起業家の顔を持つ俳優マット・デイモンがMIT卒業生に語った「行動を起こす秘訣」とは?

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マット・デイモンはアメリカ・ボストン出身の俳優・脚本家・映画プロデューサー。ジョージ・クルーニー、ブラッド・ピットらと共演した『オーシャンズ11』や、アクション映画『ボーン・アイデンティティー』、続編の『ボーン・アルティメイタム』に出演するなどアメリカを代表する俳優として知られています。

さらに、幼馴染のベン・アフレックと共に脚本を書いて映画化した『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』でアカデミー脚本賞を受賞。脚本家・映画プロデューサーとしても輝かしい功績を残しています。

このように世界を代表する映画人として活躍し、プライベートでは4人の子どもを持つ父親でありながら、実は彼が貧困撲滅のために安全な水を供給する慈善事業「Water.org」にも携わっているのをご存知でしょうか。

Water.orgは水と衛生設備を世界中に届けるNPO。6億5千万人以上の人びとが安全な水にアクセスできていない現状を打開することを目標に掲げています。創業以来、300万人に安全な水を届けた実績を誇ります。

俳優で父親でもあり多忙を極める彼が、ここまで行動を起こせるのはどうしてなのでしょうか。その秘訣を、彼は2016年6月3日にMIT(マサチューセッツ工科大学)で行われた卒業式のスピーチで卒業生に贈っています。

今回はその内容の一部を、英語の解説を交えてご紹介します。

原動力はビル・クリントンの言葉

“Before you step out into our big, troubled world, I want to pass along a piece of advice that Bill Clinton offered me a little over a decade ago.”

「今日この場で、あなたたちが最初の一歩を踏み出す前に、10年以上前にビル・クリントン元大統領にもらった言葉を贈りたいと思います」

“Well, actually, when he said it, it felt less like advice and more like a direct order.”

「まあ、実際は彼に言われたときは、アドバイスというよりも命令のように聞こえてしまったのですが(笑)」

“What he said was “turn toward the problems you see.”

「彼がくれた言葉は『あなたに今見えている問題の方を向きなさい』でした」

“It seemed kind of simple at the time, but the older I get, the more wisdom I see in this.
And that’s what I want to urge you to do today: turn toward the problems you see.”

「当時は随分とシンプルなことに思えたのですが、自分が歳をとればとるほど、この言葉に英知を感じるんです。だから私は今日あなたたちにも促したいのです。あなたに今見えている問題の方を向いてください」

<英語ワンポイント①>

“urge you to~” =「〜するように強く勧める」
アメリカ人らしい表現の仕方です。アメリカでは「自分のことは自分で決めるのが当たり前」という考え方が一般的。なので、相手に何かを強制するのではなく、”I urge you to~” =「強く勧めるけどやらなくてもまあしょうがない」くらいのニュアンスで語っています。
(用例)”I urged Jen to come to the party” =「ジェンにパーティに来るよう強く勧めた」
他には、”I want you to~”=「してほしい」、”I need you to~” =「してもらわなければならない」という表現もあります。

MITは「憧れの兄貴」のような存在だった

マットが卒業生の送ったこの言葉には、特別な想いが込められていたように思えます。

MITは彼にとって憧れの存在でした。彼はMITの校舎があるボストンで生まれ育ち、MITは彼にとっていわば「ご近所」。彼や彼の兄のカイル、幼馴染のベンはよくこの校舎の裏で遊んでいたそうです。

マットは次のように話しています。

“To us, MIT was kind of The Man … This big, impressive, impersonal force … That was our provincial, knee-jerk, teenage reaction, anyway.”

「私たちにとってMITは『かっこいい兄貴』のような存在でした。大きくて、堂々としていて、影響力のある…それが少し田舎くさい、漠然とした、ティーネイジャーである私たちが抱いていたイメージでした」

しかし、MITは頭脳的な秀才が集まる学校で自分には手が届かないと感じていたそうです。

のちに彼は同じくボストンにあるハーバードの学生だったことがありましたが、俳優業が忙しくなり中退。そのため、MITの卒業式に立てる喜びをこのように話しています。

“It’s an honor to be part of this day — an honor to be here with you, with your friends, your professors, and your parents. But let’s be honest — It’s an honor I didn’t earn.”

「今日この場(MITの卒業式)に立てることができ、非常に光栄です。あなたやあなたの友人、教授、そして両親と一緒にいれること、私にはできなかった(卒業という)経験を見届けられることが光栄です」

“I’ve seen the list of previous commencement speakers: Nobel Prize winners. The UN Secretary General. President of the World Bank. President of the United States.
And who did you get? The guy who did the voice for a cartoon horse.”

「卒業式の過去のスピーカーはそうそうたる方々でした。ノーベル賞受賞者、国際連合事務総長、世界銀行の総裁、アメリカの大統領。では、今あなたたちの目の前に立っている男はどうでしょうか?アニメ映画で馬のキャラクターの声優だった男です(笑)」

<英語ワンポイント②>

“It’s an honor~” =「〜光栄です」
「嬉しい」という気持ちをより丁寧に伝えたいときに使えます。
(用例)”It’s an honor to meet you” =「あなたにお会いできて光栄です」
    ”It’s an honor to work with you” =「あなたと一緒に仕事ができて光栄です」

問題に向き合い、積極的に関わってほしい

そんなMITの卒業生を前にして、マットの言葉は熱意に溢れます。

“What we do matters. What we do affects the outcome. MIT, you’ve got to go out and do really interesting things. Important things. Inventive things. Because this world has some problems we need you to drop everything and solve.”

「私たち(一人ひとり)の行いには意味がある。私たちがすることは結果を変えます。MITのみなさん、外に出て本当に興味深いことをしないといけません。重要なこと、革新的なこと。なぜならこの世の中は、あなた方がすべてを投げ捨てて全力を注がなければいけないほどの問題を抱えているからです」

“Go ahead: take your pick from the world’s worst buffet.”

「世界に存在する最悪な問題の中からひとつを選んでください」

“Economic inequality, that‘s a problem… Or how about the refugee crisis, massive global insecurity, climate change, pandemics, racism, a pull to nativism, fear-driven brains working overtime, here in America and in places like Austria, where a far-right candidate nearly won the presidential election for the first time since World War II.”

「(数多くある)問題のひとつは経済格差です。(また、)難民の問題や国際的な安全保障の揺らぎ、環境変動、疫病、差別、先住民保護運動の問題、トラウマの問題、第二次世界大戦後初めてアメリカやオーストリアでは極右の候補者が大統領選で当選しそうでした(このスピーチの後、トランプ氏が当選)」

こうした問題の解決は、卒業生一人ひとりにかかっているとマットは言います。彼は若いころMITで映画を撮影したことがあり、校舎内の廊下を歩いた彼の兄の感想を紹介しました。頭脳的で、問題解決のスペシャリスト集団だと感じたようです。

“These kids are so smart they just need to, you know, drop everything and solve problems!”

「ここの学生たちは頭がよすぎて、(全部ほったらかして)問題を解決することが一番好きなんだと思う!」

増え続ける世の中の問題を解決してもらうために、マットはクリントン元大統領の話を引き合いに卒業生への願いを込めました。

“Turn toward the problems you see.”

「あなたに今見えている問題の方を向いてください」

“And don’t just turn toward them. Engage with them. Walk right up to them, look them in the eye … then look yourself in the eye and decide what you’re going to do about them.”

「その方を向くだけでは足りません。積極的に関わってください。目の前まで歩いて行き、目を見てみて。そして自分を見つめ直し、どうするかを決断してください」

<英語ワンポイント③>

“drop everything” =「今していることを全部中断する」
多くのTO DOリストがある中で「これだ!」というものがあるとき、その他のことをすべて “Drop”(落として)一つのことに集中するという意味です。
(用例)上司が仕事が何も終わらない部下を見かねて、”You need to drop everything and focus on this first” =「まずは今やっていることを止めて、この仕事に集中してくれ」

<英語ワンポイント④>

“Engage” =「深く関わる」「接点をもつ」
よく、”engage in~(名詞)” の形で使います。「エンゲージリング」というくらいなので「婚約」という意味があるのはご存知かと思いますが、「〜の仕事をしている」という意味もあります。
例えば、”I’m working in the writing industry” だったら、ただ「執筆の仕事をしています」になりますが、”engaged” だと、執筆の仕事にポジティブな思いがあり、その仕事に満足しているというニュアンスが含まれます。
(用例)”I’m engaged in the writing industry” =「今は執筆の仕事に夢中なんだ」「(大好きな)執筆の仕事に就いています」

スピーチでは、リーマンショックやトランプ現大統領に対する想い、慈善事業「Water.org」での経験も話しています。世界に溢れる問題を知るだけでなく、接点を持つために行動を起こしている彼ならではのメッセージ。ぜひみなさんも耳を傾けてみてはいかがでしょうか?

執筆:赤江龍介
編集:岡徳之(Livit

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