英語が一切しゃべれなかった小学6年生のとき、アメリカ・ペンシルバニア州の少年合唱団の一員として活動するために1年間留学したというユニークな経験を持つ戸塚弘太さん。多感な時期に放り込まれた未知の環境は毎日がサバイバルな一方、型にはまることなく、ゴーイングマイウェイを貫く 現在の戸塚さんのベースにもなったという。
インターナショナルスクール、ハワイでの大学生活、アメリカでの役者時代などを経て、初心者向けの英会話カフェ、スクールALPHAを東京・渋谷にオープンさせた戸塚さん。教科書や参考書は一切使わず、「自分の言葉で何とか伝える力」を利用客・生徒に身に着けてもらうため工夫をこらしているという彼に、英語にまつわる話を幅広く聞いた。
英語を全然知らない小6でアメリカに1年留学!?
Q:小学校6年生のときにアメリカの合唱団に参加するために1年間留学したと聞きました。そのいきさつを聞かせてください。
鎌倉で育ったんですが、もともと地元の教会の少年合唱団の一員だったんです。その合唱団がアメリカの少年合唱団と交流があって、それで1年間の留学をしないかという話になりました。当時は単身留学が珍しくて、鎌倉やアメリカの地域新聞に記事で取り上げられたりもしたんですよ。
向こうではコンサートツアーで全米を回る旅があって、学校の勉強は与えられた宿題を全米横断するバスの中でやる感じでした。ツアーがないときは、ホストファミリーの家にステイしながら、普通にアメリカの公立の小学校に通っていました。
Q:行く前に英語の特訓をしたのですか?
いいえ、まったく。ゼロの状態で現地に到着しました。もちろん合唱団で歌う歌は全部英語で、「サウンドオブミュージック」など、有名なミュージカル作品からのナンバーをハイライトで歌うことが多かったですね。
Q:さぞかし大変だったのでは?
うーん、言葉ができなくて苦労したり悩んだりしたりという記憶はないんです。それより、最初の数カ月はホームシックにかかって辛かったです。
Q:とはいっても、いきなり英語の環境に放りこまれ、まったく単語や基礎文法の知識もない中、どうやってコミュニケーションをとったんですか?
そもそも僕は、日本の小学校時代から勉強と名のつくものは大嫌いだったんです。小1から通信簿には△ばかりのおバカさんで(笑)。だから心配でたまらなかったに違いない父からは、「単語帳を作るんだぞ」「英語の本を読め」と言われたんですが、一切やりませんでした。
ただ、ひたすら外で遊んでいたので、最初はジェスチャーや表情、伝言ゲーム的に絵に描いたりして、とりあえずのコミュニケーションをとっていました。当然ミスコミニュケーションもたくさん起こりました。
「ピンチ!」と言ったらつねられ、浮気性まで疑われ!? トホホな誤解
Q:どんなミスコミュニケーションですか?
日本ではピンチって、ちょっと状況が悪い、ヤバイっていうときに使いますよね。僕はその日本語的な「危ない!」という意味で友達の前でpinchという単語を使ったんです。そしたら3人から同時につねられて目テンになっちゃって……。「つねる」って意味があるなんて知りませんでしたから。
あと、学校のランチはいつもカフェテリアで食べるんですけど、「コウタ、今日は一緒にランチしよう」ってみんな言ってくるんですね。その誘い方がI’ll sit by you.(隣に座るね)というものだったんです。「君の隣を予約」みたいな感じの一言ですね。でも僕は、I’ll sit by you.は「一緒に食べよう」という意味だと思っていたので、10人ぐらいにOKしちゃってた。「コウタ、オレ/私と座るって言ったじゃん!」みたいな状況になってしまって。無茶苦茶気の多い、浮気性の男みたいな感じでしたね(笑)。
Q:人気者だったんですね〜。ほかに留学した当初に印象深かったことは?
家ではテレビをよく見ました。最初によく見たのは、いちばん理解するのが簡単だった「Tom and Jerry(トムとジェリー)」でした。台詞がないし、展開も同じなので。その次に当時アメリカで大人気だった「The Simpsons(ザ・シンプソンズ)」も見るようになって。主人公一家のシンプソン家の長男のバートは、学校でも悪さばかりして、勉強もできない悪ガキ落第生キャラ。親近感を持ったバートのセリフを覚えて、そのまま学校で使っていました。
Q:どんなセリフですか?
Don’t have a cow, man!とか。怒られたとき「そんなにがみがみ怒るなよ!」的に使う一言ですね。
Q: 先生に怒られませんでしたか?
まったく大丈夫でした。担任がすごくいい先生で、いつも優しく見守ってくれていましたね。普通の授業を受けてもわからないからと、何をしてもいいと言われてました。
教室には基本僕はいなくてよくて、毎日僕の会話相手兼付き添いに指名されたクラスメイト1人と自由行動が許されていたんです。構内をぶらついたり、外に出ることもありました。ほかのクラスに突然押し掛けたり、近所の大人に話しかけたりと、好き勝手していました 。毎日英語に囲まれて、日本ではあり得ないほど恵まれた学習環境だったのかもしれません。
きれいに話そうとするな! 「山に柴刈りに」をどう英訳する!?
Q:日本は今「英語をがんばらなければ」という気運がかなり高まっています。でも大人の英語学習としては、「TOEICテストの勉強をして、スコアプップを目指す」のが主流。戸塚さんのような「耳から文法なしで」という学び方とは対極にあると言えます。そんな日本の英語教育の現状をどう思いますか?
まず、最初に言いたいのは、英語はきれいだから通じるものではない、ということです。
Q:きれいというのは、発音のことですか?
文法がという意味ですね。aやtheが正しくきちんと入っているから伝わりやすい、難しい単語や言い回しを使うから高尚に見られることはないと思うんです。ですから、この英会話カフェ・スクールでも細かい英語の正しさにはとらわれずに、「自分の意見を、自分の言葉で言ってみよう」を目標にしています。
「自分の意見を自分の言葉で」というのが、どういうことなのかを生徒さんに説明するのに、僕はいつも「桃太郎」を使っているんです。物語が始まる「おじいさんは山へ柴刈りに」の部分を英語にしてみてください、とまずお願いするんです。柴刈りというのは柴刈りとは違って、たき火に適した薪を拾いにいくことなので「おじいさんは山に薪を拾いにいきました」と英語で言ってみてくださいと伝えるんですね。
すると、みなさんだいたい、Old man…goes to mountain to collect…くらいまでは、何とか言えるんです。でもほとんどの方が、「薪」という単語でつっかかってしまう。そこで次に「じゃあ、あなたは山小屋で寒くて凍えている状況です。やっと見つけたお店で薪をすぐに買わないと凍え死んでしまいます。単語がわからなくても、お店の人に薪がほしいことを何とか訴えてください。制限時間は30秒です」と、さらにお題を出すんです。
すると、みなさん必死に単語を考えて並べていくんです。tree, tree, cut, cut, … wood.
こちらが、Oh are you making a chair?(ああ、椅子を作るんですか?)
すると、 NO, no. と言ってくる。
そこでA table? (テーブルですか?)と問いかけると、
No, no. Fire.と返してくる。
それで、Oh, firewood. (あ、薪ですか)
と僕が答えるといった問答になります。
生徒さんは、やっと最後に薪という単語はfirewoodだと初めて知るんですが、大切なのはそこじゃない。firewoodなんて単語、この先一生使わない可能性も高いですから(笑)。大切なのは、firewoodという単語を導き出すための過程なんです。日本語にぴったりと当てはまる英単語を絶対に探し出して話そうとすると、わからない単語が出てきたときに、まったく話せなくなってしまう。
そもそも、暗記して覚えようと努力しても100%覚えることはほぼ不可能です。「何だっけ、あの単語?」で会話がストップしてしまうよりも、遠回りでもいいから、どうにか相手に説明できる力を培う。相手に伝えたいことが何かが明確に頭の中にあれば、自分が持っているボキャブラリーで何とかなる。薪=firewoodと知らなくても、wood for fireとかで用が足せるようになれば、もう単語でつっかかることはなくなります。
泣いて空腹を知らせる赤ちゃんと同じ感覚で英語のコミュニケーションを開始せよ!
Q:なるほど。単語がわからなくても、言い換えて伝えることのできる力をつけよう、ということですね。
その通りです。これは、特に○○メソッドといった名前は特になくて、僕がアメリカに小6で行ったときにやっていたことなんです。とにかく相手に伝えたい、伝えなければならないと思ったら、どんなにつたない言葉でも理解してもらうまであきらめずに手を変え品を変え、伝え続ける。じゃないと、下痢の薬がもらえないわけですから。
単語が出てこなければ、音でも絵でもいい。とにかく意思の疎通が果たせればOKなんです。赤ちゃんが泣いて空腹を知らせるのと同じレベルでスタートしていいんです。それが最終的にI’m hungry. Can I have some food?(お腹が空いているんです。何か食べ物をもらえますか?)まで到達できれば、もう十分。大人だからTOEICでビジネス英語から始めるべきということは、一切ないと思います。子供も大人も「伝えたいことを何とか表現する」という観点からすれば、立ち位置はまったく一緒なんです。
だからALPHAでは、生徒さんに答えをすぐに教えることをせずに、しばらくほったらかしにするんです。自分で言葉を探してもらうためにですね。この過程がものすごく大事です。これをスキップしてしまうと、先生に常に頼らないと会話が成り立たなくなってしまう。辞書を肌身離さず持っているから1人でも大丈夫と言う人もいるでしょう。確かに、その場では会話ができるかもしれないけど、単語は覚えられないでしょう。結局また同じことが起こる。僕が単語帳を作ってひたすら暗記するのをオススメしない理由もここにあります。必要のない単語をやみくもに覚えても定着しないし、言い換えの訓練ができなくなるだけですから。
参考書の穴埋め問題に正解しただけでは不十分!
Q:単語帳は一切不要ということですか?
いいえ。自分が「あ、絶対使えるな」「必要だ」「いいな」と思った単語、フレーズだけを、ノートに書き込めばいいんです。自分が必要なオリジナルの単語帳、フレーズ帳を、自分の手で作っていけばいいんです。
市販の参考書によくある、穴埋めがいっぱいのものはダメ。2、3ページかけて新しい表現を覚えて、レビューテストの穴埋めができる。すると、それなりに正解は得られる。これで「もう覚えた」と錯覚する人が多いんです。でも、穴埋めで正解しただけでは、実際に自分が使えるようにはまだなっていないと思うんです。参考書だけだと、実際の会話で応用して使えるところまではなかなか到達できない。だから、ALPHAではテキストは使わずに、トピックを選んで生徒と対話をする方式を取っているんです。
会話のトピックは恋バナなど取っ付きやすい内容で
Q:レッスンのトピックはどんなものですか?
うちは若い生徒さんが多いんですね。20代がいちばん多く、女性が8割を占めます。ワーホリ(ワーキングホリデー)や留学に行く前に、集中的に通う人も多い。そんな人たちが興味を持てないような固いビジネスニュースなどは題材にあまり取り上げませんね。テキストや決まったことをやるのが嫌いで通ってきている人も多いんです。
ですので、初恋の彼氏、彼女とはどんなふうに別れたかとか、ある意味他愛もない、間口が広いテーマにすることが多いです。自分から振ったとか、相手に振られたとか、詳細に語ろうとしてくれますよ(笑)。初心者であっても、He said goodbye. などとまず教えてくれる。途中で、相手に振られた場合は、He broke up with me.か He dumped me.がテッパン表現というのも紹介します。「レッスンでいきなり恋愛履歴?」となる人もいるので、「プライベートのことですから話を脚色してもらっても構いません」と言っています。
英語が話せる人ほど言い間違いも多い!?
Q:生徒さんの進歩はどういったときに感じますか? TOEICスコア○点アップのように成果が数値化できるものに比べて、実感が持ちづらいと思うのですが?
そうですね……、生徒さんの「口数の多さと言い間違えの多さ」が目安になります。口数が増えれば、間違える数も増えますから、言い間違えも増えていかなきゃならないんです。今までYes.だけで終わっていたのが、Yes, because…と理由付けまでするわけですから。どんな初心者であっても、レッスンではイエス、ノーだけで終わるは禁止しているんです。なぜかまで答えてもらう。だから間違えが多い。ミスコミュニケーションが起こらない程度であれば、間違えてもOKと常にお伝えしています。
スカイプ英会話で毎日英語を使う環境を持とう!
Q:小さな間違いを気にせず、積極的に話すよう背中を教えてくれる、勇気がわくレッスンですね。生徒さんやカフェ利用客にALPHA以外での英語学習についてどんなアドバイスをしていますか?
レアジョブ英会話とは言わないですが、スカイプ英会話レッスンはすごくオススメしています。1週間に1度ここに来てどんなにたくさん話したとしても……、たとえばレッスンの後にカフェも利用して計6、7時間話しても、あとの6日何もしなければ、また振り出しに戻ってしまう。英語を話すのはスポーツするのと似ていて、10分、20分でも構わないから毎日話すことが大切。英語に触れる時間が毎日あったほうがいいので、その時間を確保する意味で、スカイプの英会話レッスンは打ってつけです。
出張英会話カフェとCan I help you?運動
Q:うまく話そうなどと思わないで、とにかくたくさん話すことが秘訣なのかもしれないですね。今後はどんなチャレンジを考えていますか?
英会話カフェを、会社の打ち合わせルームや食堂に持って行く、出張カフェ的なサービスを始めたんです。これをうまく軌道に乗せたいですね。社員は10分でも数時間でも好きな時間に参加できて、レッスンといったお固い形式ではなく、もっとフランクなやり取りができる場を提供できればと思っています。会社側から見ても低料金でできるのでメリットも大きいはずです。たとえば、ドイツに行く機会が多い製薬会社なら、カフェの先生としてドイツ人を派遣するといったカスタマイズもできます。ドイツ語も英語もできるし、ドイツ文化もわかるといった先生を用意することも可能なんです。
Q:そのほかに企画していることは?
ALPHAとは別なんですが、Can I help you?というプロジェクトもスタートさせています。妊婦さんであることを知らせるバッチのように、Can I help you?のバッジを広めようとしているんです。2020年の東京五輪に向けて、「このバッジを着けている人は、英語で話しかけても大丈夫。質問しても答えてもらえますよ」というのが外国人に一目でわかるようにするのが狙いです。
もともと日本人は助けてあげたい気持ちはあるのに、なかなか自分からは声をかけづらいと感じている人が多い。そんな人たちに「恥ずかしがらずに声をかけて」と言ってもすぐにはできない。だから、バッチを着けていることで、「尋ねてもらってOKですよ」という状態にする意義は大きいと思うんですよね。
Q:Can I help you?バッチいいですね! 私たちも欲しいです!
でしょ!(笑) 今のところ、話す意思があれば、ちゃんと話せなくてもバッジは着用できるようにしようと考えています。より多くの日本人が海外からのゲストを英語でおもてなしできるようになったら素敵ですよね!
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