中学の英文法で「不定詞」と「動名詞」を学んだのを覚えているでしょうか。「to+動詞の原形」で作る不定詞と動詞の-ing形を使う動名詞。どちらも「~すること」という意味を表すと習い、相互に書き換える練習をしたりしました。でも、この二つは本当にどちらも同じ意味を表しているのでしょうか?
stop -ingとstop to~の違いは?
例えば、あなたの同僚にトムとユミという人がいて、共通の知り合いから次のように言われたとします。
1) Tom stopped to talk to Yumi.
2) Tom stopped talking to Yumi.
stop to~は「~するために立ち止まる」といった意味なので、1は「トムがユミと話をするために立ち寄ったよ」ということ。きっとトムはユミに何か話があったのでしょう。Something important?(何か大事なこと?)というように聞いてみるといいかもしれません。
一方、stop -ingは、「~することを止める」という意味。すなわち、2は「トムはユミと話をするのをやめてしまった」となります。これは、二人の同僚であるあなたにとっても一大事。What’s going on?(どうなってるの?)と、様子を確かめたほうがいいかもしれません。
「書き換え可能」と言われる不定詞と動名詞、実は使い方によってはこれだけ意味が異なってくるのです。
不定詞は未来、動名詞は過去に向かう
実は、「to+動詞の原形」の不定詞と、「動詞の-ing形」を使う動名詞では、元々意図しているところが異なります。同じような意味に見えるのは、その違いがあまり気にならないとき。元々違うものなのですから、まったく異なる意味を表すようになっても、不思議ではありません。
不定詞のtoは、未来に起こること、これからあることを指します。そこで、stopped to talkは、「これから話をするために立ち寄った」となるのです。
動名詞の-ingは、過去に起こったこと、すでにあったことを指します。そこで、stopped talkingは、「すでに話をすることをやめてしまった」となるのです。
この意味の違いがわかりやすく表れているのは、次のようなあいさつをするときです。
Nice to meet you.
おなじみの、初対面の人とのあいさつ。to meetはこれから起こることなので、会ったときすぐに言います。
Nice meeting you.
動名詞のmeetingはすでにあったことなので、meetingは終わっていることになります。つまりこれは、「お会いできてよかった」という別れ際のあいさつなのです。
意味の違いにご用心!
不定詞と動名詞で意味が異なってくる例には、次のようなものもあります。
Jane tried to jog.(ジェーンはジョギングをしようとした)
tryしたのはジョギングする前。早起きしてジョギングでもしようかな、と思ったけど、やっぱりダメだった…という状況が浮かびます。
Jane tried jogging.(ジェーンはジョギングをしてみた)
ジョギングはすでに行われています。ジョギングをやってみた、ということは、ジェーンはダイエットでもしようとしているのかもしれません。
I forgot to take photos.(写真を撮るのを忘れた)
写真を撮るつもりだったのに、撮るの忘れちゃったよ、というような状況です。
I forgot taking photos.(写真撮ったの忘れちゃったよ)
写真は撮っているにもかかわらず、その写真があることを忘れてたよ、という状況です。
では、次のような状況では、不定詞と動名詞のどちらを使えばいいでしょうか?
「明日は取引先のMr Jacksonとの大事なアポがある。同僚のジムに、”Mr Jacksonと会う(meet)の覚えてる?”と確認したい」
会うのはこれからですから、使うのは不定詞です。
Do you remember to meet Mr Jackson?
これをDo you remember meeting Mr Jackson?とすると、「ジャクソンさんに会ったの覚えてる?」となってしまうわけです。
なお、動詞には「うしろに続くのが不定詞だけ」の例と「うしろに続くのが動名詞だけ」の例があると習っていると思います。例えば、次のようなものです。
不定詞だけが続くもの
want(~したい)、decide(決める)、 expect(期待する)、hope(望む)
動名詞だけが続くもの
finish(終える)、enjoy(楽しむ)、practice(練習する)、mind(~を気にする)
不定詞だけが続く語のほうは、これから起こる可能性があることについて語るための動詞。一方、動名詞だけが続く語は、これから起こるかどうかわからないと、楽しんだり練習したりすることができないので、動名詞を使わないと不自然な言い方になるのです。
普段何気なく耳にする不定詞や動名詞、これを機会に、実はどんなことを言おうとしているのか、確認するようにしてみてください。
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