんな勉強法でしたか?

映画のビデオを見てセリフを丸覚えしました。いちばん簡単でてっとり早い方法だと思ったんです。セリフを1つ1つ書き出して、覚えていきました。そして映像を繰り返し見て、役者と同じようにしゃべるというのをやり続けて。 映画を1本見て丸々セリフを覚えるのに1年ぐらいかかったんじゃないかな。今はもうほとんど覚えていませんが。

とにかくまず、セリフを書き出すことが大事。書かないと発音の仕方がわからないから。映画のセリフを丸覚えして、自分でも聞こえるままにセリフを口にする学習をずっと続けました。これで歌の発音も、おそらくよくなったと思うんです。

とにかく、20年前に始めた英語学習は完全な独学。人に習うのが嫌いなもので。人に指図されるのがいちばん嫌いなんです(笑)。

でも、今振り返ってみても、いちばんがんばって学習していた気がします。朝、昼、晩と、毎日お経を読むような感じでやっていました。やるとなるとしつこい性格なんです。

「スパイダーマン」から「インサイダー」に“乗り換えた”理由

Touchstone Pictures.

– Q:丸暗記した映画のタイトルは?

アル・パチーノが主演の「インサイダー」。特に彼のファンだとか作品に惚れただとかいうのではありません。当時公開された新しめの映画の中で、もっとも難解な作品にしようと思って選びました。

実は「インサイダー」の前に「スパイダーマン」のセリフを丸覚えしようとしたんです。王道のアクション活劇で面白おかしく英語を覚えるかなという考えでしたが、軽いセリフばかり。こんなバカっぽい表現ばかり覚えてもしょうがないってことで、途中で「インサイダー」に鞍替えしました。

「インサイダー」を丸覚えした翌年だったかな、1週間ほど訪れたデンマークでは、ずっと英語をしゃべり続ける生活ができたんです。自分でも不思議な感覚だったな。ああやって覚えると話せるんだと実感した瞬間でした。

アメリカ進出を決めた3つの事柄

― Q:海外進出を考えたきっかけは?

端的に言えば市場です。 アメリカで音楽を作れれば規模が大きい。日本の約5倍かな。

自分で言うのも何ですが、日本では相当売れましたから。 アジアでも僕の歌を知らない人はほとんどいないと思います。中国でも香港でも知られている。(楽曲提供をしたこともある)香港の往年のスター歌手、アラン・タンの広東語だったかな? その歌(の影響)もあったりして。

アメリカでやりたいと思ったのは2つ3つ、理由があります。アメリカの音楽を聞いて育ったから彼の地に打って出たかった。そして、アメリカの市場のほうが大きいこと。最終的には、生きていく希望のためでもあります。

まあ、もうお金儲けはしましたから。「じゃあ、それだけでいいのか?」となるじゃないですか。僕はダメだと思う。やりたいことが自分の心のどこかに残ってないと面白くない。

日本ではやりつくしたというよりは、あれ以上の曲は作れない。チェッカーズやタッチなどのアニメの音楽にしても、あれ以上のものはもう無理という気持ちがどこかでありますね。

日本で「自然と英語を身につける」のは無理!

芹澤廣明さん:日本で「自然と英語を身につける」のは無理!

 
– Q:そして、海外を見据えたときに英語が必要になったと?

そうです。英語に関して今日は何を話そうかなと思っていたんですが、「英語は必要に駆られて勉強すればできるようになります」というのは伝えたいことです。勉強はずいぶんやりました。

勉強しない人は英語圏で暮らせばいいよね。そうしたら自然に覚えるから。アメリカにいて現地の人と一緒に生活していれば、みんな英語しゃべるでしょ?

けれども、日本人が日本にいたら、日本語を使うだけで今のところ普通に生活できちゃう。日本の環境では、がむしゃらに勉強しないと 英語はできるようになりません。

僕も意識して英語を使うようにしないと忘れてしまう環境にあります。5年しゃべらないとつらいんじゃないかなぁ。単語やスペルは覚えていても、意味がわからなくてすっと使いこなせない。「あれ、なんだっけ?」となってしまう気がします。

– Q:先生についてのレッスンを受けたことは?

やりましたよ。10年ぐらい前から最近までずっと週2回、自宅に先生に来てもらってプライベートレッスンを受けていました。 イギリス人の若い先生と、ちょっと年がいった先生を交互にね。一度のレッスンはだいたい1時間半。教材は一切なくて、そのとき僕が面白がったり興味があったりすることについて、とにかくしゃべるだけでした。ほぼ音楽の話でしたね。

マネージメントも驚く英語力

気おくれという言葉は芹澤の辞書になし!?

– Q:(アレクサンダーさんに)そばでご覧になって芹澤さんの英語力の進歩は?

(アレクサンダー:感じましたね。特にびっくりしたのがデンマークに行ったとき。英語でもう何の不自由もなかった。お互い第二外国語である英語を使ってコミュニケーションしていたわけですが、シンプルな英語ながら意志の疎通が十分できていました。)

– Q:外国人と話すときに気おくれしてしまってうまく話せないという日本人が多くいますが、芹澤さんは?

ロンドンで2カ月ほど暮らしたときも、イギリス人ではない人と話す機会も多くて、何言っているのかわからないことも多々ありました。そんなところで生活していたので、「何しゃべってもいい」「何言ってもそれなりに通じちゃう」というふうに思えた。向こうが理解しているどうかは微妙だけれども……。だから、気おくれとか、間違えたら、伝わんなかったらどうしようといった感覚はないですね。

ただ、文法をきちっと勉強することはしていないので、そこが欠点と言えば欠点。

けれども、海外に行けば何とかなるというのは確か。日本人でかたまらずに現地に行って現地の人と英語で話していれば誰でも覚える。日本はどうしても日常では使わない。だから、頭の中が英語にならない。さっきも言ったように、自分で努力して、英語にみっちり触れる時間を毎日ひねり出さなければならないんです。

最初の交渉が肝心なアメリカの音楽ビジネス

歌がうまいのは必要最低限の条件!

芹澤廣明さん:歌がうまいのは必要最低限の条件!

 
– Q:アメリカと音楽の仕事をするようになって、ビジネスのやり方の違いなどで驚いたことは?

アメリカ人はみんな図々しい(笑)。言いたいことだけ言うし、欲が深い。自分たちの希望をガンガン言ってくる。だから全然話がまとまらない。たとえば、全部権利よこせとか。

アメリカは日本の5倍くらいの市場があります。売れると1千万枚くらいいくんです。その取り分を最初に決めるわけです。そこが肝心。彼らはそれを知っている。数ポイント違うだけで、取り分がまったく変わってくるんです。

最初が大変。そこはアレクサンダーさんがいろいろやってくれるからすごく助かる。というか、僕にはできない。

– Q:すんなり譲歩しないといった駆け引きがあると?

(アレクサンダー:まあ、交渉ごとですからね。だだ、こちらの言い分だけを押し付けても仕方がないので、お互いがウィンウィンの関係をどう作るかというところ。)

まあ、歌が下手ではダメだね。相当なレベルじゃないと闘えない。アメリカでシングル発売できたのは、僕にとってはとってもうれしいこと。なかなかできない。70になってアメリカでシングル出したような人は、今までいないんじゃないかな? だから、みんな面白がって取材に来るわけでしょ?

(アレクサンダー:今、“世界発売”“全米発売”は実は簡単なんですよ。インターネットにアップすれば全世界に配信ができますから。ただ先生の場合は、盤としてCDシングルと、CDコンピレーション・アルバムが発売されています。これはやはり大きな違い。本当の意味での全米発売なんです。

アメリカはCDがなくなったと言われても、スーパーマーケットや書店などにはCDが置かれている。ですから、配信と版の発売の両方があって初めて正式な全米発売と言えると思います。)

後編に続く

前編総括コメント

ご自宅で出迎えてくれた芹澤さんは一見強面。取材スタッフ全員に一瞬緊張が走りましたが、それもつかの間のこと。記者の失礼な質問にも笑顔で答えてくれる、とびきり素敵な方でした。後編でも英語に関する事柄だけでなく、音楽業界や仕事、人生にまつわる“深イイ話”などが飛び出しますので、Please check it out!

<プロフィール>
芹澤廣明
Hiroaki Serizawa
1948年生まれ。神奈川県出身。高校時代にバンドを組み始め、1967年にグループ・サウンズ・バンド「ザ・バロン」を結成、ギターを担当。主に尾藤イサオのバックバンドを務める。1969年にNHK総合テレビの音楽番組「ステージ101」のオーディションにメンバー全員が合格、同番組の初期メンバーとなる。その後バンドメンバーの脱退があり、残ったメンバーと「ワカ&ヒロ」を結成。いくつかのシングルとアルバムをリリースしたのち、1975年に解散。「ヤング101」の元同僚のユニット「ジム・ロック・シンガーズ」への参加を経て、チェッカーズの作曲家兼プロデューサーとして数々のヒット曲を世に送り出す。TVアニメ番組「タッチ」の主題歌も大ヒットを記録。数々の著名アーティストに多くの楽曲を提供した作曲家として、広く知られる。

<アルバム紹介>

芹澤廣明HIROAKI SERIZAWA ANIME GOLDEN HISTORY

PONY CANYON INC.
発売元:ポニーキャニオン
¥3,456(税込)
チェッカーズをはじめ、1980年代のJ-POPシーンを代表する多数のヒット曲で知られる作曲家、芹澤廣明の作曲家活動35周年記念企画として6月20日にリリース。人気アニメのための作家活動に特化した初の2枚組コンピレーション・アルバム。「タッチ」「ナイン」「陽あたり良好!」のあだち充3作品の全主題歌をはじめ、「キン肉マン」「ハイスクール!奇面組」「ガンダムZZ」など、全35曲が収録されている。6月6日に全米発売された、自身が英語で歌唱する最新楽曲「Light It Up!」を、ボーナストラックとして追加収録。

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