英語の「モチベーション」を科学しよう

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「英語のモチベーションが下がった」という時、誰にでもありますよね。勉強しても成績が上がらない、上手く話せない、そんなときはやる気も無くなりがち。一方で、ふとしたことでモチベーションが上がることもあります。モチベーションは乱高下するもので、英語の先生ですら、しょっちゅう上がったり下がったりしています。もしモチベーションが高いままでいられれば、こんなに素晴らしいことはありませんよね。

言語習得の科学では、モチベーションをどう考えているのでしょうか?今回は、語学習得の研究から、モチベーションの正体と維持の秘訣をさぐります。

モチベーションとは「英語へのやる気」のこと

「モチベ下がった」といういい方は日常的によく使いますよね。「モチベーション」ということばはとても身近なので意外に思われるかもしれませんが、実はれっきとした専門用語です。

「motivation(モチベーション)」は、心理学や第二言語習得論の専門用語としてよく使われています。その場合には、「動機づけ」という日本語訳をすることが多いです。なにかをする動機と、やる気の強さのことを動機づけというのですね。「モチベ下がった」と言ったときには、「勉強する動機がわからなくなり、結果的にやる気がなくなった」状態だと考えられるでしょう。

モチベーションが下がるとどうなるの?

実は、英語の勉強でもモチベーションは大きな影響を持っています。英語の勉強が上手く行くか行かないか、そのほとんどはモチベーションが高いかどうかで決まってしまうのではないか?と主張している論文もあります。

例えば、Masgoret & Gardner(2003)の研究では、勉強する人の性質が、どのように言語のマスターと関係するかが調べられています。論文の筆者は、

1.開放的で、外国語を使う文化に親しみを持っているかどうか

2.授業や先生など、自分の勉強する環境に満足しているかどうか

3.モチベーションが高く、目標をもって積極的に勉強するかどうか

というポイントから、語学研究の結果を調べなおしました。その結果、③のモチベーションは、他の2つにくらべてはるかに重要だということがわかったのです。

言語教育の世界では、「モチベーションが大事だ」ということは確実だと言われているんです。

英語大好き!:うちからのモチベーション

モチベーションには大きく分けて「内側」と「外側」のモチベーションがあります。もっと専門的には「統合的モチベーション」「道具的モチベーション」という言い方もされることがあります。

「内側からのモチベーション」とは、誰に言われなくとも英語を勉強したい! というモチベーションのことです。英語が大好きで、それ自体が勉強の理由になっているという状態ですね。「アメリカ人・イギリス人などネイティブの文化が好きで、その『一部』になりたい」という気持ちのようにも見えます。そのため、「統合的モチベーション」とも呼ばれるのです。

好きは最高の原動力!

好きこそものの上手なれということばがある通り、内側にモチベーションを持っている人は強いです。多少のことでは勉強をやめませんし、英語がきらいになることもありません。以前は、このタイプの人ほど語学のマスターが早いと言われていました。

お金持ちになりたい!:外からのモチベーション

もう1つは、「外側」にモチベーションがある人です。自分は英語が好きではないけれど、勉強したら褒められるとか、カッコいいからといった理由で英語を学んでいる人は、このタイプに入ります。

英語を勉強している人の中には、受験のために・仕事のために勉強している人も多いはずです。英語を進学や仕事の「道具」として使っているので、「道具的モチベーション」ということもあります。好きではないけど、やらなきゃいけないから勉強している、という場合ですね。

侮れない「評価されたい」の力

以前は、外側にモチベーションがある人は語学が上達しにくいと言われていました。英語が好きな人にはかなわないというイメージがあったからです。

ですが、最近の研究では、このタイプの人でも上達は十分にできることがわかっています。「評価されたい」「やらなきゃいけない」の力は、思ったよりも強いのです。

モチベーションはいつ下がる?

モチベーションはいつ下がってしまうのでしょうか?林日出男『動機づけ視点で見る日本人の英語学習』では、日本の学生が中→高→大と英語を学ぶ中で、モチベーションがどう変化していくのかが研究されています。

モチベーションが低い学生の特徴として、大きく分けると2パターンが挙げられています。「中1の出だしでつまずいてしまい、そのまま取り返せなくなってしまった」人たちと、「中1のころは新鮮で面白かったけれど、高校に上がるとむずかしくなって、受験のプレッシャーもあり嫌いになってしまった」人たちにわけられるようです。

その一方で、「最初は英語が嫌いだったけれど、だんだんと自分の中でモチベーションがわいてきた」という学生もいることが指摘されました。

上達しない時

モチベーションが下がってしまうのは、やはり「挫折」してしまったときです。勉強したのにうまくいかない。資格試験で失敗した……。こんなとき、モチベーションが下がってしまいます。

先ほど挙げた、「中1のときは楽しかったけど、高校でつまずいてしまった」というのも、これにあたるでしょう。

環境が悪い時

先生が面白くない、上達しても褒めてくれる人がいないなど、まわりの環境が悪い時にも、モチベーションが下がってしまいます。挫折しても、フォローしてくれる人がいればやる気が続きますよね。そういう環境がないと、モチベーションが下がりっぱなしになってしまうのです。

学ぶ必要がなくなった時

高校生のデータを見ると、受験が終わった瞬間にモチベーションが大きく下がる人が多いようです。やらされていた勉強は、テストが終わればあっという間にやめてしまうものですよね。大学に入ってからが英語を使う本番なのですが、きびしい受験の後は燃え尽きてしまうのも仕方ないと思います。

モチベーションアップの秘訣は「自分の理由を見つける」

モチベーションはどうやったら上がるのでしょうか?世界中の研究者がこの問題に立ち向かっています。かんたんには言えませんが、多く言われているのは「自分の中に勉強する理由を見つける」ことです。

心理学では「内在化」といういい方があります。他人にやらされていることでも、「自分の中に」面白さをみつけさえすれば、楽しく続けられるという意味です。英語は基本的には「やらされている」ものですが、英語を勉強する理由を見つけられれば長続きします。

先ほどの『動機づけ視点で見る日本人の英語学習』では、留学無しで英語が上達した2人の学生が研究されています。

成功事例1:好きな洋楽の歌詞を読んだり書いたりする

Aさんは、「無理をするのが嫌いだから、洋楽の歌詞を聴いて適当に書きとったり歌ったりするだけ」を繰り返しました。一見すると勉強ではないように見えますが、これを続けることが「自分の勉強する理由」になり、結果として英語が上達しています。「内側からのモチベーション」での成功例です。

成功事例2:試験を受験する

Bさんは、高校受験、大学受験、TOEFL受験と、ずっとテストのために勉強してきました。英語を使う機会は少なくても、テストでいい点を取れば達成感があります。「外側からのモチベーション」をキープすることで、Bさんは英語を上達させました。

このように、「内と外」どちらのモチベーションもいい面があるのです。

筆者の個人的な意見ですが、モチベーションが下がったら止めてしまうという選択肢もあります。やりたくないのにやっていても嫌になるばかりですから、いったん止めて頭をリセットするのが良いです。

「下を見る」のも効果的です。「下」というのは過去の自分のことで、昔の自分の作文やテスト結果を見てから、今の自分を見てみると、客観的にのびていることがわかります。語学力はそうそう後ろに下がることはないので、スランプの時でもたいていちょっとは伸びているのです。

まとめ

モチベーションは永遠の課題です。特に英語を使う機会の少ない私たちにとっては、モチベーションをキープすることはなかなか大変です。

それでも「うちから」「外から」のモチベーションを総動員すれば、英語を学ぶ意味も見えてきます。あきらめないで、自分の道を探しましょう。

参照文献
A.-M.Masgoret, R.C.Gardner. (2003). Attidudes, Motivation, and Second Language Learning: A Meta-Analysis of Studies Conducted by Gardner and Associates. Language Learning(53), 123-163.
林日出男. (2012). 動機づけ視点で見る日本人の英語学習―ー内発的・外発的動機づけを軸に. 金星堂.
廣森友人. (2015). 英語学習のメカニズム. 大修館書店.

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