皆さんは、「英語には敬語がない」と思っていませんか。これは言い過ぎだとしても、「英語の敬語なんてそれほど重要じゃない」と後回しにしている方が多いのではないでしょうか? 確かに、英語学習者がネイティヴスピーカーと話す時に敬語を意識していなくても、大半のネイティヴスピーカーは特に目くじらをたてたりすることはないでしょう。
ただ、これはあくまで学習者レベルの話です。ひとたび英語を話すのが当たり前の世界に足を踏みいれたとたん、相手はあなたがきちんと英語を運用できるとみなし、英語環境の中での、しかるべき振る舞いを求めてきます。そんな時、いつまでも敬語を敬遠していると、相手にリスペクトされないかもしれません。ビジネスパーソンとしてさらなる成功の階段を上るためにも、やはり適切な「敬語」や「丁寧表現」をうまく使いこなせるようになりたいですよね。
今回は、英語における「敬語」の概念の説明から、具体的な「丁寧表現」まで、実践的な知識を紹介します。
Point 1: 英語で敬語を使用することはセルフプロデュース術の一つ。
具体的な敬語表現を学ぶ前に、まずは英語と日本語における敬語の捉え方の違いについておさらいします。ここでは、デイヴィッド・セイン他著、『敬語の英語』の序文で紹介されている次のような考えを参考にしてみましょう。
英語には丁寧な言葉遣いがないのかというと、そうではありません。乱暴な言葉遣いがあるのと同様に、丁寧で上品な言葉遣いもちゃんとあります。でも、それは、相手によって使い分ける敬語ではなく、品のいい人が話す品のいい英語のこと。つまり、英語の丁寧さは、誰に話すかではなく、誰が話すかによって決まるのです。
『敬語の英語』(デイヴィッド・セイン他著、ジャパンタイムズ刊)
ここで著者のセインさんは、英語話者にとって敬語とは、相手のために使うものではなく、自分をよりよく見せるために使うものだと述べています。つまり、相手が自分より年長だからとか、地位が上だからなどの理由によって(立場をわきまえて)敬語を使うのではなく、コミュニケーションの場でいかに丁寧な自分をプレゼンテーションするかという意識(セルフプロデュース意識)から用いられるのだ、ということです。
丁寧さ(=Politeness)を表す方法を「わきまえ式」と「セルフプロデュース式」の二つに分けて考えるなら、日本語では「わきまえ式」が多い一方で、英語圏では「わきまえ式」よりも「セルフプロデュース式」が多くを占めているということを確認しておきましょう。つまり、日本語では相手との立場の差によってどのような言葉使いがふさわしいかが自ずと決定されるのとは対照的に、英語ではその場の状況に応じて臨機応変に言葉使いを変える柔軟性が重要なのです。
まずはこうした英語圏での敬語の捉え方を知ることで、実際にあなたが英語を用いて商談などを行う際のご自身の話し方に対する意識を変えていくとよいでしょう。
Point 2: 長いフレーズ自体に丁寧さが現れる
そもそも「丁寧に話す」とはどういうことでしょうか?
例えば日本語でも、「それ取って」と誰かに物を取ってもらおうとするよりも、「そこの資料をとっていただけますか?」と言葉をつくした方がより丁寧ですよね。実は、英語でも日本語と同じように長いフレーズを使うことによって「丁寧さ」を演出することができるのです。
では、英語で何かを依頼するシチュエーションを想定し、フレーズを長くすることによって増す丁寧さの度合いを確認してみましょう。例えば、会議室で自分の座っている場所からは少し遠いところにある資料を取ってもらうというシチュエーションで考えてみます。
2.Please pass me the document.(その書類取ってくださいよ)
3.Will you pass me the document?(その書類とってくれるよね?)
4.Can you pass me the document?(その書類をとってくれますか?)
5.Would you pass me the document?(その書類をとっていただけますか?)
6.Could you pass me the document?(その書類をとっていただけますでしょうか?)
まず、例文3→5、4→6のように、依頼の疑問文を作る”will”や”can”といった助動詞を、過去形の”would”や”could” にすることで丁寧さを増すことができます。さらに、”possibly”という副詞も併用することで、次の例文7のようにさらに丁寧な言い方になります。
次の例文8、9、10は、フレーズ自体を長くすると表現が丁寧になるという例です。
9. I was wondering if you could pass me the document.(その書類を取っていただけたらありがたく存じますが)
10. Would you mind if I asked you to pass me the document?(その書類を取ってくださいとお願いしてもお気を悪くなさらないでしょうか?)
このように、なるべく言葉をつくして丁寧に話そうとすると、英語の文法や発音に自信のない人の多くは「長いフレーズを喋れば喋るだけ相手に伝わりづらくなってしまうのではないか」と考えてしまうかもしれません。
でも、心配はいりません。多少発音が悪くても、英語に長けている人々の耳はあなたの発言をきちんと聞き取ってくれますし、万が一相手が多少聞き取れなかったとしても、長いフレーズを喋っているということ自体が丁寧さを表すため、あなたが丁寧に言おうとしていることは伝わります。ですので、臆することなく長いフレーズを口にしてみてください。
とはいえ、きちんと喋りたいという方はぜひ上述のフレーズを繰り返し発音し、ご自身の口の動きを敬語にフィットさせるトレーニングしてみてくださいね!
Point 3: コミュニケーションのスタイルを知り、効果的なアプローチを考える
先に英語圏のコミュニケーションで丁寧さを表すためには、その場面の状況に合わせて働きかけることが大切だと述べました。例えば、相手のプレゼン資料を事前にチェックし、その資料がそれほど良くない場合を想像してみてください。こうした時に「思ったことをはっきり言う」、「相手に配慮した言い方をする」、「言外にほのめかす」、「何も言わない」などいくつかの選択肢があると思います。まずはどの選択肢が良いのかを考えてみてください。
おそらく多くの方が、資料の出来を直接ダメ出しするのではなく、「ここをこうすればもっとよくなる」などと相手に配慮した言い方を選択すると思います。以下では、そんな時使える表現を紹介します。
「譲歩」の表現を用いる。
〈例文〉
Indeed,your document includes some interesting points,but…
(確かに、あなたの資料には幾つか興味深いポイントが含まれているのですが…)
このように、異なる立場を斟酌した上で自分の意見を述べる方法のことを、「譲歩」といいます。上の例文のように、相手の資料をまずは認める姿勢をみせたほうが、相手もあなたの言葉を真摯に受け止める気持ちになることでしょう。
このように「確かに…なのですが」という譲歩の姿勢を丁寧に表す類似表現としては、「Certainly…but…」「It is true that…but…」などがあります。
「非人称の名詞・代名詞」をクッションとして用いる
プレゼンの改善を相手に求める際に、もしも“You must improve your presentation by proposing…(…の提案を加えてプレゼンを改善しなさい)”のように“You”を主語とした文章として表せば、その物言いの対象が「あなた」個人に限定されることによって威圧的なニュアンスが生まれてしまいます。
しかし、
Your presentation could be improved by proposing…
(…の提案を加えれば、あなたのプレゼンはより良くなると思います。)
といったように、“Your presentation”という非人称の主語を代わりに用いれば、それだけで伝えたいことをソフトに言うことができるのです。
他にも、ビジネスの場面で達成すべき期日やノルマを相手に伝える時、“You must finish this job by this Friday.(今週金曜までにこの仕事を片付けなさい)”と言ったり、“We must boost our sales further.(もっと売り上げを伸ばさなくては)”と言ったり、「人」を主語にした文章で伝えると表現としてはやや直接的なものになってしまいます。
そこで下記の例文のように、「非人称の名詞・代名詞+受動態」の形式を代わりに使ってみましょう。
〈例〉
This job is expected to be finished by this Friday.
(この仕事は今週金曜日までに片付けるのが望ましいです。)
It is expected that our sales will be boosted further.
(さらなる売り上げ増に期待したいですね。)
この“It is expected…”という表現に近いものとして、「It seems that…」(おそらく〜でしょう)という構文などもクッションの役目を果たしてくれます。
おわりに
この記事では英語の「敬語」「丁寧表現」について解説しましたが、必ずしも長いフレーズを喋るということや、譲歩やクッションの表現を駆使するということだけが英語環境で丁寧さを表すわけではないということを付け加えておきます。
ここで、先に述べた「会議で資料を取ってもらう場面」にもう一度戻って考えてみましょう。このとき、相手への丁寧さを見せる方法は、決して丁寧に依頼することだけではありません。その資料を取ってもらおうとするのではなく自分が体を動かして自分で取るといった行為でも丁寧さを表すことが可能です。
このように、言葉で丁寧さを表そうとすることにとらわれ過ぎず、英語圏でのコミュニケーションのスタイルを尊重し、はっきり言うのがいいのか、ほのめかすのがいいのか、あるいは何も言わないのがいいのか、といったことを考えて、最善の選択ができるとよいでしょう。その上で、丁寧な表現がすばやく口にできれば、相手はあなたの丁寧さに心を動かされること間違いなしです!
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