英語力を高めるには続けることが大切。仕事が忙しい時期、なかなか伸び悩んでしまう時期・・・ 困難や葛藤をかいくぐりながら、努力を継続できるかが鍵となります。
ペンシルベニア大学の心理学者、アンジェラ・ダックワース氏は、「長期的に」努力を継続し、成果を挙げるために必要な力を自身の研究で明らかにしました。その力とは、「GRIT(グリット)」 IQよりも高めやすく、誰でも身につけることが可能だと言います。
グリットとは果たしてどのような力なのか。そして、どうすれば磨くことができるのでしょうか。英語学習が続かない人にとって「ヒント」になる心理学的アプローチを、英文を交えてご紹介します!
<プロフィール>
ハーバード大学卒。コンサルタント会社のマッキンゼー、ニューヨークの公立中学校の教師を経て、ペンシルベニア大学で博士号を取得。現在同大学の心理学者
グリット=情熱と忍耐を「長期的に」持ち続ける力
グリットとは何かーーダックワース氏はHCEO(Human Capital and Economic Opportunity Global Working Group)のインタビューで次のように述べています。
“Grit is passion and perseverance for very long term goals. It’s a disposition to work on things for a long time. For children it could be month or years, for adults we are talking about years and decades with consistent direction and with great effort.”
「グリットとは、長期的な目標のために情熱と忍耐を持ち続ける力のこと。子どもにとっては数ヶ月~数年、大人にとっては数年~数十年と、長期にわたって自分が進むべき方向を一貫させ、持続的に努力できる状態を指します」
“The distinction I’d like to make with is closely related trait and that is self control stamina for the long term. Self control is the ability in the moment when there are distractions and temptation nearby you have the ability to resist to those.”
「グリットはセルフ・コントロールする力と似ていますが、明確な違いがあります。それは、『長期的か否か』。セルフ・コントロールとは今その瞬間、他の誘惑に負けたり注意散漫にならないよう集中力を保つ能力。グリットは、長期的なスパンで集中力を持続させる力と言えます」
ダックワース氏がグリットの概念を着想したきっかけは、教師時代。必ずしもIQの高い生徒が、卒業まで継続的に良い成績を収め続けているわけではないと気づいたのだそう。むしろ、IQが高い生徒でも忍耐力に欠けていれば、途中で飽きてしまい、努力を継続できるだけのモチベーションを保てない場合もあるといいます。
グリットの力は誰でも身につく、IQよりも高めやすい
グリット、つまり情熱と忍耐を長期的に持ち続ける力の重要性は理解できるけど、自分には難しいと感じる人もいるでしょう。しかしグリットの力はIQよりも高めやすいのだそう。
”One of the most important findings in social science over the past several decades is that traits like grit or intelligence both represent some amount of stability as well as change over time. You are unlikely to wake up in the morning and discover an entirely different human being. On the other hand, you also know that people do change overtime.”
「この数十年で社会科学の分野で解明された最も重要なことの一つ、それはグリットや知性など人の特性は、確かに劇的には変えらないけれども、まったく変えられないわけでもないということです。例えば、朝起きてあなたが一晩にして別人のように変わることはないでしょう。一方で、あなたにとって身近な人の性格が少し変わったと感じることはあるはずです」
<英語ワンポイント①>
one of the most〜=「最も〜の一つ」
学校の英語の授業で習ったのを覚えている人も多いのでは。ネイティブスピーカーにもよく使われる表現です。
(用例)
”I was the most happiest man in the world today!”
(今日、自分は世界一幸せだと思うくらい良いことがあったんだ!)
”Oh my god, you’re like one of unluckiest guys right now, I’m so sorry for you.”
(信じられない、あなたは今最も不運な人ね…。気にかけているわ)
ダックワース氏は自身の研究で、グリットは年月を経ると変化していくことを明らかにしています。現時点でグリットが低かったとしても、数年後どうなるかは未知数です。
”So when we take samples of adults who range from the age of 20 to 80 we find that the older will be grittier. It can be said that It’s possible that has a maturational effect that grit does grow in a lifespan for probably environmental and experimental reasons.”
「さらに、歳を取るにつれてグリットの力が高まる可能性があります。20歳から80歳までの被験者を対象にした実験では、年配の世代のほうがグリットの能力が高いことが判明しました。人びとは生涯でさまざまな環境的、経験的な要因を経て成熟していくのです」
グリッティーな人になるために必要な4つのこと
ダックワース氏は数多くの著名人を調査し研究を進めています。そして、燃え尽きずに努力し続けられる「グリッティーな人」に備わる要素を突き止めました。必要なのは次の4つの要素。ビジネスやスポーツ、学業などさまざま分野に応用できると言います。
1. Develop a Fascination 〜没頭できることを見つける
ダックワース氏は、今まで出会った成功者の中で、自分が取り組んでいることが嫌いな人はいなかったと言います。特筆すべき人として挙げたのが、俳優としてエンターテインメント業界で長きに渡って活躍し続けるウィル・スミス氏。
彼はアメリカのエンターテインメント業界の重鎮とも言える存在ですが、自分に特別な才能があるとは思っていないそう。あるテレビ番組でスターであり続けられる理由を聞かれ、「僕が他の人と違うものを持っているとしたら、ただ一つ。困難の途中で死んでしまうことをおそれていないこと」と話しています。
ウィル・スミス氏が燃え尽きない理由を、ダックワース氏は「自分が極めるべきことはエンターテインメントだとはっきり分かっているから」と分析します。ウィル・スミス氏のように人生を捧げて極めるような目的が見つからなくても、「まだできていないことを挙げ、達成する」ことが、「グリッティーな人」になるための出発点だと話します。
“For example, if you’re swimming and you have a certain time and you decide you’re gonna be one second faster. Now, this is straightforward but if I came up to you after this talk and asked you, “What’s your one thing? How many of you would be able to tell me, “Oh, this is exactly what I’m working on. I’ll tell you that I’ve done this to 45 year olds they don’t have a specific stretch goal.”
「例えば、水泳をしているなら泳ぐ速さを縮めると決意する。一秒速く泳げるようになると決める。これは分かりやすいと思います。しかし、『その一つを何にするの?』と聞かれて、何人が『私はこれ!』と明確に答えられるでしょうか。先に言っておきますが、45歳くらいの中高年の人に聞いても目標を言えない人がほとんどでした」
“I’m asking you when you go off into the world and try to be excellent unless you know in your mind what it is you are working on, you haven’t even gotten started.”
「皆さんに知ってほしいことは、もし自分が何に力を入れるべきかを明確にできていないのであれば、スタート地点に立っていないのと同じことだということです」
<英語ワンポイント②>
straightforward〜=「理解しやすい」
何かの説明を受けたときの返答として使われることが多いです。まっすぐと前という言葉が組み合わさって、「複雑ではない」「難しくない」という意味になります。
(用例)
“No, it’s quite straightforward”
(分かりやすかったので質問はありません)
”It’s straightforward but may I ask a question to make sure?”
(分かりやすかったのですが、念のため一つ質問していいですか?)
2. Have Complete Focus 〜100%集中する
ダックワース氏は、NBA(全米のプロバスケットボールリーグ)のスター選手の行動も研究しています。そのうちの一人、ケビン・グラント氏は、70%の練習時間を一人でこなすそうです。チームスポーツであるバスケットボールの選手でありながら1人で練習する理由は集中力を高めるためです。
“Concentration is the moral of the story. If you want to be better in something you have to fully concentrate.”
「集中することはグリットを高める上で最も重要な教訓だと言えます。もし自分のなすべきことにおいてより良くなりたいと思うなら、集中しきる力が不可欠です」
3. Get Feedbacks 〜フィードバックを集める
努力を継続するには、他者と関わる機会を持つことも欠かせません。自分の成果について客観的なフィードバックをもらうことも大切な要素です。
“Somebody has got to tell you that was too fast that was too slow that was too high that was too low that was too loud that was too soft I don’t like you slides, I can’t see the slides from the back. By the way I’ve gotten that feedback about my talks.”
「誰かにフィードバックをしてもらわなければいけません。私も聴衆の前で話すためにフィードバックをたくさんもらいました。話し方の速度や声の大小、スライドの質や最後尾からも見えるかなどを聞きながら、改善を繰り返してきました」
4. Listen to Feedbacks 〜フィードバックを活かす
フィードバックを集めても、素直に受け取れなければ意味がありません。ダックワース氏自身も、改善の提案を拒否したくなる瞬間があると言います。それでもフィードバックを受け続ける理由はどこにあるのでしょうか。
“You are going to work on one thing to get better at you can’t yet do, 100% focused, get a feedback from someone and have to decide to do something you can’t yet do.
“Then you gotta have the courage to reflect on that. Make adjustments and do the whole thing over. This is where excellence comes from.”今まだできないことを改善すると決め、100%の集中力で挑み、フィードバックを受け、それに対して向き合う勇気を持つ。修正をし、全部をやり直す。そうすることで圧倒的な結果が導かれるのです。
グリットの4要素を「英語学習」に組みこもう
ダックワース氏が挙げたこの4つの要素を、英語学習に当てはめて考えてみましょう。
まず、自分が伸ばしたい力はスピーキングなのか、リスニング、文法なのか。目的を明確にします。世界中の人と交流するために言語を利用したい人ならスピーキング、ネット上で英語を使って発信したいならライティングなど、グリットを発揮できる項目は人によって異なるはずです。また、ビジネスで使いたいのか、友達を作りたいのかによって、学ぶべき英語の種類も変わってきます。
そして、もう一つ重要なのはフィードバックです。学習している言語を話すときは、「間違っている場合はいつでも直して」と伝えてみましょう。恥ずかしいと感じる人は、自分で録音した音声を聴いてみる、あるいは自分が話したい内容を文章にして添削してもらうことも、ダックワース氏の話す「圧倒的な成果」に繋がるはずです。会話をしたり文章を投稿したり、他者からフィードバックを得られる環境に身を置くことが大切です。
長期的に努力を継続し、結果を導くために必要な力、グリット。それを引き出すための4要素を、みなさんもご自身の英語学習法に取り入れてみてはいかがしょうか?
執筆:赤江龍介
編集:岡徳之(Livit)
イラスト: 杉本憲相/Twitter @Kensuke_Blue
【参考書籍】
ダックワース氏・著
『Grit: The Power of Passion and Perseverance』
『やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』(神崎 朗子・訳)
【参考動画】
【Angela Duckworth adderesses students at the 2017 Aspen Challenge Philadelphia】
【GRIT by Angela Duckworth | Animated CORE Message】
Please SHARE this article.
英語を話せるようになりたいなら
学習のプロにみてもらおう
英語を学んできたのに、いざ話そうとなると全く言葉が出てこない、その原因は圧倒的にアウトプット量が不足していることにあります。
英会話の経験量を増やしたいなら断然オンライン英会話がおすすめ。1日25分だけ英語を話す習慣が鍵を握っています。高いお金を払って海外留学する必要はないのです。
無料登録しておくとお得な情報が届きます
今すぐ無料体験する最適な学習サイクルが
レアジョブ英会話ひとつで完結
レアジョブ英会話なら、英会話レッスンはもちろんのこと、「聞いて話す」発話トレーニング「ソロトレ」や一歩一歩英語力を積み上げられるオリジナル教材など、オンライン英会話市場で長年培ってできたコンテンツを豊富に取り揃えています。(追加料金なし/教材無料)苦手を克服したいなら使うべき選りすぐりのコンテンツです。
利用者インタビュー
無料登録~7日以内なら初月半額
今すぐ無料体験する